レクサス新型「RX」異例の販売方法で現場は混乱!? 非レクサスオーナー向けの抽選販売がおこなわれる訳

抽選販売では現金一括で購入できない!? なぜ?

 新型RXでは、販売に混乱が生じています。問題は販売店の指摘のように、メーカー側の抽選販売にあります。

 メーカー側の抽選販売で設定された「レクサス車を所有したことがなく、レクサス車以外を下取りに入れていただける」という条件の目的は、レクサスインターナショナルによれば「今までレクサスにお乗りいただいたことのないお客さまにも購入していただける機会を提供すること」ですが、これまでレクサスが他ブランドからの乗り替えを規制していたわけではありません。

 つまり「メルセデス・ベンツやBMWなど、ほかのブランドからの乗り替えを促進させるため、レクサス車を所有したことがなくレクサス車以外を下取りに入れていただけるお客様に販売する」と読み換えられます。

レクサス新型「RX」
レクサス新型「RX」

 ちなみにレクサスの北米開業は1989年ですが、日本国内は2005年開業と16年遅れてブランド展開がおこなわれたのですが、これは北米と日本では、レクサスの目的が異なるからとされています。

 1980年代の北米におけるトヨタ車のイメージは「安くて壊れない」ことで、高価格車には馴染みませんでした。そこでトヨタとは別の高級ブランドとしてレクサスを立ち上げました。レクサスは海外の高級車市場を攻めるブランドだったのです。

 しかし日本では事情が違います。2000年代に入るとメルセデス・ベンツやBMW、アウディなどが高級車市場のシェアを広げ始めました。この輸入ブランドに対抗すべく、レクサスを日本で開業したのです。つまり日本のレクサスは、日本の高級車市場を守るためのブランドというわけです。

 従って日本のレクサスでは、メルセデス・ベンツなどドイツのプレミアムブランドからユーザーを奪うことが悲願で、今回も「レクサス車を所有したことがなく、レクサス車以外を下取りに入れていただける」ユーザーを募りました。

 これについて販売店では、「上質な店舗設計を含めて、以前からメルセデス・ベンツなどのお客さまを意識してレクサスの販売促進をおこなってきました」といいます。

 納期が長引いた今になって、メーカーがレクサスの既存顧客を差し置き、レクサス車以外の顧客枠を設けたのでは販売店が難色を示すのも当然でしょう。こういった販売店の不満は、商談を通じてユーザーにも伝わります。

 また「上記項目に合致することを誓約する書面を販売店にご提出いただく」という項目も注目されます。

 一般的に誓約書は、仕事の依頼主が雇用される側に対して、機密保持の誓約をさせたりするものです。

 販売店やメーカーが、お客さまに対して「レクサス車を所有したことがなく、レクサス車以外を下取りに入れる」趣旨の誓約書を提出させるのはいかがなものでしょうか。

 このほか残価設定ローンや定額制カーリースのKINTOなどの利用を義務付けていることを、レクサスインターナショナルでは「長期間お乗り頂ける」ことが理由としています。

 新型RXを購入後に転売されないようにする対策とも受け取られますが、将来の支払い能力に依存しない現金購入は、顧客と売る側の両方にとってもっとも安全な購入方法です。これを排除するのも良心的とはいえません。

 新車の納期遅延は、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻によるところが多く、メーカーを責めることはできません。

 ただしそれを理由にメーカーが販売に干渉すると、ユーザーとしては「どのように買えば良いのか」「特定の顧客を対象にするのは不公平ではないのか」といった疑問や不満が生じます。

 クルマにユーザーの立場で、分かりやすく納得のできる売り方をするのは当然のこと。クルマの販売は顧客目線で公平におこなうべきです。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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