重要なのに知られてない「交通研」って一体なに? 新型車発売に欠かせない、日本の車社会を支える存在とは?

燃費の基準も交通研が深く関わっている

 こうした認証審査のなかで、ユーザーとしては燃費測定についても気になるところでしょう。

 交通研ではシャーシダイナモ装置を使い、車両を移動させずに駆動力をかけて燃費を計測しますが、さまざまな試験のすべてをこなすことは施設の設備体制や人員体制が限定的であることから、一部の試験は自動車メーカーがおこない、そのデータを交通研に提出する形をとっています。

実燃費で40km/Lを超える低燃費をたたき出すトヨタ「ヤリス ハイブリッド」
実燃費で40km/Lを超える低燃費をたたき出すトヨタ「ヤリス ハイブリッド」

 そうしたなかで、例えば2016年に発覚した三菱自動車の軽自動車に関する燃費不正問題の際、メーカー側がおこなって交通研に提出したデータが改ざんされていたことが社会問題となりました。

 また、直近では日野自動車が数十年間にわたり、トラックやバスの多様な車種で燃費測定などについて不正があったことが大きく報じられたばかりです。

 国としても、こうした不正防止に向けて交通研の業務のあり方も含めた対策を進めているところです。

 燃費でいえば、以前は「10・15モード」また「JC08モード」、そして現在は「WLTCモード」と試験測定する際の走行速度や走行時間の規定が変わってきました。

 こうした燃費の基準で、基本的な手法案の策定や、国連などの場での国際連携についても、交通研が果たす役割が極めて大きいといえます。

 また、自動運転技術や高度運転支援システム(ADAS)に関しても、国連・欧州経済委員会の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)の各種会議体で、日本からは国土交通省と交通研の担当者が出席し、議長や副議長など重要なポジションを占め、世界に向けて日本の考え方を主張しているのです。

 一般ドライバーにとって馴染みの薄い交通研ですが、日本のクルマ社会を支える縁の下の力持ちだといえるでしょう。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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