もはや懐かしい! 「昔のクルマ」は“ドアごと”に施錠していた!? 今後「カギ」は「消失」か! 「ドアロック」の変遷と進化とは

クルマから離れるときなど、必ずと言っていいほどかけるのがドアの「鍵(カギ)」。そんな鍵も少しずつ進化しており、利便性が高まっています。この記事ではクルマのカギの歴史と現在の状況について解説します。

物理的な鍵は不要に? クルマの「カギ」はどのような変遷をたどったのか

 一般的なほとんどのクルマには、鍵がついています。クルマの鍵の目的は、「ドアに鍵をかけて誰にでも開けられないようにする」や「合う鍵でしかエンジンを始動できないようにする」「イグニッションキーでハンドルをロックする」ことなどです。

 そんなクルマの鍵ですが、日々進化しており、現在では近づくだけで解錠してくれるものもあります。今回はクルマの鍵の歴史や現在の状況について解説します。

クルマのカギはついに持ち歩かない時代に(画像はイメージ)
クルマのカギはついに持ち歩かない時代に(画像はイメージ)

「鍵には金へんがあるように、クルマの鍵にも長い間金属製の鍵が使用されてきました。後述しますが、スマートキーとなった現在でも非常用などに金属の鍵が格納されている場合が多くあります。

 鍵には凹凸や溝があり、凹凸パターンの多さで盗難防止を発揮しています。

 金属製の物理的な鍵の場合、クルマを運転するときには、「ドアキーシリンダー」に鍵を入れて回すと開錠され、車内で「イグニッションキーシリンダー」に鍵を入れて回すと、エンジンを始動できます。

 降車時はイグニッションキーシリンダーをロック位置にしてエンジンを止め、降車してドアキーシリンダーに鍵を入れて回し、施錠します。

 同乗者がいないときには、ドライバーは降車前に運転席から各席のドアロックノブを操作し、各席の鍵をかけます。

 また、ドアキーシリンダーを回さなくても鍵をかける方法があります。

 ドアが開いているときにドアロックノブで鍵をかけ、ドアハンドルをドア開位置にしつつドアを閉める「キーレスロック」です。

 ただし便利かどうかは別で、この方法で車内に鍵をとじ込めてしまう人もいました。

 余談ですが金属の鍵には、車両エンブレム付きや金メッキ、銀製といった様々なオプションがありました。

 カー用品店にも装飾を持った鍵が売られており、すぐにスペアキーを作ってもらうことが可能でした。

集中ドアロックの登場

 ドアロックの電動化は、1965年頃に高級車から始まりました。

 ドライバーが室内のスイッチ操作だけで全席に鍵をかける方式です。普及は1980年代後半頃からです。

 ドアへ配線を引き通す関係もあって、パワーウインドウと同時に採用されました。たかがドアロックの電動化ですが、集中ドアロック機能は運転席ドアキーシリンダー操作だけで、全席の施錠と開錠が出来て非常に便利でした。

 ファミリーカーやデートカーは特に有効で、同乗者がキーレスロックをしなくても全席施錠でき、ドライバーの開錠と同時に同乗者がドアを開けられることが便利だったのです。

キーレスエントリーの登場

 1980年代前半からの電子技術は進化が著しく、ドアロックも進化します。1983年、日産は暗証番号式ドアロックを採用します。ドライバーがドアハンドル付近の操作ボタンで暗証番号を操作し、あらかじめ設定した番号と一致するとドアロックが作動するシステムです。

 さらに1985年、日産はカードキーシステムを採用します。ドライバーがキャッシュカード大の専用カードをドアハンドル付近にかざすと、ドアロックが作動するシステムです。

 一方、トヨタは1984年に商用車の「ダイナ/トヨエース」に電波式ワイヤレスドアロックを搭載します。ドライバーがドアハンドル近くでリモコンを操作すると微弱電波が発信、クルマが受信して暗号が一致するとドアロックが作動します。

 配送用トラックではドアロックを頻繁に使用するために鍵やキーシリンダーが摩耗しやすいため、便利装置というよりは摩耗防止の装置だったようです。

 1985年、ホンダは赤外線式キーレスエントリーを搭載します。リモコン操作で赤外線が照射され、クルマが赤外線を受光するものです。当時は電波法が厳しく、ダイナ/トヨエースはごく近距離でしか作動しませんでしたが、赤外線式はより遠くからの操作が可能でした。

 ただし赤外線は「光」なので、太陽光で機能が左右されたり、車内の受光センサーに向けて操作する必要がありました。

 また、ユニークなものに1989年に登場したスバル「レガシィ」の「フック式キーレスエントリー」があります。ドアハンドル持ち上げ操作回数で暗証番号を入力し、設定した暗号通りだとドアロックが作動するものです。

 キーレスエントリーは1990年代半ばから普及します。メーカー側も、クルマの商品イメージが向上したり収益向上が狙えるなど利点が多かったため、積極的に採用し、低価格なクルマにも度々設定されました。

 1990年代後半の電波法規制緩和で電波式が主流になり、2000年代半ばにはごく普通の装置になります。

盗難防止機能への応用

 1999年、日産は「シーマ」に「電子キー」を設定しました。キーレスエントリー機能は従来通りですが、イグニッションキーシリンダーに電子キーを差し込こむと車両と暗号を送受信、一致するとエンジン始動が可能になるものです。

 2000年には、トヨタが「セルシオ」に、ドライバーがキーを携帯するだけで各種操作が可能な「スマートキー」を設定します。

 キーを携帯したドライバーがドアハンドルに触れると、車両とスマートキーが送受信、暗号が一致すると開錠されます。送受信は車内でも行われ、暗号が一致しないとイグニッションノブを回せず、エンジンを始動できません。

 降車時は、ドライバーがドアハンドルのロックボタンを操作すると、全席施錠されます。

 スマートキーは、電池が切れなどに備えて金属鍵を内蔵しています。金属鍵はジャックナイフのようにさっと出てくることが特徴でした。

 そして2003年、トヨタの2代目「プリウス」はプッシュスタートスイッチを搭載します。スマートキーを運転席近くのキースロットに差し込み、ブレーキペダルを踏んでプッシュスタートスイッチを1回押すとシステムが起動します。

 同年には「クラウン」にも装着されて、普及が始まります。なお、キースロットにはキーに充電する機能がありましたが、廃止されて電池交換式に落ち着きました。

 以降、各社にスマートキーやプッシュスタートスイッチが広まります。

 各種の操作方法はメーカーにより異なるようで、スマートキーながらイグニッションノブ操作式のもの、ドアロック操作はドアハンドルのリクエストスイッチ操作によるものなど、スマートキーといっても色々ありました。

 初期のスマートキーには、各種の試みがありました。

 トヨタは、オプションでスマートキー機能を内蔵した腕時計を設定しました。

 時計のデザインには好みがある上、そのデザインが男性寄りだったからなのか、クルマを手放した際の時計の扱いが難しいからなのか、普及はしなかったようです。

 キーを携帯しやすくするためにカード状にしたものもありましたが、キャッシュカードなどよりも厚いことや、存在感が薄いと存在を忘れやすいからなのか、これも廃れてしまいました。

 また、電池交換式が一般化して、緊急用の金属鍵は簡素な取り出し式になりました。

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