道路の貸し切りによる体感型モータースポーツイベントの、新たなる可能性とは

2022年9月10日(土)、11日(日)、箱根エリアで開催された複合型の多ジャンルバイクイベント『MRFモトライダースフェスタ2022 in HAKONE』は、午前中の早い時間には駐車場に入りきれないほどのライダーが全国各地から集まり、初開催にして大成功を収めました。

モータースポーツと一般ライダー、地域社会との接点に

 2022年9月10日(土)、11日(日)、箱根エリアで開催された複合型の多ジャンルバイクイベント『MRFモトライダースフェスタ2022 in HAKONE』は、午前中の早い時間には駐車場に入りきれないほどのライダーが全国各地から集まり、初開催にして大成功を収めました。

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『モトライダースフェスタ2022 in HAKONE』を主催したMRS代表・加賀山就臣さん。先日の全日本ロードレース選手権岡山大会では、ヨシムラスズキライドウィンから「代役は俺」としてスポット参戦したことでも話題になった(写真/小林ゆき)
『モトライダースフェスタ2022 in HAKONE』を主催したMRS代表・加賀山就臣さん。先日の全日本ロードレース選手権岡山大会では、ヨシムラスズキライドウィンから「代役は俺」としてスポット参戦したことでも話題になった(写真/小林ゆき)

 特筆すべきは、みなし公道である「アネスト岩田 ターンパイク箱根」(以下、「ターンパイク」)を丸一日閉鎖して貸し切りにし、「パラモトライダー」(身体障がい者のライダー)の走行や、ナンバー無しのレーシングマシンの走行、排気量的にターンパイクでは規制があって走れないカブ系バイクの走行が行なわれたことです。

 ナンバー無しのバイクを公道で走らせるイベントは、近年では「チャレンジ三宅島モーターサイクルフェスティバル」(2017年~)や、横浜の「元町 安全・安心Day」など、短時間のパレードはあるものの、今回のように丸一日の大規模な開催は画期的なことと言えます。

公道を閉鎖してのパレードを行ったイベントとしては、2007年から行われている『チャレンジ三宅島モーターサイクルフェスティバル』がある。筆者(小林ゆき)はボランティア参加で先導を行なったが、実現に至るまで、当時は様々な課題もあった
公道を閉鎖してのパレードを行ったイベントとしては、2007年から行われている『チャレンジ三宅島モーターサイクルフェスティバル』がある。筆者(小林ゆき)はボランティア参加で先導を行なったが、実現に至るまで、当時は様々な課題もあった

 ターンパイクは観光有料道路として、神奈川県の小田原市から湯河原町を結ぶ約16kmの一般自動車道です。中日本高速道路(NEXCO中日本)のグループ会社、箱根ターンパイク株式会社が保有・運営する「私道」ですが、道路交通法による「一般交通の用に供するその他の場所」であり、ときおり警察による速度取り締まりも行われる「道路」です。

閉鎖されたターンパイクを専有してスタート位置に向かう、ナンバー無しレーシングマシンたち。全日本ロードレース選手権や「テイスト・オブ・ツクバ」、クラシックレース、ドラッグレースなどに参戦しているマシンも見られた(写真/小林ゆき)
閉鎖されたターンパイクを専有してスタート位置に向かう、ナンバー無しレーシングマシンたち。全日本ロードレース選手権や「テイスト・オブ・ツクバ」、クラシックレース、ドラッグレースなどに参戦しているマシンも見られた(写真/小林ゆき)

 湘南方面から伊豆、御殿場、沼津などへのアクセス道路としても便が良く、その地理的位置関係から、国道1号、箱根新道、国道135号、東名高速道路のバイパスの役割も担っています。

 このため、よほどのことがない限り、通行止めにして貸し切ることはかなり難しいこととされていました。

神奈川県警小田原署からは、白バイとパトカーの展示や交通安全啓蒙のノベルティ配布が行われた。白バイはこのあと、ターンパイク走行の先導に向かった(写真/小林ゆき)
神奈川県警小田原署からは、白バイとパトカーの展示や交通安全啓蒙のノベルティ配布が行われた。白バイはこのあと、ターンパイク走行の先導に向かった(写真/小林ゆき)

 しかし近年、イベントや撮影での道路使用許可について、地域活性化の目的の場合、内閣や警察庁、国土交通省など、行政は弾力的な運用をするという通達(2006年、2011年、2015年、2016年)を出していて、ターンパイクに限らず全国各地で様々なイベントや競技が道路で開催されるようになってきました。

 例えば、ターンパイクでは2014年、雑誌『モーターヘッド』主催で「MHヒルクライム」が開催されたり、2018年にはRED BULLと日本GPのPRのために制作されたマルク・マルケスらがモトGPマシンなどで走る動画の撮影が行なわれています。

普段は観光有料道路である箱根ターンパイクを、先導役のナンバー無しレーサーと一般ライダーが混走する珍しいシーン(写真/小林ゆき)
普段は観光有料道路である箱根ターンパイクを、先導役のナンバー無しレーサーと一般ライダーが混走する珍しいシーン(写真/小林ゆき)

 ただ、今回は一般の観客がいる中で多数のライダーが参加する二輪車の走行イベントということで、開催許可にあたって懸念などはなかったのでしょうか。ターンパイクの担当者に伺ってみました。

「もちろん、地域や監督官庁 、警察との調整はありましたが、十分な経験があるライダーが走ること、安全なイベント運営を行なうための対策を実施すること 、レースやタイムアタックではなく安全な速度で通行することを条件に、地域活性化の期待も含めて道路貸し切りの許可を進めました」(ターンパイク・永井さん)とのこと。

 また、イベント開催をすすめたMRS(モトライダースサポート)代表の加賀山就臣さんに、開催にこぎつけるまでの苦労はあったのかと質問したところ、即答で「ない! 楽しんでますよ」とのこと。横浜の元町パレードでレーシングマシンを走らせた実績のある加賀山さんだからこその言葉でした。

サーキットのパドックのように見えるが、ここは箱根ターンパイクの大観山。天気にも恵まれて、モータースポーツと地域社会が触れ合える絶好の機会となった(写真/小林ゆき)
サーキットのパドックのように見えるが、ここは箱根ターンパイクの大観山。天気にも恵まれて、モータースポーツと地域社会が触れ合える絶好の機会となった(写真/小林ゆき)

 レーシングマシンのデモ走行に参加した「テイスト・オブ・ツクバ」などのレースで活躍する上田隆仁さんによれば、「実際にレーサーで走らせてみると、パレード走行にも関わらず路面のギャップでスロットルやブレーキ操作に影響が出ていました。走ったライダーたちと、マン島TTレースに出ているライダーはすごい! と話していたところです」と語っていました。

 一方、観覧するライダーから見たターンパイクのデモ走行イベントはどのような雰囲気だったのでしょうか。

普段は箱根ターンパイクを走ることのできない排気量125cc以下の車両も、この日は道路貸切とあって存分に楽しむことができた。写真は「カブクライム」の参加者たち(写真/小林ゆき)
普段は箱根ターンパイクを走ることのできない排気量125cc以下の車両も、この日は道路貸切とあって存分に楽しむことができた。写真は「カブクライム」の参加者たち(写真/小林ゆき)

 ターンパイクはドライブを楽しむ観光有料道路という性格上、途中に数カ所の休憩場所があるだけで、今回のようにイベント開催などで道路閉鎖中は出入り口の接続部分以外、他の道路からアクセスすることができません。このため、今回は集合場所を決めてあらかじめ指定場所で観覧をするという方法が取られました(有料)。

 その他の場所では、スタート地点とゴール地点で観覧することができましたが、ゴール地点では観覧場所があまり伝わらなかったせいか、逆に混乱することなくゆったり観覧できていた印象です。

 また、大観山の駐車場が走行の拠点になったため、まるでサーキットのパドックのような雰囲気となり、自由にマシンを観察したり、ライダーと触れ合える場となっていました。

四輪の入場を規制していたにも関わらず、大観山は午前中の早い段階で駐車場は満杯に(写真/小林ゆき)
四輪の入場を規制していたにも関わらず、大観山は午前中の早い段階で駐車場は満杯に(写真/小林ゆき)

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1件のコメント

  1. マラソンや駅伝で主要幹線道路を日中封鎖されるくらいだから、当然、こういう車やバイクなどを使ったイベントで道路封鎖を許可するべきかと。不公平ですからね。マラソンに微塵も興味がない人からすれば、人はOKで車両はNGなのかよってことです。マラソン、駅伝、バイク、車に限らず、可能であれば生活を支える物流を止めるような場所でのイベントは勘弁してもらいたいところ。
    なので、迂回路があること。並行する高速道路や有料道路がある場合は、一般道を使用する場合、高速道路や有料道路は無償開放してくれるなどの配慮はあっても良いということかな。

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