「日本の戦車もここまで来たかー」 戦後の日本戦車におけるスタンダードになった「74式」とは

74式ではセミオートマチック化! 進化した戦車「74式」

 61式で戦車操縦を覚えたという陸自OB氏によれば、74式で「ここまで来たかー」と実感したのが、61式では泣かされた変速操作のことでした。

 現在、クルマのトランスミッションはほとんどオートマチックですが、当時はマニュアルが普通でした。

 61式は当時の大型車と同じく完全なマニュアルで、シンクロ機構もないのでダブルクラッチという技が必要だったのです。

 変速レバーもやたら重く、操作のタイミングがズレると変速できないばかりか、ギアが鳴って変速レバーに手が弾かれて捻挫したり腕時計を壊してしまうこともあったそうです。

 それで61式の操縦手は変速レバーを操作する左手に腕時計をしなかったという話もあります。

 それが74式ではセミオートマチックとなり、発進時にはクラッチを踏んでギヤを入れますが、走り出したらクラッチ操作は基本不要でアクセルを離して、変速レバーを入れるだけでギヤが入るようになり操縦手にも異次元的な進歩だったそうです。

 でも運転が簡単になったとはいっても、やはり雑に扱うと雑な反応が返って来たといいます。

 セミオートマチックでも変速時にアクセルの踏み込み加減を間違えると、2サイクルディーゼルエンジンは不完全燃焼して排気口から白煙を豪快に噴き出します。

 晴れ舞台となる駐屯地記念行事のパレードでくだんのOB氏はこれをやらかして会場一面が白煙に包まれて後で大目玉を食ったそうです。

初弾必中の為当時の最新技術を集めた74式の車内操作盤のイラスト。(作成:月刊PANZER編集部)
初弾必中の為当時の最新技術を集めた74式の車内操作盤のイラスト。(作成:月刊PANZER編集部)

 74式の量産が始まる頃には次の新戦車の研究開発が始まり、1990年に90式戦車として制式化されますが、大きさや使い勝手から北海道中心に配備されたのみでしたので、74式が引き続き数的にも日本の主力戦車の地位にあり続けました。

 現在では10式戦車や16式機動戦闘車と交代して退役が進み数を減らしています。

 873両生産されたのですが現在では100両程度しか残っておらず数年以内に姿を消します。

 10式戦車は74式戦車のサイズで90式の戦闘力を目指しました。16式機動戦闘車は日本の道路網を生かして高速移動できるタイヤ式戦闘車で74式戦車と同じ口径の主砲が装備されています。

 関係者に「ここまで来たかー」といわしめた74式戦車は戦後日本戦車のスタンダードになってきたのです。

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