「ノーヘル」で本当に良いのか!? 普及拡大の「電動キックボード」初の重大事故 改めて考えたい安全対策とは

転んで危険なのは「自転車」も同じだが「事故リスク」の高さは異なる

では、転んだ時の危険性はどうでしょうか。

今回、時速15kmしか出ない電動キックボードでした。自転車なら普通に時速20km以上出すでしょうから、ヘルメット着装無しで転んだ時の危険度は、同等だといえます。

 ただTV報道などは、死亡した運転者がヘルメットを着装していなかった点を強調しています。

特例措置下の2022年9月現在、運転時のヘルメット着用は任意とされる「電動キックボード」[画像はイメージです]
特例措置下の2022年9月現在、運転時のヘルメット着用は任意とされる「電動キックボード」[画像はイメージです]

 確かにヘルメットを着装していれば、大きな問題にはならなかったと思われます。おそらく「転んじゃった」という笑い事で済んでいたかもしれません。

 ただヘルメット着装が望ましいのは、全国で年間400人ほど死亡している自転車の乗員も同じです。

 事故を起こした時の危険性で考えたら、電動キックボードだって自転車と同じだからです。

 だからこそ警察はヘルメットを義務付けませんでした。1事故あたりの危険性を判定すればその通りだと思います。

 しかし電動キックボードは前述の通り操縦安定性が極めて悪く、当然ながら事故も多いだろうと推測されます。

 考えてみてください。

 東京都内には、少なく見積もっても1000万台程度の自転車があります(東京の自転車普及率70%から推算)。

 その台数のうち、昨年2021年の自転車による死亡事故者は、警視庁の統計によると18人となっています。

 一方、電動キックボードの保有台数は1万台以下かと推察されます。加えて、本格的に増えてきてからまだ1年くらいしか経っていません。

 ここから算数です。今回の1人を特殊な例だと考えたとします。

 自転車と電動キックボードの死亡率が同じだとすれば、2人目の死亡事故が起きるのは50年から100年後ということになります。

 逆に考えたら、1年後に次の死亡事故が起きたら50倍から100倍危険だということです。

 そして前述の通り、事故が起きた時の死亡率は自転車と変わりません。

 これらの仮説をもとにすれば、電動キックボードは事故そのものを起こす可能性が高い、ということになります。

※ ※ ※

 総合して考えると、基本的に自転車より50倍から100倍事故を起こしやすい可能性のある乗り物に対し、再度忖度しない識者の意見を聞き、安全対策を早急に実施すべきだと考えます。

 そして今回の事故を受け、あらためて確認すべきは、自転車よりはるかに事故を起こしやすい乗り物に乗るときは、ヘルメットの着装を強く強く推奨しておきたい、という点でしょう。

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Writer: 国沢光宏

Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。

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2件のコメント

  1. 問題は、(転びやすい)転んだ人が
    走行中のあなたのクルマの目の前に突然現れる!
    ノーヘルで!
    過失相殺もクソもありません
    有無を言わさず逮捕されます!
    クルマ側がね。あなたがね。

  2. こういう乗り物を許可することによって誰かが利益を得ているのでしょうか?

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