「トヨタらしくない?」新型「シエンタ」は欧州車似か!? 開発者は「ぜんぜん別物です」 狙ったのは“普遍性”
フルモデルチェンジしたばかりのコンパクトミニバン、新型「シエンタ」のデザインが、SNSなどで早くも話題を呼んでいます。その狙いについてトヨタの開発者に聞きました。
新型「シエンタ」は、より普遍的な「家族の相棒」へと進化した!?
2022年8月23日にフルモデルチェンジしたトヨタの新型コンパクトミニバン「シエンタ」のスタイリングについて、SNSなどで話題となっています。
フランスなどの欧州車とデザインが似ているのでは、というのです。
「けっしてそこを意識して開発したわけではないんです」と話すトヨタの開発者に、新型シエンタ開発の真の狙いについて、改めて聞いてみました。
シエンタは、2003年にデビューした初代モデル以来、一貫して5ナンバー規格に収まるコンパクトなミニバンとして歴史を重ねてきました。
ただしそのデザインに対するアプローチは、歴代で少し異なっています。
丸いヘッドライトを起点とする、柔らかなフォルムがかわいらしかった初代に対し、2015年にモデルチェンジした2代目は一変。グッとアクティブなイメージへと生まれ変わったのです。
スポーティなフォルムは、トレッキングシューズをイメージ。ライトまわりやボディサイドなどのディテール表現も強調することで、強い個性も主張しました。
そして7年ぶりのフルモデルチェンジを実施した3代目は、どちらかというと初代のイメージに近いシンプルなデザインを特徴としています。
新型はどのような狙いでデザインされたのでしょうか。
そこで新型シエンタの開発責任者である、トヨタ自動車 Toyota Compact Car Company TC製品企画 ZP 鈴木 啓友さんに開発の狙いについて話をうかがいました。
開口一番「欧州車に似ているという声は確かにこちらにも届いています」と笑顔で話す鈴木さん。
具体的には、シトロエン「ベルランゴ」やルノー「カングー」といった、フランスの実用的なハイトワゴン車との近似性について語られることが多いといいます。
しかし鈴木さんは、その関連性について明確に否定します。
「5ナンバー枠内にコンパクトに収めたシエンタと、3ナンバーサイズで大柄な欧州車とでは、狙うところも価格帯もまったくの別物です。したがって、欧州各車を意識して開発したつもりもありません」
そこで、新型シエンタのデザインが狙うところについて聞いてみました。
「先代(2代目)シエンタはスリークな(洗練された、スマートな)かたちで、実際のところ好き嫌いの反応も明確に分かれたクルマでした。
対する新型は、より多くの家族に愛されるような、いわば“家族の相棒”となることを狙っています」
歴代モデルの美点であるサイズ感や取り回し性、視界の良さもこだわったといい、必然的に欧州の実用車のようなシンプルなデザインになったのだと鈴木さんはいいます。
そして新型シエンタの仕上がりについては次のように話します。
「新型はアウトドアシーンだけじゃなく、東京の街中や、横浜の赤レンガ倉庫の前といったさまざまなシチュエーションに似合うかたちになったかなと思います。
こうした普遍性こそが、いろんな形態の家族で愛される必要条件だと思うのです」
このように、新型シエンタに対する自信のほどがうかがえる力強いコメントが聞かれました。
※ ※ ※
新型シエンタのボディサイズは、全長4260mm×全幅1695mm×全高1695mm、ホイールベース2750mm。
全高が20mm上がった以外、先代の2代目シエンタとまったく同じ数値とし、コンパクトさを維持しているのが大きなポイントですが、一方でより四角く空間効率の高い形状としたことで、大人7人がしっかり乗り込める広さを確保しました。
また単なる箱型ではなく、角を丸く仕上げることで、実サイズ以上に大きなかたちには見えすぎず、取り回しの良好さを外観からも感じさせる工夫も施している芸の細かさがあります。
樹脂素材色のまま備わったサイドプロテクションモールと相まって、日常で気兼ねなく使える“家族の相棒”であることを、外観デザイン全体で表現している新型シエンタ。
SNS上でも「(良い意味で)トヨタ車らしくない」「シンプルで好ましい」「オシャレ」と、外観デザインに対する評判が多くみられていることからも、開発者たちの狙いは、早くもユーザーの間に広がりつつあるようです。
カングーも昔は5ナンバーだった
3ナンバーになったら、人気が…