やっと出た! 日産新型「エクストレイル」日本導入時期は想定内!? 米国兄弟車より2年遅れた真相とは

VCターボ×e-POWERを初搭載

 別の視点では、海外試乗での動きから、日本での新型エクストレイル導入を予想するメディアも数多くいました。

 なかでも、エクストレイル兄弟車の北米ローグ(2.5リッターNAエンジン)が2020年6月に発表され、北米での2021年モデルとして発売されました。これは、NISSAN NEXTでいう18か月以内の12モデルのひとつとなります。

日産新型「エクストレイル」
日産新型「エクストレイル」

 それが1年後、2022年モデルになるとエンジンが1.5リッターVCターボに変更されたのです。これは、アメリカ連邦政府による電動化規制の強化を見越した動きだったといえるでしょう。

 それにしても、たった1年でエンジンが変わることは珍しいと思いますが、その背景には技術と経営とのバランスがあるのだと思います。

 具体的には、NISSAN NEXTのなかで「コアマーケットへの集中」があり、なかでもアメリカでは「事業の質の回復」が重点項目として挙げられていました。

 これは、長きにわたり日産の北米販売事業で続いてきたインセンティブ(販売奨励金)などによる実質的な大幅値下げによって、メーカーも販売店も収益が落ち、ユーザーにとってはリセールバリュー(下取り価格)が低下するという負の連鎖を根本的に断ち切るという、日産の強い意志の表れでした。

 そのためには、値下げしなくてもしっかり売れる商品性の高いクルマが、NISSAN NEXT開始直後のタイミングから必要であり、近年の北米市場での急激なC/DセグメントからコンパクトSUVへのシフトを考えると、新型ローグをまずは熟成済みのNAエンジン搭載のFF車として投入するという経営判断に至ったのだと思います。

 その結果、ローグは値下げせずに販売台数を大きく伸ばし、NISSAN NEXTの成功事例となりました。

 これと同時に、VCターボの量産開発が、日本でのe-POWER化も視野に入れながら進んでいたのです。

 中村チーフ・ヴィークル・エンジニアは、北米ローグでのVCターボ開発は新開発技術ということで量産化は一筋縄ではいかなかったと、当時を振り返ります。

 そうしてVCターボとしての熟成を北米のローグでしっかりおこなうことが、世界初採用となる日本のVCターボ×e-POWERを搭載する新型エクストレイルの量産に結び付いたのです。

 こうした技術が今後、日産の重要市場である中国にも活かされていくという流れです。

※ ※ ※

 このように、NISSAN NEXTを軸足として、e-POWERの技術面と海外販売事業を照らし合わせてみると、新型エクストレイルがVCターボやe-POWER、e-4ORCEを搭載して日本導入されるのは、2022年夏が妥当だったと改めて感じます。

 また、日本でのモデルラインアップを見ても、まずは第二世代e-POWER搭載の「ノート」と「オーラ」がBセグメントでの電動化の基盤をつくり、それと並行して、EVでは「アリア」と軽の「サクラ」が登場。

 さらに、今回のエクストレイルのフルモデルチェンジという流れは、日産が電動化のコアマーケットとして位置付ける日本市場の拡充を日本ユーザーに印象付けることのみならず、日産の未来への道筋をグローバル市場にも示すものだと思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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1件のコメント

  1. なるほど、そういう事だったのか
    日産の事だから、てっきり日本市場を軽視しているものだとばかり思ってた

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