アメリカナイズされた見た目は賛否両論あり!? 日米合作の超個性的な車3選
現在、国産自動車メーカー各社は世界各地に生産工場を展開し、海外市場に特化したモデルを生産しています。そんな海外進出の礎となり、今も昔も重要なマーケットといえばアメリカで、現地で企画や開発が主導されたモデルも存在。そこで、日米合作の超個性的なクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
アメリカで企画・開発・生産された個性的な日本車を振り返る
世界中の自動車メーカーは、自国だけでなくワールドワイドでクルマを販売していますが、日本のメーカーが本格的な世界進出を果たしたのは1950年代の終わりごろです。
とくにアメリカ市場は今も昔も最大の規模を誇っており、国産メーカーもアメリカから世界進出をスタートさせたケースが多かったのです。
当初は日本で販売しているモデルを改良し、アメリカの法規に則ったかたちで輸入していましたが、1980年代にはホンダを皮切りにアメリカに生産工場を設立。
さらに開発拠点を設けることで北米市場のニーズにマッチした、独自のクルマの企画・開発までおこなうことがスタンダードとなりました。
そこで、日米合作の超個性的なクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●三菱2代目「エクリプス」
三菱は1985年に、クライスラーと提携してアメリカで合弁会社の「ダイヤモンドスター・モーターズ(現、三菱モーターズ・ノース・アメリカ)」を設立しました。
そして、1989年に北米市場向けのモデルとして現地で企画・開発された3ドアハッチバッククーペの初代「エクリプス」を発売。日本でも1990年から左ハンドルのまま輸入・販売されました。
初代エクリプスは6代目「ギャラン」をベースに開発されたモデルで、スタイリッシュな高性能モデルとして日本でも一定の人気を獲得。1994年に2代目が登場し、日本では1995年に輸入・販売を開始されました。
2代目エクリプスは初代と同じく左ハンドルのみで販売され、外観はよりグラマラスで抑揚のある曲面を組み合わせたデザインへと変貌を遂げ、躍動感あふれるフォルムを実現。
北米市場向けはFF2WDとフルタイム4WDをラインナップしていましたが日本では2WDのみとされ、最高出力230馬力を発揮する2リッター直列4気筒DOHCターボを搭載した1グレードのみで、トランスミッションは5速MTと4速ATが設定されました。
足まわりにはFFながら4輪マルチリンクを採用するなど、優れた動力性能とコーナリング性能を発揮しました。
また、1996年にはソフトトップのオープンモデル「エクリプス スパイダー」が発売され、円高を考慮して284万円(消費税抜き)からと、輸入車ながら比較的安価な価格設定とされて話題となりました。
しかし、初代ほどの人気は獲得できず、1999年に販売を終了。その後2004年に3代目にあたるエクリプス スパイダーのみが販売されましたが、短命に終わりました。
その後、北米では2005年に4代目エクリプスが登場しましたが、2012年に生産を終了し、20年以上にも及んだ歴史に幕を下ろしました。
●トヨタ「ヴォルツ」
トヨタとGMは1984年に、合弁企業であるニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング(NUMMI)を設立しました。
両社は北米と日本で販売するクルマの共同開発を開始し、2002年にはNUMMIで生産されたコンパクトSUVの「ヴォルツ」を日本で発売しました。
トヨタとGMは共通のカローラ系プラットフォームを用いてトヨタがショートワゴンの「マトリックス」を発売し、GMはクロスオーバーSUVのポンティアック「ヴァイブ」を発売。
このヴァイブを右ハンドル化してトヨタディーラーで販売したのがヴォルツで、「スプリンター カリブ」の実質的な後継車でした。
ボディはトールワゴンに近い5ドアハッチバックのクロスオーバーSUVで、スラントノーズのフロントまわりにルーフが後ろに向かって傾斜したフォルムは、斬新かつスポーティなデザインでした。
アクティブな外観にふさわしく荷室はリアシートバックを含めて樹脂製とされ、多少濡れた物でも気兼ねなく積載できるなど、SUVとしての実用性も考慮されていました。
搭載されたエンジンは2タイプの1.8リッター直列4気筒DOHCで、トップモデルの「Z」グレードには最高出力190馬力を誇るスポーツユニットの「2ZZ-GE型」を搭載。トランスミッションは4速ATと6速MTが設定され、駆動方式はFFとスタンバイ式の4WDがラインナップされました。
高性能なコンパクトクロスオーバーSUVというコンセプトだったヴォルツですが、トヨタらしからぬデザインは日本で受け入れられず、発売からわずか1年8か月で販売を終了しました。
その後、GMの経営破綻をきっかけに、2009年にはトヨタとGMはNUMMIにおける協業も解消することになりました。
●ホンダ「エレメント」
前述のとおり、ホンダは他メーカーに先駆けてアメリカで生産を開始し、さらにアメリカホンダにおいて北米市場に特化したモデルを数多く開発してきました。
そのなかの1台が2002年に発売された、ミドルクラスSUVの「エレメント」です。
エレメントは「ジェネレーションY」と呼ばれるアメリカの若年齢層をターゲットに開発され、ボクシーなフォルムのステーションワゴンタイプの外観と、センターピラーレスで観音開きのサイドドアを採用。
さらに無塗装の樹脂パーツをバンパーやフェンダーなどの外装に多用することで、アウトドアギアに通じる個性が表現されました。
ボディサイズは延長4300mm×全幅1815mm×全高1790mmとショート&ワイドで、10フィート(約3m)のサーフボードが室内に格納できることを前提に設計され、内装も水拭き可能なフロア素材や、防水シート表皮、撥水ルーフライニング、跳ね上げ式リアシートによってフルフラット化も可能な荷室など、SUV本来の機能性を重視。
搭載されたエンジンは最高出力160馬力を発揮する2.4リッター直列4気筒でトランスミッションは5速MTと4速ATが設定(北米市場)されました
エレメントは企画の意図どおり北米市場では若者から人気となり、2005年には日本でも輸入車として発売されましたが、奇抜なデザインが受け入れられず販売が低迷。発売からわずか2年8か月で販売を終了しました。
当時は日本で人気とならなかったエレメントでしたが、近年のSUV人気の影響から個性的なデザインが再評価され、今ではエレメントの中古車が人気となり価格が上昇しています。
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日本のメーカーがアメリカで工場を設立し、生産を開始した背景には日米貿易摩擦が深く関係しています。
1970年代から日米の貿易不均衡が問題となり、1980年代には自動車の輸出自主規制がおこなわれたほどです。
そうした状況を打開する策のひとつが現地生産で、今回紹介したような個性的なモデルが誕生するきっかけになったといえるでしょう。
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