まさに「働く名車」として語り継がれている!? 惜しまれつつ消えた商用車3選
私たちの生活を支えるクルマといえば、バンやトラックなどの商用車です。商用車は物流だけでなく、多くの人を一気に運ぶバスなども含まれ、まさになくてはならないクルマたちです。これら商用車は比較的地味な存在ですが、なかには名車と評されるモデルもありました。そこで、惜しまれつつ消滅した往年の商用車を、3車種ピックアップして紹介します。
商用車のなかでも名車と讃えられるクルマを振り返る
普段、私たちの生活で欠かせないもののひとつが物流で、身近で馴染み深いのがバンやトラックといった商用車です。
商用車は物品を運ぶだけでなく、タクシーや多くの人を一気に運べるバスも含まれ、まさに生活に密着している存在です。
また、軽トラックに代表される小型のクルマから、10トン以上も積載できる大型トラックまで、あらゆるニーズに対応してさまざまなタイプとジャンルがあります。
こうした商用車の多くは機能に特化した設計で、乗用車ほど派手なデザインではなく、目にする機会は多いもののむしろ地味なクルマといえるでしょう。
しかし、かつて商用車のなかには、今も語り継がれるような名車と評されるモデルも存在。
そこで、惜しまれつつ消滅した往年の商用車を、3車種ピックアップして紹介します。
●日産2代目「サニートラック」
日産は1966年に、マイカー時代の到来を見据えた大衆車の初代(ダットサン)「サニー」を発売。
サニーはあらゆるニーズに対応するため、2ドア/4ドアセダン、2ドアクーペ、2ドアライトバンと複数のボディラインナップを展開し、1967年にはピックアップトラックの「サニートラック」が加わったのも当時としては珍しいことではありませんでした。
その後、1970年に2代目サニーへフルモデルチェンジすると、1971年にはサニートラックも2代目が登場しました。
ボディは2人乗りシングルキャブのモノコックシャシで、標準ボディとロングボディの2タイプが設定され最大積載量はどちらも500kgでした。
外観はキャビンよりも前のフロントセクションは基本的にセダンの廉価グレードと共通のデザインで、全体のバランスもよく、スマートな印象となっていました。
搭載されたエンジンはサニーと同じく最高出力68馬力(グロス)の1.2リッター直列4気筒OHV「A12型」で、A型はレースでも活躍した名機です。
そして1973年には3代目サニーへフルモデルチェンジが実施されましたが、サニートラックは2代目のまま販売を継続し、マイナーチェンジがおこなわれ環境対応をしつつ1994年に生産を終了。22年間販売されたロングセラー車でした。
サニートラックは小型で装備もシンプルとあって軽量で、駆動方式はFR、さらにA型エンジンはチューニングによってパワーアップも容易なため、平成まで生き残った旧車として絶版になってからも人気を維持しました。
長年販売されたことから中古車の物件数も豊富で、今も趣味のクルマやチューニングベースとして多くのファンに愛され、サニートラックを専門に扱うショップも存在します。
●スバル「サンバー」
スバルは1958年に、同社初の市販4輪自動車として「スバル360」を発売。スバル360はそれまで庶民がマイカーを持つことを夢から現実に変えたエポックメイキングな軽自動車でした。
そして、1961年にはスバル360のメカを応用したキャブオーバー型の軽トラック/バンの「サンバー」が誕生しました。
エンジンをリアに搭載してリアタイヤを駆動するRRはスバル360と同様ですが、サンバーはその後も一貫してRRを採用。重量物が車体後部に集中しており、空荷時でも駆動力が保持され、農道や悪路でも高いトラクション性能が得られるメリットがありました。
現在の軽商用車には横滑り防止装置やトラクションコントロールなど、ドライビングをアシストする機能が搭載されていますが、サンバーはそうした装置が無い頃から高い走破性を実現し、後に「農道のポルシェ」の愛称で呼ばれるようになったのは有名な話です。
その後もサンバーシリーズは代を重ね、1990年に発売された5代目では、軽商用車ながら660cc直列4気筒SOHCエンジンと、さらに上位グレードではスーパーチャージャーが搭載され最高出力58馬力を発揮しました。
スーパーチャージドエンジンは中低回転域のトルクを重視する軽商用車に適した出力特性を得られますが、軽商用車はコスト的にはかなりシビアです。それでも4気筒エンジンとスーパーチャージャーを組み合わせたことは、スバルらしさあふれるクルマだったといえるでしょう。
ほかにもサンバーは初代から軽トラック/バンでは唯一の4輪独立懸架を採用するなど、かなり斬新な設計でした。
しかし、スバルは軽自動車生産からの撤退を宣言し、2012年にスバル製サンバーは長い歴史に幕を下ろしました。
●ホンダ「アクティ トラック」
ホンダは1948年に創立され、まずはオートバイメーカーとして成功を遂げました。そして、1963年には同社初の4輪自動車として、セミキャブオーバー型の軽トラック「T360」を発売。
T360は最高出力30馬力(グロス)を8500rpmで絞り出す、360cc直列4気筒DOHCエンジンをミッドシップに搭載し、まさに軽トラックの常識を覆すモデルでしたが、商業的には失敗に終わりました。
その後も、ホンダは軽トラックの生産を続け、1974年に一時的に軽乗用車の生産から撤退した時もキャブオーバー型軽トラックの「TN」シリーズを展開。1977年には「TNアクティ」の車名となって、1979年にはバンの「アクティ」シリーズが加わり、1988年のフルモデルチェンジで車名をトラック/バン共に「アクティ」へと統一されました。
そして、1999年にアクティシリーズとしては3代目にフルモデルチェンジ。大きな変更点としてはセミキャブオーバー型のボディとなりましたが、2009年に発売された4代目では再びキャブオーバー型へ回帰して、バンは廃止されました。
駆動方式はT360から続くMRを継承し、ディファレンシャルギアボックスがシャシに固定されたド・ディオン式リアサスペンションも受け継がれました。
エンジンは最高出力45馬力を発揮する660cc直列3気筒SOHC自然吸気を搭載。これも伝統を守るかたちで、過給機は採用されませんでした。
MRは前後の重量バランスという点でメリットがあり、優れた操縦安定性を実現し、前出のサンバーが「農道のポルシェ」だったのに対してアクティトラックは「農道のNSX」の異名で呼ばれました。
しかし、近年は農業規模の縮小という背景が大きく影響し、軽トラック市場の需要はピーク時の半分以下に減少。ホンダのシェアは1割ほどと低迷が続いていたことから、2021年4月にアクティ トラックの生産を終了しました。
ホンダはアクティ トラックのフルモデルチェンジも検討していたようですが、安全基準と排出ガス規制の強化に適応させるコストの回収が見込めないということから、生産終了という経営判断を下し T360から58年続いたホンダの軽トラックの歴史は幕を下ろしました。
※ ※ ※
冒頭に紹介したサニートラックは22年間もフルモデルチェンジせずに販売されましたが、実は商用車のモデルライフは長いのが一般的で、サニートラックのようなロングセラー車はほかにもあります。
ところが、日本で生産を終えたはずのサニートラックでしたが、南アフリカで「バッキー1400」という車名で現地生産によって販売が継続され、2008年に後継車の「NP200」にスイッチするまで生産されました。
日本と南アフリカの2か国で通算37年間も生産されたことになり、さすがに異例となる超ロングセラー車でした。
昔の宅配の集配車両でよく見たウォークスルーバンって最近見ないが、あれもキャンピングカーに改造するには向いてそうな車だった。運転はしなかったが乗ったことはあるよ。補助椅子的なものも有るけど、基本的に1人乗りだ。