シュッと出てきてキラッと点灯! カッコ良かった「リトラクタブルヘッドライト」が廃れた理由とは
低く構えたフロントマスクからシュッと展開する「リトラクタブルヘッドライト」は、高性能の証として、スポーツカーを中心に1980年代から1990年代に大流行しました。しかし現在採用している車種はありません。リトラクタブルヘッドライトはなぜ消滅してしまったのでしょうか。
格納式のヘッドライトは保安基準をすり抜ける裏技だった!?
1970年代のスーパーカーブームにはじまり、1990年代のハイパワー競争時代も含め、スポーツカーは多くの人を魅了してきました。とくに低く構えたスタイリングは空力特性にも優れ、獲物を狙う肉食獣に例えられる格好良さがありました。
そんな低いフロントを実現させたのが、「リトラクタブルヘッドライト」です。格納式のリトラクタブルヘッドライトは、1980年代から1990年代のスポーツカーを中心に広く採用されましたが、現在では採用されることはなくなりました。
リトラクタブルヘッドライトはなぜ消滅してしまったのでしょうか。
格納式ヘッドライトのアイデア自体はかなり古くからあり、1935年にアメリカの「コード自動車」というメーカーから誕生した「モデル810」が世界初のリトラクタブルヘッドライト採用モデルといわれています。
現在のクルマにもいえることですが、空気抵抗を減らすことは、燃費や動力性能に違いが生じます。
そこで昔からクルマの前部を低くして徐々に迫り上がってくる、いわゆるくさび形のウェッジシェイプという形状がスポーツカーでは理想とされ、古くからカーデザイナーは、保安基準を満たしつつ低く作ることに頭を悩ませていたようです。
なかでも自動車大国アメリカでは「SAE規格(日本のJISのように工業製品の基準を定めたもの)」によってサイズが決まった丸型か角型のヘッドライトしか採用できない縛りがありました。
そこで考え出されたのが、必要なときに展開し、使用していないときに格納するヘッドライトというアイデアです。
そして、1963年に登場したシボレー「コルベット」(C2型)をはじめ、1970年代を彩る世界各国のスーパーカーがこぞって採用したことから、リトラクタブルヘッドライトは「高性能スポーツカー」の象徴のような装備になっていました。
ちなみに日本車で最初に採用したのは、1967年に登場したトヨタ「2000GT」です。
そのほかにも1978年に登場したマツダ「サバンナRX-7」などのスポーツクーペだけでなく、トヨタ「ターセル/コルサ/カローラII」などコンパクトカーにまで採用されるほど大人気となり、なかでもホンダは、当時の大黒柱だった「アコード」やスペシャリティクーペの「プレリュード」など幅広く採用していました。
しかし1990年代に入ると、リトラクタブルヘッドライトの有効性が薄れていきます。
アメリカではヘッドライトの最低地上高の規制が緩和され、ヘッドライト自体もプロジェクターやマルチリフレクターの採用などでデザインされたライトカバー付き固定式ヘッドライトが主流になります。
そうなると、今度はリトラクタブルヘッドライトの持つデメリットが浮かび上がってしまいました。
リトラクタブルヘッドライト展開時は空気抵抗が増し、また電動格納式による複雑なメカニズムは部品点数の多さと、固定式と比べて重い本体重量、さらに重量物を鼻先に搭載していることから旋回性能などにも悪影響がありました。
そして何より、固定式と比較して高コストだったこともあり、一気にアドバンテージを失ってしまったのです。
最先端のトレンドほど人気が下落しはじめると古臭く感じるもの。マイナーチェンジやフルモデルチェンジを機に、固定式ヘッドライトを採用したフロントのデザイン変更はもちろん、マイナーチェンジで固定式にしてしまうケースもあったのです。
ちなみに、日本市場ではマツダ「RX-7」(FD3S型)の生産終了に伴い、2003年に新車としてのリトラクタブルヘッドライト採用車は消滅してしまいました。
初代ロードスターに乗っていてがNDが朝鮮人のようなつり目がいやで諦めた