完全にデザイン全振り! とにかく「見た目重視」の軽自動車3選

ここ数年間、日本の自動車市場でトップセラーに君臨しているのは軽自動車です。これまでさまざまなジャンルの軽自動車が販売されてきましたが、なかにはデザインを重視したモデルも存在。そこで、デザインに全振りした軽自動車を、3車種ピックアップして紹介します。

デザインに全振りした軽自動車を振り返る

 ここ数年間で販売台数の増加が顕著になり、今では全自動車の4割にまでシェアを伸ばしているのが軽自動車です。いくつかの県ではシェアが5割を超えているケースもあるなど、日本の自動車市場のトップセラーに君臨しています。

とにかく見た目を重視し、デザインに全振りした軽自動車たち
とにかく見た目を重視し、デザインに全振りした軽自動車たち

 軽自動車の歴史は古く、日本独自の自動車規格として法律で制定されたのは1949年です。そして、1954年には現在のようにボディサイズと排気量が厳密に定められました。

 本格的な普及が始まったのは1960年代からで、当初は登録車よりも安価で「初めてのマイカー」としての需要が拡大し、1970年代には多様化するニーズに合わせてさまざまなジャンルの軽自動車が登場。

 そして1970年代の終わりからは「日常の足」として軽自動車は欠かせない存在となり、改良と進化を重ねて現在に至ります。

 これまで膨大な数の軽自動車が販売されてきましたが、なかには個性的なデザインのモデルもありました。

 そこで、デザインに全振りしたかのような軽自動車を、3車種ピックアップして紹介します。

●オートザム「AZ-1」

軽自動車では唯一無二のガルウイングドアを採用した「AZ-1」

 1980年代には、登録車と同じく軽自動車もターボエンジンの普及により高出力化を果たしました。そして、1990年代の初頭には、本格的な軽スポーツカーが矢継ぎ早に3台登場し、そのなかでもトリを飾ったのが1992年に発売されたオートザム(マツダ)「AZ-1」です。

 AZ-1は軽自動車で唯一無二となるガルウイングドアを採用した2シーターのクーペで、ボディは生粋のスポーツカーといえるシャープなウェッジシェイプを実現。

 このボディのリアミッドシップに最高出力64馬力のスズキ製660cc直列3気筒DOHCターボエンジンを横置きに搭載し、トランスミッションは5速MTのみと、まさに「ミニスーパーカー」といえる仕様でした。

 シャシは専用に開発されたスチール製モノコックで、外装にはFRPのパネルを多用して軽量化が図られ、車重はわずか720kgを達成していました。

 さらに、ステアリングのロック・トゥ・ロックが2.2回転に設定され、軽量な車体と相まってクイックなハンドリングとなっていましたが、足まわりのセッティングが未熟で、アンダーステアから突如オーバーステアに転じることもあるなど、操縦性はかなりの「じゃじゃ馬」といえました。

 また、コクピットの設計もタイトで、サイドシルがシートより高かったことから乗降性も良好とはいえず、荷室もシートの後方に荷物を置く以外にトランクもなく、実用性はほとんど考慮されていませんでした。

 これらの要素に加えて価格も149万8000円(消費税含まず)と高額だったことから、同時期に発売されたホンダ「ビート」、スズキ「カプチーノ」よりも圧倒的に販売台数は少ないまま1994年に生産を終了。

 しかし、AZ-1は軽自動車という枠を超越した存在であり、まさにバブルが生んだ歴史的な名車といえるでしょう。

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●スバル「R1」

居住性よりもパーソナルカーとして外観デザインを優先した「R1」

 スバルは2012年以来、自社で軽自動車を生産していませんが、かつては歴史に残る名車である「スバル360」と「サンバー」をはじめ、数多くの軽自動車を世に送り出してきました。

 そして、同社で最後の新型軽乗用車となったのが、2004年に発表された軽スペシャリティカーの「R1」です。

 R1のボディは5ドアハッチバックの「R2」をベースにした3ドアハッチバッククーペで、フロント部分はR2に準じたデザインでしたが、ショートルーフによる台形のサイドビューが斬新で高く評価されました。

 内装ではインパネまわりはR2と同様となっていましたが、R1独自のカラーコーディネートが採用され、アルカンターラと本革を組み合わせたトリムが設定されるなど、軽スペシャリティカーにふさわしい仕様となっていました。

 一方で外観デザインを優先したことから後席のスペースは狭く、あくまでも2名乗車を前提とした2+2という割り切った設計でした。

 搭載されたエンジンは、当初、最高出力54馬力を発揮する660cc直列4気筒自然吸気のみで、後に64馬力を発揮する直列4気筒DOHCスーパーチャージャーを搭載した「S」グレードを追加。トランスミッションは全車CVTのみとされました。

 また、足まわりには前後ストラットの4輪独立懸架を採用し、しなやかで上質な走りにもこだわっていました。

 しかし、すでに軽自動車市場にはスペシャリティカーのニーズはなく、販売は低迷し、2010年にR1はR2とともに生産を終了しました。

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●ホンダ「N-BOXスラッシュ」

シリーズのなかでも異端の存在で、とにかく内外装のデザインにこだわっていた「N-BOXスラッシュ」

 前述のとおり、現在、軽自動車は日本の自動車市場でトップセラーですが、なかでもその頂点に君臨しているのがホンダ「N-BOX」シリーズです。2021年まで7年連続で暦年販売台数1位を獲得しています。

 このN-BOXシリーズのなかでも非常にユニークな存在だったのが、初代N-BOXベースの派生車として2014年に発売された「N-BOXスラッシュ」です。

 N-BOXスラッシュはすべてのピラーを短くして全高を下げ、1670mmとベース車の1790mmから120mmも全高が低くなっており、全体のシルエットもクーペをイメージしていました。

 また、リアドアを両側スライドドアからヒンジドアに変更し、フロントセクション以外のボディパネルとウインドウガラスすべてが新規で設計されるなど、かなり大規模な改変を実施。

 内装もN-BOXと差別化され、配色や素材の異なる5つの世界観を表現した5パターンを設定し、オーディオも8スピーカー+サブウーファーを設置するハイエンドな仕様も選択できました。

 さらに音質にこだわっており、スピーカーからの音による内装の微振動を低減する「デッドニングキット」がオプションで用意されていたほどです。

 ほかにも、電動パーキングブレーキやパワーステアリングのアシスト力を調整できる「モード切り替えステアリング」など、N-BOXには無い装備を搭載。

 N-BOXスラッシュはエクステリアデザイナーが遊びで書いたスケッチから量産化が決まったとのことで、誕生の経緯もユニークですが、コストを度外視したような内外装のデザインや装備のこだわりも異例でした。

 その後、N-BOXスラッシュは2代目N-BOXの登場以降も継続して販売されていましたが、2020年2月に生産を終了しました。

※ ※ ※

 今回、紹介した3台は、どれも開発者のこだわりが強く感じられるモデルばかりです。

 軽自動車というと限られたボディサイズのなかで、いかにスペース効率を高めるかが重要で、近年のモデルは個性よりも優先されているといえるでしょう。

 今後、こうしたモデルが登場することは難しい状況ですが、軽自動車もEV化が加速しようとしており、これまでと違った発想のモデルが出てくるかもしれません。

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