「実車見てからでは遅い?」 なぜ新型車販売「先行受注」主流に? 発売日に注文で納期数か月待ちも

最近、新型車の正式発表前(発売日)に「先行受注」を開始する自動車メーカーが多く見受けられます。なぜ発表や発売前に受注を開始するのでしょうか。

もはや発表日・発売日の意味は無い? 先行受注が当たり前になる現状

 近年の国内新車市場では、正式な発表や発売前に「先行予約受注」や「先行注文」(以下、先行受注)をおこなうことが一般的になっています。
 
 本来であれば新型車の発表日や発売日以降に受注を開始するという印象がありますが、なぜ先行して受注を開始することが当たり前のようになったのでしょうか。

トヨタの人気ミニバン新型「ノア」と新型「ヴォクシー」は2021年12月8日から先行受注を開始し、2022年1月上旬に発表・発売となるという
トヨタの人気ミニバン新型「ノア」と新型「ヴォクシー」は2021年12月8日から先行受注を開始し、2022年1月上旬に発表・発売となるという

 国内の自動車市場では、毎月のようになんらかの新型車が発売されています。

 新型車といっても現行車を全面刷新する「フルモデルチェンジ」や、ベースはそのままながら大きく改良を加える「マイナーチェンジ(大幅改良)」、そして小規模に仕様変更を実施する「商品改良(一部改良)」と商品価値を高めるためにさまざまな手法が存在します。

 そうしたなか、特にフルモデルチェンジの場合は、正式発表・発売の数か月も前から先行受注を開始する自動車メーカーが最近では比較的多く見受けられます。

 例えば、2021年12月8日にトヨタは新型「ノア」と新型「ヴォクシー」のティザーサイトを公開するとともに、同日から先行受注を開始しました。

 いくつかの販売会社によれば初日だけで250台から300台(1社あたり)を受注したといい、多くのユーザーが関心を持っていることが分かります。

 また、12月16日に三菱はフルモデルチェンジした新型「アウトランダーPHEV」を同日に発売したことを発表しましたが、すでに10月28日から先行受注を開始していると説明。

 さらに受注開始から発売日までの約1か月半で6915台(販売目標の7倍)を受注したことも明らかにしています。

 同様にマツダも12月16日に商品改良をおこなった新型「ロードスター」を2022年1月中旬に発売するとし、同16日より先行受注を開始しました。

 このように最近の国内新車市場では、正式発表や発売に先駆けて受注する動きが定番化しつつあります。

 なぜこのような販売戦略をおこなうようになったのでしょうか。国産メーカー各社ならび販売店では次のように話しています。

「これまで発表・発売以降に受注(オーダー)するという流れが一般的でしたが、この場合だと初期の生産台数をどれほど計画すればいいかの目処が立ちづらい傾向にあります。

 そのため、発表・発売前に先行受注をおこなうことで、ある程度の生産台数の見通しを立てることが可能となるため、先行受注を取る動きになっています」(国産メーカー担当者)

 一方で、既存ユーザーの確保という戦略もあると、国産メーカー販売会社の担当者は説明します。

「フルモデルチェンジやマイナーチェンジなどの場合、既存オーナー様へ乗り換えを提案することもあります。

 そうした場合、少しでも早く欲しいというお客さまへの対応として先行受注という方式を取ることがありました。

 最近では、それが新規のお客さまの確保という意味合いも強くなり、今のようになっているようです」

 また前出とは別の国産メーカー担当者は宣伝としての観点から次のように話しています。

「基本的に発表・発売前の1か月くらい前から先行受注を開始しており、発表のタイミングなどで『受注1か月で販売目標台数の○倍』とアピール出来るとそのクルマが人気という宣伝にもなります」

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