記録より記憶に残るクルマとは? ヒットしなかったけど個性が光る車3選

自動車メーカーが新型車を開発する際には、ライバル車に対していかに個性を主張するかが重要です。しかし、個性を主張したからといっても、ヒットするとは限らないのが難しいところではないでしょうか。そこで、人気とならなかったけど個性が光るクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

個性的ではあったもののヒットしなかったクルマを振り返る

 毎年、各自動車メーカーから数多くの新型車が発売されますが、ほとんどの車種にはライバル車が存在します。そのため、性能や装備、価格、デザインなどで、いかにライバルに対してアドバンテージを築くかが重要です。

まさに記録よりも記憶に残る個性的なクルマたち
まさに記録よりも記憶に残る個性的なクルマたち

 ライバル車には無い部分を取り入れられれば、それは「個性」につながり、販売の現場であるディーラーでも顧客へのアピールに使えます。

 しかし、個性的なクルマが必ずしもヒットするわけではなく、その時々のニーズにマッチさせる必要もあり、そこが新型車開発の難しさといえるでしょう。

 一方で、ニーズをキャッチアップできなかったクルマでも、かなりの意欲作だったモデルが存在。

 そこで、まさに記録より記憶に残るような個性が光るクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

●スバル「R1」

軽スペシャリティカーとして高く評価されたものの人気車にはならずに消えた「R1」

 かつてスバルは「スバル360」や「サンバー」といった、名車と呼ばれる軽自動車を数多く輩出してきました。

 しかし、2012年に軽自動車の生産から撤退。そして、同社最後の新型軽乗用車となったのが、2005年にデビューした「R1」です。

 R1のボディは5ドアハッチバックの「R2」をベースにした3ドアハッチバッククーペで、スペシャリティカーに位置づけられていました。

 外観はR2のルーフを短くした印象ですが、台形のフォルムを形成するサイドビューが斬新で、デザインは高く評価されました。

 内装ではインパネまわりはR2に準じたデザインでしたが、R1独自のカラーコーディネートが採用され、アルカンターラと本革を組み合わせたトリムが設定されるなど、スペシャリティカーに相応しい内容です。

 一方で外観デザインを優先したことから後席のスペースは狭く、あくまでも2人乗りを前提とした2+2という割り切った設計でした。

 搭載されたエンジンは、当初、最高出力54馬力を発揮する660cc直列4気筒自然吸気のみで、後に64馬力を発揮する直列4気筒DOHCスーパーチャージャーを追加。トランスミッションは全車CVTのみです。

 足まわりには前後ストラットの4輪独立懸架を採用しており、上質な走りにもこだわっていました。

 しかし、軽自動車市場にはスペシャリティカーのニーズはなく、販売は低迷し、2010年にR1はR2とともに生産を終了しました。

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●日産「ミストラル」

都会派クロカン車という発想は良かったもののヒットしなかった「ミストラル」

 1990年代の初頭に日本で「RVブーム」が起こり、なかでもクロスカントリー4WD車が市場を席巻するほどヒットしました。

 日産はRVブームが起こる以前から、大型車の「サファリ」、ピックアップトラックの「ダットサントラック 4WD」、ミドルクラスの「テラノ」の3タイプのクロカン車を販売しており、ブームの到来によってどれも好調なセールスを記録。

 そこで、日産は次の一手として、1994年に新型クロカン車の「ミストラル」を発売しました。

 ミストラルはテラノと同じく9代目ダットサントラックのラダーフレームに、専用のボディを架装する手法で開発され、生産はスペイン工場でおこなわれ、欧州各国にデリバリーするとともに日本にも輸入されたかたちです。

 ボディバリエーションは当初ロングボディの5ドア3列シートのみの設定でしたが、後にショートボディの3ドア2列シートが追加されました。

 国内仕様では全車2.7リッター直列4気筒OHVディーゼルターボエンジンと4速ATの組み合わせで、駆動方式はパートタイム式4WDを採用。

 足まわりのセッティングは欧州での使用環境を反映して、高速域での直進安定性や乗り心地の良さを重視するなど、シティオフローダーというコンセプトでした。

 そして、ミストラルのハイライトは外観にあり、デビュー当初はユニークなフォルムのクロカン車という印象でしたが、1997年のマイナーチェンジでフロントフェイスが一新され、アグレッシブなデザインへと変貌してさらに個性を強めたクロカン車となりました。

 しかし、テラノほどの人気は得られず販売は低迷し、ミストラルは1999年に一代限りで生産を終了しました。

●ホンダ「エディックス」

新発想のミニバンながらオーソドックスなモデルには対抗できなかった「エディックス」

 ホンダは1994年に同社初のミニバンとして初代「オデッセイ」を発売し、さらに1996年にはボクシーなスタイルの5ナンバーサイズのミニバン、初代「ステップワゴン」がデビューして、どちらも大ヒットを記録しました。

 そして、1990年代は各メーカーから次々と新型ミニバンが発売されて完全にブームといった状況となり、ミニバンはファミリーカーの定番車種として定着しました。

 その後、趣向を凝らしたミニバンが登場して多様化が始まり、ホンダも2004年に、新発想のミニバン「エディックス」を発売。

 エディックスの最大の特徴は室内で、前列、後列とも3名分のシートが設置された2列シート6名乗車のレイアウトを採用していました。

 また、6席はすべて独立してスライドでき、フル乗車ではV字に配列することで乗員同士の肩が触れないように工夫され、さらにルームミラーをセンターではなくドライバー側にオフセットして設置し、サンバイザーが3つ装備されるなど、さまざまなアイデアが盛り込まれていました。

 外観は室内の広さを確保するために左右のパネルがほぼ垂直になっていて、ボディサイズは全長4285mm×全幅1795mm×全高1610-1635mmと、全長は短く全幅を広くしたユニークなフォルムを実現。なお、ドアは前後ともヒンジドアとなっていました。

 エディックスはユニークなシートレイアウトの個性的なミニバンとして大いに話題となりましたが、人気とはならず、2009年に一代限りで生産を終了しました。

※ ※ ※

 前述のとおり1990年代にはミニバンブームが起こり、新型ミニバンが乱立しましたが、そのほとんどはすでに淘汰されてしまいました。

 現在もミニバンはファミリーカーの定番車種ですが、人気のモデルは定着していることと、メーカーがSUVの開発に注力していることから、近年、新たなミニバンはほとんど登場していません。

 かつて一世を風靡したオデッセイも工場の閉鎖に伴い2021年で生産を終える予定で、まさにニーズの変化を如実に表しているのではないでしょうか。

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