実はかなりコストがかかっていた? 見た目以上に作り込まれていた車3選
既存のクルマをベースに一部分を変更してつくられる派生車や、装備が充実した特別仕様車などは、比較的コストや開発期間が抑えられつつ仕立てられるメリットがあり、各メーカーとも盛んに販売されてきました。一方で、そうした派生車や特別仕様車でも、実は高コストだったと思われるモデルも存在。そこで、かなり作り込まれていた派生車・特別仕様車を、3車種ピックアップして紹介します。
意外とつくり込まれていた派生車・特別仕様車を振り返る
1台の新型車を開発するには、莫大な費用と労力、時間がかかります。しかし、既存のモデルをベースに、外観の一部やエンジンなどを変更して仕立てられた派生車なら、開発費や開発期間が抑えられるとあって、古くから各メーカーから盛んに販売されてきました。
また、もっと手軽に仕立てられるのが特別仕様車で、装備を充実させたり、外装パーツの追加など大規模な改変ではないため、ユーザーにとってもお買い得なモデルとして、これまで数多く生産されました。
一方で、そうした派生車や特別仕様車であっても、かなり高コストだったと思われるモデルも存在。
そこで、かなり作り込まれていた派生車・特別仕様車を、3車種ピックアップして紹介します。
●三菱「パジェロジュニア フライングパグ」
現在、小型クロカン車として唯一無二の存在となっているスズキ「ジムニー/ジムニーシエラ」ですが、かつてはライバル車が存在していました。
それが、1994年に誕生した軽自動車の三菱「パジェロミニ」と、1995年発売の登録車「パジェロジュニア」です。
両車はベースとなるシャシが共通で、パジェロミニは660ccエンジン、パジェロジュニアは1.1リッターエンジンを搭載し、外観もトレッドが異なるなど、ジムニー/ジムニーシエラの関係と同一です。
そして、1997年に三菱の販売チャネルのひとつである「カープラザ」設立20周年キャンペーンの一環として、パジェロジュニアをベースにした特別仕様車の「パジェロジュニア フライングパグ」が発売されました。
フライングパグの外観は第二次世界大戦以前に生産されていたクラシックカーをモチーフにデザインされており、ドアパネルとキャビン上部、ルーフを除く外板は、ほぼすべて新作されています。
また、ボンネット前端には「スリーダイヤ」のクレストが装着され、ハロゲンヘッドライトやフォグランプ、フロントウインカーランプは専用の丸型を採用し、テールランプと前後バンパーも専用デザインです。
内装も木目調パネルのインパネや、プロテインレザー素材のシート、黒基調の内装色とするなど、クラシカルに演出されていました。
内外装をクラシカルにカスタマイズされた特別仕様車は、軽自動車やコンパクトカーを中心に珍しい存在ではありませんが、フライングパグのつくり込みはそれらのモデルとは一線を画していたといえるでしょう、
一方で、これほど大規模な改造が施されていたにもかかわらず、価格は175万円(消費税含まず)からと、ベース車の約20万円高に抑えられていました。
●ホンダ「N-BOX スラッシュ」
現在、日本の自動車市場でトップセラーに君臨しているのは、ホンダの軽ハイトワゴン「N-BOX」シリーズです。
初代は2011年に発売されるとまたたく間にヒット作となり、2014年には初代N-BOXをベースに全高を1670mmまで低くして、クーペをイメージしたフォルムの派生車「N-BOX スラッシュ」が誕生しました。
N-BOX スラッシュはすべてのピラーを短くして全高を下げる手法の、いわゆる「チョップドトップ」をメーカーが実践したかたちです。
さらにリアドアをスライドドアからヒンジドアに変更され、フロントセクション以外のボディパネルとウインドウガラスすべてが、新規で製作していました。
内装では配色や素材の異なる5つの世界観を表現した5パターンを設定し、とくにこだわっていたのがオーディオで、8スピーカー+サブウーファーを設置するハイエンドな仕様です。
さらにディーラーオプションで、スピーカーからの音による内装の微振動を低減する「デッドニングキット」が用意されていました。
ほかにも、N-BOX スラッシュ専用アイテムとして、電動パーキングブレーキやパワーステアリングのアシスト力を選択できる「モード切り替えステアリング」なども装備。
もともと、初代N-BOXの開発段階ではN-BOX スラッシュは計画されておらず、エクステリアデザイナーが遊びで書いたスケッチから量産化が決まったとのことで、開発にはかなりの工数がかかったと予想できます。
その後、N-BOX スラッシュは、2代目N-BOXが発売された後も初代ベースのまま継続して販売されていましたが、2020年2月に生産を終了しました。
●フォルクスワーゲン「ゴルフ カントリー」
フォルクスワーゲンは、1974年に「タイプ1(ビートル)」の後継車として、FFコンパクトカーの初代「ゴルフ」を欧州で発売。FFコンパクトカーのベンチマークとなるほど優れたパッケージングと走りの良さで大ヒットを記録しました。
その後、1983年に2代目が登場し、モデルライフ末期の1990年には魅力的な派生車の「ゴルフ カントリー」が発売されました。
ゴルフ カントリーはフルタイム4WD車の「ゴルフ シンクロ」をベースに、開発と生産は、現行モデルのメルセデス・ベンツ「Gクラス」やトヨタ「スープラ」の生産をおこなっている、オーストリアのマグナシュタイヤー(当時はシュタイヤープフ)が担当。
ボディは最低地上高210mmまでリフトアップされ、フロントにスチール製のグリルガードと下まわりを保護するアンダーガード、リアにはスペアタイヤキャリアが装着されるなど、本格的なクロカン車に仕立てられています。
近年のSUV風モデルとは異なり、シャシは各部を補強して剛性アップが図られ、タイヤはブロックパターンのオフロードタイヤを標準装備しており、実際に高い悪路走破性を誇りました。
1991年には日本にも正規輸入されましたが販売的には成功したといえず、わずかな数が輸入されたにとどまりました。
そして、1992年に3代目の登場とともにゴルフ カントリーは生産を終了。今では世界的にもレアなゴルフとして、珍重されています。
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今回、紹介した3車以外にも、トヨタ「オリジン」「bB オープンデッキ」や、日産「スカイラインGT-R オーテックバージョン 40thアニバーサリー」、マツダ「ロードスタークーペ」など、わずかな台数のためにつくり込まれていたモデルが存在します。
「そこまでやらないでも」と思ってしまいますが、どれも開発者の情熱が感じられ、見ているだけでも楽しいものです。
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