55年以上も生き続ける「走るシーラカンス」がある? 現行モデルのユニークSUV3選
近年、世界的に人気が高いクルマといえばSUVです。現在も各メーカーから次々と新型SUVが登場し、人気が衰える気配もありません。そこで、世界のメーカーから販売されている現行モデルのSUVのなかから、ユニークなモデルを3車種ピックアップして紹介します。
現行モデルのSUVからユニークなモデルをピックアップ!
現在、世界的に人気が高いSUVの源流を遡ると、クロスカントリー4WD車や4WDピックアップトラックにたどり着きます。
しかし、クロカン車は文字どおり悪路走破性に特化したクルマで、普段使いには不便な点もありました。
そこで、オンロードでの走りを重視したクロスオーバーSUVが誕生し、オフロード性能が比較的高いSUVでもモノコックシャシを採用するなど、乗り心地や走行安定性の向上が図られ、現在は販売の主流となっています。
今では、世界中のメーカーがSUVの開発に注力している状況で、新型モデルが次々と登場しており、市場では200万円を下まわるコンパクトSUVから、3000万円クラスの高級SUV、さらにスーパーカーに匹敵するような高性能なモデルにEVも販売中です。
なかにはかなり風変わりなモデルも存在。そこで、現行モデルのSUVのなかからユニークなモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
●スバル「フォレスター ウィルダネス」
1990年代に各メーカーから、現在のクロスオーバーSUVの原型というべき都市型SUVが発売され、高い人気を獲得。そこでスバルは、1997年に同社初の本格的なSUVとして初代「フォレスター」を発売しました。
他のSUVがまだクロカン車の名残りがあるなか、フォレスターはスタイリッシュなステーションワゴンタイプのボディに、オンロード性能を重視しており、見事にユーザーニーズを捉えてヒット作になりました。
その後、代を重ね2007年に登場した3代目からはオフロード性能も考慮し、デザインもよりSUVらしいフォルムとなり、現在の5代目に受け継がれています。
この5代目においてスバルのアメリカ法人は、2021年9月2日に「フォレスター ウィルダネス」を発表。2021年3月に発表した北米専用車の「アウトバック ウィルダネス」に続く、ウィルダネスシリーズ第2弾となるモデルです。
ウィルダネス(Wilderness)とは日本語で「荒野」を意味し、フォレスター ウィルダネスはクロスオーバーSUVながらも悪路走破性を重視しており、サスペンションに専用コイルスプリングを採用することで、最低地上高をベースの8.7インチ(約220mm)から9.2インチ(約233mm)までリフトアップ。
外観は、ブラックカラーの樹脂製プロテクションパーツをボディ全周にわたって装着し、立体的な造形でタフな印象を表現するとともに、車体を保護する役割も兼ね備えています。
内装ではイエローをアクセントに、ブラックとグレーのダークトーンで全体をコーディネート。撥水性のある表皮を使用したシートなども採用し、アウトドアでも気兼ねなく使える機能性を備えました。
搭載されるエンジンは、最高出力182hpを発揮する2.5リッター水平対向4気筒で、変速比の範囲を拡大し、ファイナルギヤ比をローギヤ化したリニアトロニックCVTを組み合わせることで、駆動力を向上。
タイヤもオールテレーンタイヤ(ヨコハマ ジオランダー)を装着し、不安定な路面でも高いグリップ力が期待できます。
フォレスター ウィルダネスはかなり本格的につくり込まれており、クロカン車に近い悪路走破性を実現した稀有なクロスオーバーSUVといえます。
北米では2021年10月に発売される予定で、価格は3万2820ドル(日本円で約360万円)。残念ながら日本での販売は今のところ計画されていません。
●ジャガー「Iペイス」
2018年に、ジャガー初のBEV(ピュアEV)として誕生したのが「I-PACE(ペイス)」です。日本でも同年に販売が開始されました。
Iペイスは公式にはSUVにカテゴライズされていますが、外観のデザインは低く流麗なフォルムとなっており、とくにコンパクトなキャビンが印象的で、SUVというよりもスタイリッシュな5ドアハッチバックといったイメージです。
パワーユニットは車体の前後に搭載されたふたつのモーターによる4WDとなっており、システムトータルで最高出力400馬力を発揮。
0-100km/h加速は4.8秒、最高速度は200km/hと、2.2トン強の車両重量ながらかなりの俊足ぶりです。
バッテリーは90kWhの大容量リチウムイオン電池を搭載し、航続距離は1回のフル充電で438km(WLTCモード)と公表されていますから、日常での使用にも十分に耐えうるでしょう。
また、Iペイスは重量物であるバッテリーが床下に搭載されており、低重心に貢献。さらに最低地上高は174mmということからもオンロード性能を重視していることがうかがえますが、2018年にはサーキットにおけるワンメイクレースが開催されたほどで、やはりSUVというカテゴライズはかなり微妙ではないでしょうか。
日本でのIペイスの価格は1005万円 (消費税込)からで、装備の違いで3グレードの展開となっていますが、モーターやバッテリーのスペックは同一となっています。
●ワズ「SGR」
日本ではあまり馴染みがありませんが、ロシアには古くから複数の自動車メーカーが存在しており、そのひとつがUAZ(ワズ)です。
ワズはソ連時代の1941年に設立され、第2次世界大戦中は主にトラックなどの軍用車や砲弾も製造していました。
戦後はトラックやバン、マイクロバスを生産しており、1991年のソ連解体後は民間会社としてロシア経済を支える重要な企業のひとつに成長。
現在は、近代的なSUVとトラックが主力となっていますが、民営化以前の1965年に誕生した「452」というワンボックスタイプのオフロードモデルも健在です。
現行モデルはロシア国内で「SGR」、欧州など他国では「クラシック」の名で販売されており、ラダーフレームにワゴン、バン、シングルキャブ/ダブルキャブのトラックなど多彩なボディが架装されています。
外観は日本の古き良き商業車のイメージで、丸みを帯びたボディに、フロントフェイスは丸目2灯のヘッドライトと小ぶりなフロントグリルによって、かわいらしい印象です。
ワゴンのボディサイズは全長4363mm×全幅1940mm×全高1900mmとかなり大柄で、搭載されるエンジンは最高出力112馬力の2.7リッター直列4気筒ガソリンに、トランスミッションは5速MTのみ。最新モデルではユーロ5の環境性能に対応しています。
駆動方式はパートタイム4WDを採用してオプションでデフロックが装備可能。足まわりは前後リーフスプリングのリジットアクスルとされるなど、オフロード走行に特化していますが、いい換えれば昔から進化していないということでしょう。
内装もかなりシンプルで、インパネにはセンターにスピードメーターが設置され、周辺にスイッチ類と1DINのオーディオスペースがあるのみです。一方で、極寒の環境での使用を考慮して、2020年モデルからシートヒーターが装備できるようになっています。
さらに2020年には「SGR エクスペディション」という、大型のガードバンパー、アンダーガード、ルーフキャリア、ウインチなどが装備された7人乗りの「探検仕様」が追加されました。
SGRは誕生からフルモデルチェンジすることなく56年間も経っており、現代のクルマと比べて動力性能や安全性能で不安がありますが、シンプルかつ頑丈なつくりから、まだまだ現役を続行するようです。
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SUVというカテゴリーは実はかなり曖昧で、明確な基準はありません。そのため、悪路走破性や駆動方式も関係なく、2WDのモデルも数多く存在しているほどです。
ボディ形状もさまざまで、共通項としては全高が比較的高いことくらいでしょうか。
とはいえ、コンパクトカーやステーションワゴンでも最低地上高を少し上げて、ルーフレールや樹脂製プロテクターを装着すればSUVに早変わりするなど、かなり安上がりとあって、メーカーとしてもユーザーとしてもありがたいことで、定義は曖昧なままで良いのかもしれません。
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