ミニバン3列目から車外放出事故発生! 原因となる「ハイドロプレーニング現象」はどう対処すべきか
ハイドロプレーニング現象にはどう対応すべき?
今回の事故の原因となった可能性が高いハイドロプレーニング現象とはどのような現象なのでしょうか。
事故当時は雨が降っていて、路面がぬれており、エルグランドのドライバーは「水たまりでスリップしてガードレールにぶつかった」と話しています。
ブリヂストンでは「雨天時運転のポイント」として公式サイトで以下のように説明しています。
「雨の日の運転は路面が滑りやすくなっているため、スピードは控えめに、車間距離を十分にとって、急ハンドル・急ブレーキを避けて運転することが重要です。
ハイドロプレーニング現象(水上滑走現象)とはタイヤが水膜によって浮いてしまう現象のことで滑りの原因となります。
新品タイヤでも速度を上げていくと発生、またタイヤの残り溝が浅くなると、より低い速度からその現象が発生することが試験によって確認できています。
とくに雨の日の高速道路等では、タイヤと路面の間の水をかき出す力(排水性能)が低くなり、タイヤが浮く状態になることで、ハンドルやブレーキが効かなくなるハイドロプレーニング現象が発生しやすくなります。走行前にタイヤの残り溝をチェックしましょう。」
溝が7.5mmある新品のタイヤであっても、速度が上がるにつれて路面との接地面積がどんどん少なくなっていくことが分かります。
実際の試験では、時速80キロでは新品タイヤでも「一部浮いている」状態になり、残り溝1.6mmでは、「ほとんど浮いている」という状態になったといいます。
雨の日の運転では残り溝と速度に十分な注意が必要ということがわかります。
また、前出の中島氏は次のようにも説明しています。
「路肩側に車体後方が衝突して投げ出されたということは、その時点では車体がスピンして前後逆向きになっていたのでしょう。
その前にスピンのきっかけとなる衝突がなかったとしても、ハイドロプレーニングが生じているときに滑っているタイヤの接地(グリップ力)の回復を待たずにブレーキを踏んでしまい、回復した途端に急ブレーキになると車体後部が振り出されるような動きになり、スピンが生じることはありえます。
車両前部の左寄りに力が加われば(ガードレールや他車との接触)より容易にスピンが生じます」
では、雨天時の高速走行中にハイドロプレーニング現象に遭遇したらどうしたらいいのでしょうか。
「加速はせず、わずかに緩め気味でアクセルペダルを踏みます。ハイドロプレーニングといっても摩擦力は0ではないので、徐々に減速します。
減速していくとどこかでグリップが回復しますが、そのときに加速も減速もしないようなタイヤ回転速度にしているのが理想です。
アクセルを踏み込むと空転して回復が遅れますし、ポンと離してしまうとエンジンブレーキでのタイヤ回転低下が起きて回復時に急ブレーキになります」(中島氏)
雨天時の高速道路では、ほとんどの場合、速度規制が実施されます。
ハイドロプレーニング現象は速度が高いほど発生の危険が高まり、発生してしまうとタイヤのグリップ力が完全に失われるので、制限速度を必ず守って走行しましょう。
※ ※ ※
また、今回の事故では1・2列目に乗っていた4名はシートベルトを正しく着用していたことで軽傷でした。
事故後のエルグランドの写真を見てみると、ボディはそれほど大きな損傷を受けているわけでもなくしっかりと原形をとどめているようです。
「シートベルトを正しく装着していれば」車内の装備などで軽いケガを負うことはあっても車外放出はありえないと考えられます。
乗員全員にシートベルトをさせるのは運転者の義務ですが、誰かに促されなくても、クルマに乗ったらすぐに自らシートベルトを着用しましょう。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。
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