鳴り物入りでデビューするも売れず? 期待に反してヒットしなかった車3選

現行モデルのトップセラーというと登録車ではトヨタ「ヤリス」、軽自動車ではホンダ「N-BOX」シリーズで、どちらもデビュー以来好調なセールスを記録しています。そうしたヒットモデルの影で、売れないモデルも存在。そこで、期待に反してヒットしなかったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

期待されるもセールス的には失敗に終わったクルマを振り返る

 新型車がデビューすると、すべてのクルマには必ず月間販売台数の目標が設定されます。この販売目標を達成するだけでなく、その倍以上も売れて大ヒットするクルマも存在しますが、どのクルマも目標を達成できるわけではありません。

期待は高かったがセールス的には成功しなかったクルマたち
期待は高かったがセールス的には成功しなかったクルマたち

 目標を達成できないクルマはマイナーチェンジでデザインの変更や、スペック、装備などの改善がおこなわれるのが通例で、それでも販売が好転しない場合はフルモデルチェンジか消滅の選択が迫られます。

 各メーカーとも販売目標の達成以上の成果を目指していますが、かつて大きな期待がかけられてデビューしたものの、売れなかったモデルも存在。

 そこで、期待に反してヒットしなかったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

●トヨタ「キャバリエ」

政治的な背景から日本で販売されることになった「キャバリエ」

 1980年代に、大きな社会問題となったのが日米貿易摩擦です。日本からアメリカへ工業製品が大量に輸出されていたことから貿易不均衡が起こり、アメリカの労働者が中心となって日本に大きな圧力がかかりました。

 この日米貿易摩擦で矢面に立ったのが自動車で、貿易不均衡改善のために国内メーカーはアメリカのメーカーと協業を開始。

 1996年に発売されたトヨタ「キャバリエ」は、まさに日米貿易摩擦解消に向けた象徴のようなクルマです。

 トヨタはGMと提携してシボレー キャバリエを日本で発売することになり、製造はGMが担当。トヨタにOEM供給してトヨタブランドで販売するという「日米産業協力プロジェクト」の一環で誕生しました。

 ボディタイプは2ドアクーペと4ドアセダンをラインナップし、サイズは全長4595mm×全幅1735mm×全高1395mm(セダン)と、純粋なアメリカ車ながら日本の道路事情に適したサイズです。

 外観は当時のアメリカでの流行を色濃く反映しており、トヨタ車とは一線を画するものでしたが、曲面を組み合わせた流麗なフォルムはスポーティなイメージとなっていました。

 搭載されたエンジンは最高出力150馬力を発揮する2.4リッター直列4気筒で、トランスミッションは4速ATのみと、スペック的には目をみはるほどではありません。

 また、日本仕様では右ハンドル化やウインカーレバーの移設、灯火類などが改良され、各エンブレムもシボレーからトヨタのものに変更されました。

 キャバリエはCMキャラクターに所ジョージ氏を起用するなど、かなり販売促進に力が入れられ、価格も181万円(消費税抜)からと戦略的な設定となっていました。

 しかし、日本人が描くアメリカ車のイメージとキャバリエは大きく異なったことなどからヒットすることなく、2000年には輸入が打ち切られて販売を終了。今では希代の珍車です。

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●スマート「フォーフォー」

コンセプトが「フォーツー」ほど明確ではなかった「フォーフォー」

 1994年に、ダイムラー・ベンツ(当時)とスイスの時計メーカー、スウォッチが、新たな自動車会社としてMCC(マイクロカーコーポレーション)を設立しました。

 1998年に「スマート」ブランドから2人乗りのマイクロカー「シティークーペ」(日本では「スマート」)が誕生。コンパクトなサイズながら強固なモノコックシャシ「トリディオンセーフティセル」の採用によって高い安全性の実現と、優れた経済性から欧州で大ヒットしました。

 シティコミューターとしてシティークーペは成功しましたがさらに次の一手として、2004年に5ドアハッチバックで5名乗車のスマート「フォーフォー」を発売。同時にシティークーペも「フォーツー」へと車名が変更されました。

 フォーフォーは、当時ダイムラー・クライスラーと資本提携していた三菱の「コルト」のプラットフォームをベースに開発され、日本でも同年に販売を開始。

 コルトに近いサイズのコンパクトカーで、スマートならではのポップなデザインが特徴で、エンジンはRRのフォーツーとは異なり、フロントに搭載するFFです。

 フォーツーよりも実用的なモデルとして発売されたフォーフォーでしたが、フォーツーほどのインパクトはなく、AMTのトランスミッション(欧州仕様ではMTも設定)もフォーツーでは受け入れられたものの、フォーフォーでは評判が悪かったこともあり、販売は低迷。さらに欧州でもヒットしなかったことから、2007年に生産を終了しました。

 その後、2014年にはスマートとルノー、日産の共同開発で、RRを採用したルノー「トゥインゴ」の姉妹車として2代目フォーフォーが復活すると、こちらはヒット作となりました。

●ホンダ「クロスロード」

プレミアムなクロカン車ながらホンダブランドでは厳しかった「クロスロード」

 1990年代の初頭に、日本の自動車市場では「RVブーム」が起こりました。RV(レクリエーショナル・ビークル)とはレジャー用途に適したモデルのことで、ステーションワゴンやミニバン、クロスカントリー4WD車などが含まれ、なかでもブームをけん引したのがクロカン車です。

 当時はクロカン車が空前のヒットを記録して市場を席巻しましたが、そんなRVブームの頃にホンダは自社でクロカン車を生産していなかったため、いすゞからOEM供給された「ジャズ」と「ホライゾン」を販売しました。

 さらに、1980年からホンダと英国のローバーグループは提携関係にあったことから、1993年にランドローバー「ディスカバリー」のOEM供給を受け、初代「クロスロード」として発売。

 クロスロードはミドルクラスのクロカン車で、外観はほぼディスカバリーのままと、差異はエンブレムの違いにとどまっています。

 直線基調のボディはルーフ後半を一段高くしたステップド・ルーフと、採光用のリア・クォータールーフウインドウを採用し、バリエーションは3ドア(2列シート5人乗り)、5ドア(3列シート7人乗り)の2タイプが設定されました。

 エンジンもディスカバリーと同じ最高出力180馬力の3.9リッターV型8気筒OHVエンジンを搭載し、トランスミッションは4速ATのみで、駆動方式はセンターデフのロックが可能なフルタイム4WDです。

 RV人気が高まるなか、国産車とほとんど競合しないプレミアムなクロカン車としてヒットが期待されたクロスロードでしたが、価格は389万円(消費税抜)からと高額で販売は低迷。

 そこで1996年に5ドアの2列シート車を新たに設定し、装備を見直すなど299万円(消費税抜)に価格を大幅にダウンしてテコ入れが図られました。

 しかし、クロスロードはボディやエンジンにインチサイズのボルト、ナットが使われていたため、整備ができるディーラーが限られるという問題もあり、販売は好転しませんでした。

 その後、ホンダは1995年に自社開発のRV、初代「CR-V」を発売してヒットを記録。そのため1998年にはクロスロードの販売を終了し、同時にホンダとローバーグループの提携は解消されました。

 バブル景気の頃にはランドローバー「レンジローバー」が富裕層から絶大な人気を誇り、ランドローバーはプレミアム車メーカーというブランドイメージを確立していましたが、ホンダブランドで高額なクロカン車は、ユーザーがイメージできなかったということでしょう。

 なお、2007年に2代目「ストリーム」をベースとした、手頃なサイズの3列シートSUVとして2代目クロスロードが登場。しかし人気とはならず、こちらも短命に終わりました。

※ ※ ※

 現在、トヨタはアメリカで販売しているクルマの多くが現地生産で、貿易不均衡の原因にはなっていません。また、ランドローバーは、より自社のブランド力が強くなり、他メーカーへのOEM供給はもはやありえないでしょう。

 キャバリエは政治的な思惑から、クロスロードは販売戦略上から誕生したモデルですが、非常にユニークなOEM車だったといえます。

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