見慣れぬトヨタ「中国クラウン」!? 日本同様に「憧れ」はセダンからSUV・ミニバンに移り変わったのか

中国仕様のクラウンってどんなの? 日本仕様と何が違う?

 中国で初めて生産されたクラウンは、12代目となるS180型で、日本には2003年に登場したモデルです。

 中国では2005年に中国第一汽車とトヨタの合弁会社、「一汽トヨタ」による生産・販売が始まりました。

 外観は日本仕様とほぼ一緒ですが、中国の舗装事情を考慮して、最低地上高は10センチほど高くなっています。

 パワートレインは2.5リッターV型6気筒エンジン(5GR-FE型)と、3リッターV型6気筒エンジン(3GR-FE型)の2種類が用意されており、どちらも中国で生産された中国向けエンジンでした。

 次に中国製2代目となる13代目S200型は日本におけるクラウンマジェスタのボディを採用。エンジンは、それまでの2.5リッターと3リッターに加え、4.3リッターV型8気筒エンジン(3UZ-FE型)も追加されています。

 ちなみに日本仕様のマジェスタはトヨタのCIマークが装着されているグリルでしたが、中国仕様はクラウン伝統の「王冠」マークが装着されていました。

 2012年にはマイナーチェンジがおこなわれ、初めて日本仕様とは違うエクステリアデザインを持つようになり、これ以降のすべてのモデルで中国仕様は日本仕様とは異なるデザインとなります。

 2014年の広州モーターショーでは14代目のS220型が中国向けに発表され、2015年モデルとして生産・販売が開始されます。

 このモデルでは自然吸気モデルは2.5リッターのみとなり、新たに2リッター直列4気筒ターボエンジン(8AR-FTS型)を搭載したスポーツグレードが追加されました。

 デザインもモデルライフの最初から日本仕様と差別化されており、特徴的な二段構えのグリルは、中国仕様ではよりスリムで簡素なデザインとなりました。

 しかし2010年代後半は、すでに高級車としての需要はレクサスなどの上位車種、そして「アルファード」や「ヴェルファイア(中国市場へは2019年より導入)」などの高級ミニバンへと移り変わる時期にあり、クラウンの販売は低迷することになります。

 2020年4月、一汽トヨタは15年にわたって続いた中国でのセダン型クラウンの生産と販売を終了しました。

上海モーターショー2021でお披露目された「クラウンヴェルファイア」(画像:上海モーターショー2021でお披露目時)
上海モーターショー2021でお披露目された「クラウンヴェルファイア」(画像:上海モーターショー2021でお披露目時)

 一度は消えたクラウンブランドでしたが、2021年4月に開催された上海モーターショーにて一汽トヨタはSUVの「クラウンクルーガー」、そしてミニバンの「クラウンヴェルファイア」を発表。日本でも大きな話題となりました。

 クラウンクルーガーは広州汽車とトヨタの合弁会社、「広汽トヨタ」が生産・販売する「ハイランダー」に対する会社違いの姉妹車に位置付けられ、クラウンヴェルファイアは中国向けヴェルファイアが受ける初のマイナーチェンジで、外装デザインのアップデートとともに正式な車名として「クラウン」を冠するものとなります。

 中国市場でのクラウンブランドは、人気SUVと高級ミニバンの世界において新たな歴史を刻み始めることになります。

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Writer: 中国車研究家 加藤ヒロト

下関生まれ、横浜在住。2017年に初めて訪中した際に中国車の面白さに感動、情報を集めるうちに自ら発信するようになる。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶかたわら、雑誌やウェブへの寄稿のみならず、同人誌「中国自動車ガイドブック」も年2回ほど頒布する。愛車は98年式トヨタ カレン、86年式トヨタ カリーナED、そして並行輸入の13年式MG6 GT。

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