トヨタ「GRヤリス」サブスク限定車は自分好みに進化!? トヨタとキントが仕掛ける新車ビジネスとは?
なぜアップデートとパーソナライズにはサブスクが最適なのか?
パーソナライズへの対応方法について、今回のオンライン記者会見では、モニター役のユーザーがGRヤリス“モリゾウセレクション”をサーキットで走行させ、トヨタのエンジニアがその場でデータを解析してソフトウェアをアップデートする対応を紹介していました。
ここまで丁寧な作業ではかなり人手が必要な作業に思えますが、「2022年春からGRガレージでパーソナライズのソフトウェアップデートに対応する際にも、各店に(特別な研修を受けたスペシャリストを配置するなど)お客さまに寄り添ったサービスを実際に進める」とトヨタ幹部はコメント。詳細については現在検討中だといいます。
こうしたアップデートとパーソナライズを定常的におこなうために、KINTOのようなサブスクリプションモデルが最適だとトヨタ幹部は主張します。
一般的な新車売り切り型の販売手法では、たとえば新車購入から数年後にトヨタの販売店以外へ中古車として流れてしまうと、トヨタの販売店、またメーカーとしてもそのクルマの走行状況やユーザーの情報を把握できなくなってしまいます。
そのため、トヨタが新車製造した後、KINTOのようなメーカー直系の企業がクルマの所有権を維持し続け、パーソナライズなソフトウェアップデートを継続的におこなうことで、ユーザーはいつも自分に最適な最新技術を持つクルマに乗り続けることができ、その状況をメーカーがしっかり把握できるという発想です。
また、販売店もユーザーに対してさまざまなサービス商品を提案するチャンスが増えます。
ユーザーとしてもトヨタが2019年にKINTOを始めたことで、以前のように現金やローンで新車を買ってから使うという発想から、サブスクリプションで効率的に使うという考え方への転換が徐々に進んできたように思えます。
とはいえ、KINTOの契約件数は2021年6月現在、月1000件から2000件程度にとどまっている状況です。
保険や税金など諸費用が含まれているサブスクリプションでの月額支払い額と、残価設定ローンなどによる月額支払い額に大きな差があり「サブスクが断然お得」とまではいい切れない印象があります。
そうしたなかで、今回トヨタが提案したパーソナライズなアップデートは、KINTO専用のプログラムであり、クルマのサブスクの本格普及に向けた大きな変化だと思います。
KINTO幹部は「ソフトウェアのみならず、インテリアの改良や、空力パーツの取付けなど、ハードウエアのアップデートも検討していきたい」と、パーソナライズに対する事業の広がりを示唆しました。
トヨタKINTOのほかにも、近年はメーカー各社がサブスク事業へ参入しています。
各社から、買うよりサブスクのほうが断然お得と思えるようなサービスが次々と登場することを期待したいと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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