F1撤退後、ホンダのモータースポーツはどうなる? EV版タイプRの開発も視野に
EV版「タイプR」の登場に期待高まる
F1ホンダ日本GP発表会見の前日、ホンダは4月に社長に就任した三部敏宏氏がホンダの将来事業について「2040年までにグローバルで全ての新車をEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)にする」という野心的な目標を発表しています。
そのなかで三部社長は「2020年10月に公表しているように、F1撤退後は、F1開発の主力メンバーはカーボンニュートラルに向けた技術開発に専念するなど、会社をあげて資源を集中的に投入する」と改めてカーボンニュートラル実現に向けた強い意志を表明しました。
さらに、F1撤退後のホンダのモータースポーツについては「GTレースは継続し、また新しい電動化でのレースカテゴリーで、それがホンダにとって有意義であるならば参戦を検討することもあり得る」という考えも示しました。
ホンダといえば、F1を筆頭にモータースポーツを「走る実験室」、また「量産車のエンジニアを鍛え上げる場」として活用してきましたが、EVについてもそうした“ホンダらしさ”は継承されるのでしょうか。
今回の発表で、ホンダが進めるEVプラットフォームは、北米を主体にGMと協業する中型車向け「アルティウム」と、ホンダが独自開発する中小型車向け「e:アーキテクチャー」の2本立てになることを明らかにしています。
e:アーキテクチャーとは、旧来のクルマでいうプラットフォーム(車体)に加えて、モーターとギアボックスが一体化した「eアクスル」、さらに電気と電子関連部品やソフトウエアの「e&eアーキテクチャー」で構成されるといいます。
そのうえで「EVはお客様目線では、差別化が難しい」という観点から「そうしたなかで、ホンダとしてどういった特長を出すのか、技術的にはいろいろな(社内)提案がある」と現状を説明しました。
具体的には「(従来のモデルでいえば)『タイプR』や『タイプS』のような、“走り仕様”というところも含めて開発を考えているところです」として、電動化でもホンダらしさを何らかの形で量産することを目指すことを明らかにしました。
ホンダは、四輪、二輪、そして発電機などパワープロダクツを含めて年間3000万基を製造する世界一のパワーユニットメーカーです。
そのホンダが2040年に向けて、四輪事業でのEV/FCVへの完全シフトを打ち出したのです。
モータースポーツについて、またタイプRに代表されるスポーティな量産車に対して、今後どのようにして「ホンダらしさ」をユーザーに届けていくのか、大きな期待を持ってホンダの未来を見守っていきたいと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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