夢のトランスミッションとまでいわれた「DCT」はなぜ普及しない? ATが主流の理由とは

EVシフトのなかトランスミッションは生き残れる?

 一方、ミドルサイズ以上のクルマに関していえば、そのほとんどがステップATを採用する。

 これは、それらのカテゴリーでは、DCTの持つダイレクト感よりもトルクコンバーターの生み出す滑らかな変速が求められたのが大きな理由だろう。それに、最近ではステップATの進化も著しく、ロックアップ率を高めることでDCTと遜色ない伝達効率の良さを実現している。

レクサスLC500にはアイシンAW製の10速ATが搭載される
レクサスLC500にはアイシンAW製の10速ATが搭載される

 また、近年の燃費規制の厳しさもDCTには逆風となる。

 燃費を稼ぐためにトランスミッションに求められるのは、多段化でありレシオ・カバレッジ(変速比幅)の拡大だ。そのため、縦置きのステップATでは9速や10速といった多段化が進んでいる。横置きATでも8速や9速も登場している。一方、DCTは内部に段数に応じたギアを持っているために多段化がしにくい。とくに、FFコンパクトカーではスペース的につらくなるのだ。

 では、DCTは将来的に見込みがないかといえば、それは、また別の話だ。ポルシェ「911カレラ」やフェラーリの各モデル、日産「GT-R」のようなスポーツカーには、DCTのダイレクト感が求められる。将来的に高性能スポーツカーの多くはDCTを採用し続けることだろう。

 また、モーターを組み合わせたハイブリッド・トランスミッション化することで、苦手なストップ&ゴーをモーターに任せるという技もある。

 トラブルが多発したけれど、ホンダの先代フィットのハイブリッド用DCTは、そうしたアイデアであった。近く日本にも上陸する新型ゴルフ8のトランスミッションも、48Vというマイルドハイブリッドと組み合わせたDCTだ。電動化時代到来でDCTが再び脚光を浴びる可能性もある。

* * *

 この先、省燃費を求める圧力はさらに高まることが予想される。

 そうとなれば、トランスミッションの進化もまだまだ終わらない。さらに電動化が進み、EV時代が到来しても、高効率を求めるためには変速機構が必要になるはずだ。現に、大手サプライヤーが開発を進めている電動車の注目技術「eアクセル」には、ギアを内蔵したプロトタイプが登場している。つまり今後トランスミッションが生き残っていく可能性は十分にあるのだ。

 そして、数あるトランスミッションのどれがベストになるのかは、その進化次第。トランスミッションの勢力争いは、永遠に終わることはないのではないだろう。

進化したトランスミッションを画像で見る(20枚)

参加無料!Amazonギフト券贈呈 自動車DXサミット BYD登壇 最新事例を紹介(外部リンク)

画像ギャラリー

Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

1 2

実績500万人超!お得に車売却(外部リンク)

新車不足で人気沸騰!欲しい車を中古車で探す

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る

【2025年最新】自動車保険満足度ランキング

最新記事

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー