夢のトランスミッションとまでいわれた「DCT」はなぜ普及しない? ATが主流の理由とは
EVシフトのなかトランスミッションは生き残れる?
一方、ミドルサイズ以上のクルマに関していえば、そのほとんどがステップATを採用する。
これは、それらのカテゴリーでは、DCTの持つダイレクト感よりもトルクコンバーターの生み出す滑らかな変速が求められたのが大きな理由だろう。それに、最近ではステップATの進化も著しく、ロックアップ率を高めることでDCTと遜色ない伝達効率の良さを実現している。
また、近年の燃費規制の厳しさもDCTには逆風となる。
燃費を稼ぐためにトランスミッションに求められるのは、多段化でありレシオ・カバレッジ(変速比幅)の拡大だ。そのため、縦置きのステップATでは9速や10速といった多段化が進んでいる。横置きATでも8速や9速も登場している。一方、DCTは内部に段数に応じたギアを持っているために多段化がしにくい。とくに、FFコンパクトカーではスペース的につらくなるのだ。
では、DCTは将来的に見込みがないかといえば、それは、また別の話だ。ポルシェ「911カレラ」やフェラーリの各モデル、日産「GT-R」のようなスポーツカーには、DCTのダイレクト感が求められる。将来的に高性能スポーツカーの多くはDCTを採用し続けることだろう。
また、モーターを組み合わせたハイブリッド・トランスミッション化することで、苦手なストップ&ゴーをモーターに任せるという技もある。
トラブルが多発したけれど、ホンダの先代フィットのハイブリッド用DCTは、そうしたアイデアであった。近く日本にも上陸する新型ゴルフ8のトランスミッションも、48Vというマイルドハイブリッドと組み合わせたDCTだ。電動化時代到来でDCTが再び脚光を浴びる可能性もある。
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この先、省燃費を求める圧力はさらに高まることが予想される。
そうとなれば、トランスミッションの進化もまだまだ終わらない。さらに電動化が進み、EV時代が到来しても、高効率を求めるためには変速機構が必要になるはずだ。現に、大手サプライヤーが開発を進めている電動車の注目技術「eアクセル」には、ギアを内蔵したプロトタイプが登場している。つまり今後トランスミッションが生き残っていく可能性は十分にあるのだ。
そして、数あるトランスミッションのどれがベストになるのかは、その進化次第。トランスミッションの勢力争いは、永遠に終わることはないのではないだろう。
ISUZUのスムーサーFのような多板式やバイク用のクラッチではトルク抜けは免れないだろうけど、ぶっ壊れる可能性は多少は減るのかな?
確かに先代フィットHVは発進時にクラッチがしゃくる感覚があるのだが?何せ初代のISUZUのNAVI5のようなドライビングロボット感覚でよいのではないかな?
これは私個人の感覚としては直結のまま無段階に加速するミッションならNISSANのエクストロイドが真打ちだと思うのだが?
メーカー様々で味付けは違えどUDトラックスのエスコットなんて理想に近い考え方とセッティングだと思うけどな。
トルク抜けを妙に封印しようとせずとも良いとは思うけど、やはり商品力に欠けるのかね?
昔ヤナセとISUZUで共販していたFRのJRピアッツァにNAVI5が用いられなかったのはFRだったからか?プライド?かは分からないけど良い技術が半煮えで消えるのは悲しな。
記事を読んで少し理解できないことがあったので質問します。
トルクコンバーターには内部伝達のロスがあるとのことですが、エンジン・トルクを増大させるのはどういう原理ですか。またDCTの多段化は確かにスペース面では不利なのは理解できますがそれは対CVTでは理解できますが、対トルコンATでも不利なのはなぜですか。機械系でないためミッションには詳しくないので分かりやすく教えてください。
流体を介して動力を伝えるためにエンジン側の羽(ポンプインペラー)と変速機側の羽(タービンランナ)には常に回転差があります。イメージとしては定速走行でポンプが100回転のところタービンは85とか90回転という感じです。回転差は発進時や加速時に大きくなります。回転差が大きい時にはポンプの生み出したエネルギーがタービンを回そうとしますが回した後もエネルギーが残っていて、エネルギーの向きはポンプの回転と逆方向になります。このエネルギーをポンプの回転方向に、何らかの方法で向きを変えてあげると共にポンプが生み出す新たなエネルギーに加算してあげれば10の力を例えば11にしてタービンに当ててあげることにより、より力のあるエネルギーでタービンを回転させることになる、つまり動力を増幅するということになります。これがトルクコンバーターの増幅作用とか、トルク変換作用と言われる考え方です。
実際のトルクコンバーターでは、ポンプとタービンの間にステータと言われる、一方向にしか回転しない、第三の羽があります。ポンプとタービンの回転差が大きい時には、ステータの回転は停止させられ、タービンから戻ってきた余りの、逆方向のエネルギーを受け止めてエネルギーの向きをポンプの回転方向に変える役割をします。ポンプとタービンの回転差が少なくなり、トルクコンバーター内の流体(ATF)の流れが安定してくると、ステータも、ポンプやタービンと同方向に回転を始めます。再度回転差が大きくなるとステータの回転が止められ、トルク変換作用起こります。
余談を二つほど
①トルコンATで定速からアクセルペダルをふみこみ、実加速が少し遅れて起こるのは、回転差が起こりステータの動きが抑制され、トルク変換作用が起きて、その効果が現れるまでの時間差となるのですが、加速が良くないと、さらにアクセルを踏み込むとトルク変換作用が二重に発生するので、結果として今度はドライバーが求めている加速よりも強い加速力が起きます。遅れて加速力がついてくることを理解しているとアクセルの踏み込みを抑制することにもなるので燃費の向上にもつながります。
② むかーし、ホンダマチックというトルコン式のATがありました。Dレンジの代わりに⭐スターレンジというポジションで前進するのですが、変速機によるギアチェンジがありませんでした。⭐にすると変速比1.0の直結ギアが選択され、トルクコンバーターのトルク変換比率を高く設定したことで発進から加速 定速走行までをカバーするものでしたが、発進が緩慢、トルク変換比率を通常のものよりも1.5倍程度大きく設定したことにより、動力伝達効率もさほど大きくなかったことから、自然淘汰してしまったのですが、変速制御に必要な複雑な油圧機構や複数の歯車を必要としなかったため低コストで小排気量車のオートマチックトランスミッションの普及率に貢献した、と言われています。