マツダ次期「ロードスター」はどうなる? HVかEVか!? 開発陣が語る「NE型」への期待と展望

歴代開発者が語る「ND」への思いとは

 今回の試乗の順番は、ND→NA→NC→NBとなったのですが、結果的にこの順番だと、ロードスター全体の開発の流れが理解できたように思いました。

 週末を挟んでNDに乗ると「なんだか、気持ちがリセットされる」。そんな風に感じました。日常生活のなかで、人が本来持っている素直な気持ちや感情を自然と取り戻すことができる空間、そんな感覚です。

マツダ「ロードスター(ND型)」
マツダ「ロードスター(ND型)」

 また、その後の3世代の試乗で再確認することになるのですが、NDは歴代モデルの中で車内空間がもっともコンパクトで、ヒップポジションが極めて低いことを実感します。

 正直なところ、筆者はシートポジョンが落ち着くまで2日間ほどかかりました。

 そのうえで、すべての操作に対して、心とカラダとクルマが“ほど良く”しかも“的確に”つながっている感覚から、長時間のドライブでも心身ともに疲れることなく「もっとNDと一緒にいたい」という気持ちが優先しました。

 この感覚は2015年1月30日、スペイン・バルセロナで開催されたNDの国際試乗会に参加した際とまったく同じ。むろん、その後にエンジンやサスペンションなど、年次改良が進んでいますが、NDの素性は当然変わっていません。

 そのとき筆者は、同乗した担当エンジニア氏に「まるで丸い球体をコロコロっと動くように、自然に動く感じだ」とND初体験を言葉にしたことを思い出しました。

 では、歴代ロードスターの主査の皆さんは、NDの存在ついてどう思っているのでしょうか。

 山本氏は「ND導入時、メディアやお客さまからNAからNDまでそれぞれをどう思うかとよく聞かれました。その際、NAは『Best Fun to Drive car』、NBは『Best Handling car』、NCは『Best Performance car』、そしてNDは『Best Roadster』と答えました。私にとってはどのRoadsterも大好きな相棒ですよ」と表現しています(英語の表記は山本氏のコメント)。

 さらに、「衝突・安全基準と排ガス・燃費規制が年々厳しくなるなか、レギュレーション対応と顧客ニーズへの対応を、そのときの最高の技術を導入し課題を克服しながら、LWS(ライトウエイトスポーツ)としてのコンセプトを進化させていきました」とこれまでの流れを振り返りました。

 一方、マツダに入社して間もなくNA発売当初のNAオーナーとなり、その後に4世代それぞれに深く関わってきた中山氏は、NDについてかなり詳細なコメントを頂きました。

「ひと言でいうと、私の人生そのものです。NDの開発開始時点ですでに20年以上をNAロードスターと共に生きてきた私は、しかもずっと前からやりたいと願ってきたロードスターのチーフデザイナーを拝命したからには、自分のすべてをそこに捧げなければ後悔が残ると思いました。

 なので、少なくともデザインに関しては、自身がそれまで培ったデザインスキル、知識、知恵、センス、人間関係、すべてを注ぎ込んで創りました。つまり『集大成』でした。

 ちょうど初代CX-5のチーフデザイナーを担当した後で、年齢的にもキャリア的にも、正に脂が乗り切っている状態でした。自分が信じるLight Weight Sports、自分が信じるロードスターのあるべき姿を描き切ろうと思いました」

「よく『原点回帰』という言葉を使いますが、私はNAに回帰しようと思ったことは一度もありません。NAが目指したものを目指そうと思いましたし、NAが成れなかったものに成ろうと思いました。そうでなければNAに肩を並べることはできないと思ったからです。NAはそれほどの巨人だと思います。

 (中略)この先、NDがどう評価されるかは、これから20年も30年も先でないと分からないと思います。それは歴史が決めることなので。(後略)」

 そして、齋藤氏は「『集大成』。会社人生でおそらく最後の仕事が、まさかNDの主査になるとは、夢にも思いませんでした。山本、中山からバトンを引き継いだいま、多くのファンから『よくやった!最高!』といって頂けるように、大切にそして大胆にNDを育て続け、すべて出し切った集大成とすることが目標です」と、現在進行形でのNDとの関わりを表現してくれました。

 そして、次期ロードスターともいえる「NE」への期待について齋藤氏は、「社会の変化にしなやかに合わせる技術開発をおこない続け、軽量なボディをイネーブラー(性能を引き出すための中核)として『走る歓び』を多くの人に提供することが使命だと思っていますので、そこは変えてはならないと思いますし、変えてしまう、つまり時代に降参するのであれば、マツダのレーゾンデートル(存在意義)がなくなると思っています」と基本的な考え方を示しました。

 そのうえで「電動か否かは別としても、少なくともCO2の排出を限りなくゼロに抑えなければなりませんし、そうでなければ多くの人に楽しんでいただくことはできません」と指摘します。

 さらに、ロードスターは“健康的なクルマ”であり、そうしたポリシーを貫いていくと「おのずと、やるべきことは定まってくると思っています」と未来に向けた心意気を語ってくれました。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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