一度見たら忘れられない!? 個性的なスタイルがクセになるクルマ5選

世界でもっともアグリー(醜い)なクルマとは?

●フィアット「ムルティプラ」

 PSAグループとの合併で新たに「ステランティス」グループを結成したフィアットは、イタリア最大の自動車メーカーで、フェラーリやアルファロメオ、ランチアやマセラティなども傘下に持つ大企業です。

 フィアットとしてはいわゆる大衆向けのクルマがラインナップの中心となりますが、何年かに一度、突如としてキテレツなモデルを登場させることがあります。

フィアット「ムルティプラ」
フィアット「ムルティプラ」

 そのなかでも、「世界でもっともアグリー(醜い)なクルマ」として認知されているのが2003年に登場した「ムルティプラ」です。

 見た目の奇抜さで有名ですが、じつは合理的なパッケージを採用した結果のスタイリングだったことはあまり知られていないようです。

 まず最大の特徴ともなっているスタイリングですが、全長3995mm×全幅1875mm×全高1680mmという3サイズからして他に類を見ません。

 トール系コンパクトハッチ程度の全長に全幅だけ1875mmになっているのは、前後席ともに3名ずつ独立したシートで乗車可能の6人乗りのMPV(マルチパーパスビークル=多目的車)を目指した結果。

 車重も1380kgとそれなりにあるのに、搭載されるパワーユニットは103馬力の1.6リッターNAエンジンで、しかも5速MTのみの設定という不思議な組み合わせでした。

 さらにロービームとハイビームを分離し、ハイビームは1段高くなったフロントウインドウ下に配置し、間違いなく1度見たら忘れられないスタイリングに仕上がっています。

 見た目こそ奇抜ですが、意外にも乗ると楽しいのはムルティプラの隠れた魅力のひとつです。

 前席でも3人掛けでき、高い全高のおかげでウインドウ自体も大きく視界は良好なので、仲間とワイワイ出かけたりするときは予想以上に盛り上がるクルマといえるでしょう。

 個人で乗るにはさすがに勇気がいりますが、これだけ時間が経過しても最新モデル以上の注目を集めるクルマはほかにありません。

 なお、2004年のビッグマイナーチェンジで、個性的なフロントフェイスはオーソドックスなデザインに改められてしまい、後に日本では醜いと揶揄された前期型の方が人気となる皮肉な結果となりました。

●スズキ「X-90」

 軽自動車をメインにコンパクトカー中心のラインナップを誇るスズキは、アイデアあふれる個性的なモデルを誕生させるメーカーでもあります。そのなかでも、もっとも不思議な1台として語り継がれている珍車が「X-90」です。

 もともとは1993年の東京モーターショーでコンセプトカーとして登場したのですが、好評だったため1996年には市販化に踏み切ったものの、さっぱり売れなかったモデルです。

 初代「エスクード」をベースに、2シーター&2ドアのノッチバッククーペスタイルを採用したクロスオーバーSUVで、全長3710mm×全幅1695mm×全高1550mmのボディサイズに100馬力の1.6リッター直列4気筒エンジンを搭載。

 駆動方式は通常はFRで、任意で4WDに切り替えができるパートタイム式4WDを搭載し、さらにボディはモノコックではなく、クロカン車などで採用される丈夫なラダーフレームを採用するなどエスクード譲りのオフロード性能を持っていました。

 これだけ聞けば無骨なデザインに仕上げればタフなオフローダーが完成しそうですが、なぜか丸みを帯びたラインで構成されるズングリムックリしたスタイルで、ヘッドライトも楕円形のデザインを採用。

 さらに脱着可能なグラスルーフを持つTバールーフまで採用するなど、かなり不思議なモデルになってしまい、販売不振によりわずか2年で終了してしまいました。

※ ※ ※

 かつては奇抜なデザインのクルマが当たり前のように販売されていましたが、似たようなコンセプトのクルマばかりになってしまった現在からすれば、当時はそれだけの個性を認める余裕がメーカーにあったということなのかもしれません。

 むしろ完成度の高いプラットフォームを各社が開発している現在だからこそ、「コンセプト命」の超個性的なモデルが登場しやすい環境になりつつあるともいえ、実用性よりロマンを感じさせてくれるクルマもたまには登場してほしいものです。

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Writer: くるまのニュースライター 金田ケイスケ

2000年代から新車専門誌・輸入車専門誌編集部を経て独立。専門誌のみならずファッション誌や一般誌、WEB媒体にも寄稿。
中古車専門誌時代の人脈から、車両ごとの人気動向やメンテナンス情報まで幅広く網羅。また現在ではクルマに限らずバイクやエンタメまで幅広いジャンルで活躍中。

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