3億1000万円で落札されたランボルギーニ「ミウラSV」は「イオタ」仕様だった!?

「イオタ」仕様を再び「SV」に戻した「ミウラ」

 全世界が新型コロナウイルス禍に苦しめられた昨2020年は、当初マーケットも相当な冷え込みが予測されていたのだが、ことクラシックなランボルギーニについては大きな影響はなかったようで、欧米各国にてオンラインや感染対策おりこみの対面型でおこなわれたオークションにおいても、かなりの高額で取引されていた。

●1971 ランボルギーニ「ミウラP400SV」

「ランボルギーニ・ポロストリコ」認証を含むドキュメントも揃っていることが、落札価格に反映したと考えられる(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
「ランボルギーニ・ポロストリコ」認証を含むドキュメントも揃っていることが、落札価格に反映したと考えられる(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 そんなクラシック・ランボルギーニのなかでもミウラ、とくに最終進化形である「P400SV」が「堅調」という以上の大商いを見せてきたことは、これまでVAGUEのオークションレポートでも度々取り上げてきた。

 今回RMサザビーズ「PARIS」オークションに出品されたミウラP400SVは、シャシナンバー「4920」。ロッソ・コルサのボディにダークブルーのインテリアの組み合わせで製作され、1972年5月にドイツで最初のオーナーにデリバリーされたという。その後、1972年から1977年に2人目のオーナーが所有していた時期に、「イオタ」スタイルへのコンバージョンが施されたと見られている。

 今や伝説の「イオタ」あるいは「SVJ」は、当時のFIAアペンディクスJ規約のもとでカーレースへの参加資格を得ることを目指していた、ランボルギーニのチーフテストドライバーであったボブ・ウォレスが製作したテストベッドである。

 彼の目論みは夢に終わったが、その存在を聞きつけた一握りの優良顧客たちがランボルギーニ本社にオファーしたことで、一部のミウラがそのレプリカとして製作された。あるいは、デリバリー後にサンタアガタ・ボロネーゼに戻され、顧客の要望に応えてイオタ仕様にモディファイされた個体も存在する。

 この#4920でもイオタに似せるべく、ヘッドライトはプレクシグラスのカバーがついた固定式に換装、フロントカウル上部にはラジエーターからの熱気を抜くエアアウトレットが大きく開き、レーシング仕様のフューエルフィラーも設けられた。

 また、フロントにはアルミニウムのエアダムスカートが装着され、リアエンドの排気システムはテールパイプと直結。新しい排気系に対応するためにトランクも改造された。

 1978年から1997年までは3人目のオーナーが所有。その後4人目のオーナーのもとに譲渡された段階では、走行距離は3万kmを少し超えていたという。その4代目オーナーのもとで、1997年から2001年まで徹底的なレストアを受けることになる。

 ボディワークやシャシ、インテリアは新車時の状態に戻されるとともに、エンジンとギアボックスはシュトゥットガルトの「インスティンスキー(Instinsky)」によってフルオーバーホールされ、無鉛ガソリンでも走行できるように、バルブシートも打ち直された。

 ただ、この際にもイオタ・スタイルのボディワークとエキゾーストは維持され、外観は新たに美しいダークグリーン+ゴールドホイールのコンビ、インテリアはクリーム/黒のコンビレザーで仕上げられた。そしてこのスタイルで、2012年にはドイツ・エッセンで開催される世界最大規模のクラシックカー・トレードショー「テクノクラシカ・エッセン(Techno Classica Essen)」にも出品されている。

 今回のオークション出品車である現オーナーは、ドイツの有名食品メーカー創業者一族のコレクションから、2015年にこのミウラSVを入手。そののち慎重に検討した結果、1971年6月にサンタアガタ・ボロネーゼ工場からラインオフした時の仕様に戻すことを決意したという。

 ボディとペイントワークの修復は、エミリア・ロマーニャ州フェラーラのカロッツェリア「バッタリア・ボロニェージ」が担当。元色のロッソ・コルサに塗り替える前に、ペイント剥離するとともに個体式ヘッドライトなどの「イオタ要素」を取り除き、約40年ぶりにミウラSV特有のスタイルを取り戻した。

 一方インテリアは、内装作業の専門家「アウト・インテルニ(Auto Interni)」によってダークブルーで再トリミング。P400SV純正排気システムの換装を含むメカニカルパートは、元ランボルギーニの職長オレツィオ・サルビオーリと彼の息子ルカが営むランボルギーニ・スペシャリスト「トップモーターズ」によって徹底的にオーバーホールされた。

 これら一連の作業は2016年に完了したが、以来この個体の走行距離は500kmにも満たない上に、2019年には現状における最新のフルサービスもおこなわれているという。オークション出品にあたっては、「ランボルギーニ・ポロストリコ」認証を含むドキュメントや写真、あるいは純正革ケース内に収められたツールキットも添付されるという。

●今年の市況を占うような高値で落札

 RMサザビーズ社の公式WEBカタログでは、「ミウラSVはコレクターにとって必須アイテムであり、なかでもこの絶妙な1台は愛好家向けのツアー、リビエラ海岸沿いのドライブ、またはコンクールイベントなどでも活躍する準備ができています」という謳い文句を添えて、210万−250万ユーロという、自信満々のエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

 そして2月13日におこなわれた競売では、手数料込みで242万3750ユーロ、日本円換算で約3億1000万円という、これまでのミウラP400SVでも最高ランクに属する価格で落札されるに至ったのだ。この結果を見るにつけ、2021年のクラシックカー市況も、相変わらずの高値安定が続くかに思われたのである。

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