なぜスバル車は雪国で選ばれる?四駆性能が圧倒的に支持されるワケ

雪道でも安心して走るために必要なこととは

 そんなピンチのなか「このままでは技術のスバルとはいえない」、「クルマで勝負する」、「本気のクルマを造りたい」との想いが全社的に上がり、起死回生の想いで開発されたのが1989年に登場した「レガシィ」です。

 そのコンセプトは単純明快で「日本で一番いいセダンとワゴンを作る」でした。

 その実現のために、プラットフォームはスバル 1000以来となる全面新設計でサスペンションは4輪ストラットを採用。

 エンジンはレオーネと同じ水平対向ながらも完全新設計の「EJ」を新開発。トップモデル「RS」には220馬力のターボエンジンも設定されました。

スバル初代「レガシィツーリングワゴン」
スバル初代「レガシィツーリングワゴン」

 また、開発手法も従来の縦割り&技術主導からプロジェクトチーム制へと変更。評価を一人の実験担当者に託しました。

このように社運をかけて開発したレガシィは高く評価されました。当時を知る同業者に話を聞くと、「驚くほど軽快な動きとアンダーステアが少ないハンドリングに、四駆とは思えないコーナリングマシンだった」と語っています。

 また、当時ドイツ・ニュルブルクリンクでのテスト終了後に、各社のクルマを交換して乗り合いすることがあったそうですが、ポルシェのテストドライバーにレガシィに乗せてみると「こんなに良くできているとは思わなかった!」と褒められたそうです。

 レガシィの成功によって、スバルは「積雪地域で乗るクルマ」から「走りにこだわるブランド」へと変貌を遂げ、いつからか四輪駆動のパイオニアと呼ばれるようになりました。

 9割以上という現在の高いAWD販売比率を当時の開発陣が見たら驚く一方で、先見の明があったことを誇りに思っていることでしょう。

 降雪などで走行環境が悪くなっていくにつれてドライバーの緊張感は高まっていきますが、なぜかスバル車に乗っていると「絶対に大丈夫」と確信できる“何か”を感じます。

 その要因は伝家の宝刀である「四輪駆動」とレガシィ以降磨き抜いてきた「基本性能」の高さ、さらにスバル 360時代から独自に研究を続けてきた「衝突安全性能」へのこだわり、そしてアイサイトをはじめとする「運転支援システム」の挑戦などが注目されがちですが、実はそれ以外にもあります。

 そのひとつが「視界性能」です。スバル車は前後左右どの窓からも1m程度の高さの物が視認できるよう、設計視界を妨げない位置にピラーを配置するだけでなく、内側から見たときに実際よりも細く見えるように設計されています。

 また、装備に関しても、ワイパー払拭面積の広さやワイパーデアイサー(寒冷地でのワイパーの張り付き/ワイパー下に雪が溜まるのを防ぐ)などは、クリーンな視界確保に一役買っています。

 最近では視界をサポートする運転支援システムも存在し、当然最新のスバル車にも採用済みですが、やはり“直接視界”に勝るものはありません。

 非常に地味な部分ですが、「周りの状況がわかりやすい」、「クルマの四隅が把握しやすい」ということは非常に重要な性能のひとつで、スバルはドライバーが安心・集中して運転できる環境を「0次安全」と呼んでいます。

 ただし、そのためにエクステリアデザインが少々犠牲になっている部分がありましたが、最近はそれも両立できています。

 また、細かい部分を見ていくと「空調性能」も見逃せません。足元を均等に素早く暖める吹き出し口のレイアウトやシートヒーター、ステアリングヒーターは面積拡大と即時に温かくする工夫などが施され、通常使用では当たり前すぎて気がつきませんが、これも過酷な条件になればなるほど他社との差は明確です。

 スバルは古くから「グランドツーリング性能」にこだわっていますが、それを要約すると「より遠くに」、「より安全に」、「より快適に」、「より速く」ということです。

 つまり、総合性能が重要となりますが、これは飛び道具ではなく細かい部分まで徹底したこだわりの積み重ねが生み出していると筆者(山本シンヤ)は考えています。

「スバル車に乗ると安心する」、それは気のせいではなく、シッカリと技術の裏付けがあるのです。

スバル・レガシィツーリングワゴン のカタログ情報を見る

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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2件のコメント

  1. ×先見の目→○先見の明
    ×天下の宝刀→○伝家の宝刀

    • このたびはご指摘をいただき、誠にありがとうございます。
      修正いたしました。

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