「エンツォ」「テスタロッサ」「512BBi」…気になるフェラーリのお値段ハウマッチ?

穴場物件が高騰、クラシックは堅調なスタート

●2000 フェラーリ「550マラネロ」/2001 フェラーリ「550バルケッタ・ピニンファリーナ」

約3465万円で落札されたフェラーリ「550バルケッタ・ピニンファリーナ」(C)2020 RM Sothebys
約3465万円で落札されたフェラーリ「550バルケッタ・ピニンファリーナ」(C)2020 RM Sothebys

 RMサザビーズ主催の「ARIZONA」オークションには、2台の興味深い「550」も出品された。1台は当時の定番ともいえるタンレザーのインテリアカラーにロッソ・コルサのエクステリア・カラーの「550マラネロ」だ。トランスミッションは6速MTであり、悪名高きF1マチックでないので不安材料がひとつ回避された1台である。

 この定番中の定番である550マラネロに付けられたエスティメートは、15万−20万ドル(邦貨換算約1550万円−2070万円)であったが、それを大きく上回る25万7600ドル(邦貨換算約2700万円)での落札であった。

 そしてもう1台の550は、2000年にデビューしたオープン仕様となる「550バルケッタ・ピニンファリーナ」である。448台限定で生産された550バルケッタ・ピニンファリーナというだけでも希少価値があるが、さらにロッド・スチュワートがかつて所有していた個体そのものであったのだ

 この550バルケッタ・ピニンファリーナには、30万−35万ドル(同3100万円−3600万円)のエスティメート(予想落札価格)が掲げられていたが、落札価格は32万9500ドル(邦貨換算約3465万円)であった。

 いわゆるスタンダードな550マラネロが予想以上の価格であったのに対して、限定モデルでありロッド・スチュワートの元愛車というヒストリーのある550バルケッタ・ピニンファリーナが辛うじてエスティメートを上回るプライスだったのがとても印象的であった。

 550マラネロは、比較的安価なプライスで手に入れやすい1台であったが、MT仕様に限っては、底値から徐々に上向きの領域に入ったのかもしれない。512BBiよりも高額であったのにも驚かされたが、今後のオークション・マーケットでの動向に注目される。

●1954 フェラーリ「375アメリカ クーペ by ヴィニャーレ」/1956 フェラーリ「250GT アロイ クーペ by ボアーノ」

約2億6700万円で落札されたフェラーリ「375アメリカ クーペ by ヴィニャーレ」(C)2020 RM Sothebys
約2億6700万円で落札されたフェラーリ「375アメリカ クーペ by ヴィニャーレ」(C)2020 RM Sothebys

 1950年代から1960年代のクラシック・フェラーリは、オークション・マーケットでも常に注目を集めるクルマたちだ。オークションでもっとも高値で落札されたとされる「250GTO」に至っては、50億円近い落札価格であり、これらクラシック・フェラーリの落札価格の動向が、クラシックカー全般の価格の指標ともなっているのである。

 今回の「ARIZONA」には、こうした1950年代のレアなクラシック・フェラーリが2台出品されている。

 1台は、フェラーリ「375アメリカ」にヴィニャーレが架装した2台のうちの1台、シャシNo「0327 AL」である。もう1台の「0337 AL」とは、ファストバックのプロポーションこそ共通するものの、ノーズとヘッドライトの処理などのディテールが大きく異なるため、事実上ワンオフモデルといっていい。

 エスティメートは240万ドル−340万ドル(邦貨換算約2億5000万−3億5500万円)であったが、255万7000ドル、日本円に換算すれば約2億6700万円で落札される結果となった。実はこの個体は、2011年の「MONTLEY」でも出品されており、その時の落札価格は198万ドル(邦貨換算約2億800万円)であった。コロナ禍という状況ではあったが、ワンオフ物のクラシック・フェラーリが、確実に値が上がっている一例である。

 もう1台のクラシック・フェラーリは、カロッツェリア「ボアーノ」が、フェラーリ「250GT」用シャシに軽合金製ボディを架装した豪奢なGTクーペ「250GT アロイ クーペ by ボアーノ」である。

 この250GTボアーノは、フェラーリ・クラシケの認証も取得済みで、内装なども新車のような状態にレストア済みの1台である。120万−140万ドルのエスティメートに対して、135万2500ドル、日本円に換算すれば約1億4200万円で無事に落札された。

* * *

 世界規模のコロナ禍の状況のなか、オークションも対面式からオンライン方式とシフトしており、オークション主催者だけでなく入札者側もだいぶ新たなオークションスタイルに慣れてきたようだ。フェラーリに関しては大きく落札価格を下回ることなく、堅調であることが示された「ARIZONA」オークションであった。

 社会情勢が大きく変化する際には、貴重なクルマがオークション・マーケットに姿を現すことも珍しくない。2021年のオークションに、どんなクルマが出品されるか非常に期待の持てる結果だったといえるだろう。

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