オーバルレースは何が難しい? インディ500で2度優勝した佐藤琢磨のスゴさとは?

昨年2020年はコロナ禍により世界中のモータースポーツが開催の危機に陥った。世界3大レースのひとつ、伝統のインディ500も8月&無観客開催となったが、そこで佐藤琢磨選手が3年ぶりとなる勝利をものにしたのは明るいニュースだった。オーバルレースの難しさとはなんなのか、そして佐藤琢磨選手の2回目の優勝はどれくらいの価値があるのか。インディ500に4度参戦経験のあるレーシングドライバー兼自動車評論家、松田秀士氏に聞いた。

100年を超える伝統レースで2回以上勝利したのはわずか20人

 昨年2020年のモータスポーツ界の話題といえば、佐藤琢磨選手のINDY500優勝だろう。琢磨選手は2017年にもINDY500に優勝していて、今回が2度目。ちなみにINDY500に複数回優勝したドライバーはそれほど多くない20人だ。

 2020年のINDY500は、第104回大会。INDY500は年に一度のレースだから、すでに100年を超える伝統のレースだ。優勝するだけでその長い歴史に名を刻むわけだが、2回以上優勝したのは現在のところ20人だけというわけだ。琢磨選手の快挙がいかに偉大なことかがわかるというもの。

2020年8月に開催された第104回インディ500の様子。オーバルレースにはどんな難しさがあるのだろうか
2020年8月に開催された第104回インディ500の様子。オーバルレースにはどんな難しさがあるのだろうか

 では、いったいINDY500とはどんなレースなのか? なぜそんなにスゴいのか? を少し解説しよう。

 レースが開催されるのは毎年5月。年に1回の開催だ。この5月の最終月曜日はアメリカ合衆国のメモリアルデー(戦没者記念日)。その前日の日曜日に開催されるのがINDY500なのだ。

 このようなことからレース前のセレモニーも盛大で、まず前日の土曜日にはドライバー全員がグリッド順にオープンカーに乗り、インディアナポリスのダウンタウンをパレードする。じつはこのパレードは、米国でも3大パレードといわれるお祭り。レース直前には米軍によるフライバイ、合衆国国歌斉唱などのセレモニーが大々的におこなわれ盛り上がる。

 そして200周500マイル(約800km)のレースが始まるのだ。しかし、2020年はコロナウイルスの影響で8月に、しかも無観客でのレース開催となったのだ。

 筆者自身1994年から1996年・1999年の4度、INDY500を戦った経験を持つが、当時は40万人ともいわれるギャラリーが観客席を埋め尽くし、それまでの練習・予選時のスピードウェイの雰囲気と異なり、コース全体が一種異様な雰囲気に包まれる。

 コース幅が狭くなったように感じられ、まるで別のコースを走っているかのような、ある種の恐怖を感じた。

 INDY500を開催するIMS(インディアナポリス・モーター・スピードウェイ)は、1周2.5マイル(約4.0km)のオーバルコースだ。オーバルコースはすべて反時計回りの左回りに走る。

 IMSは米国にある他のオーバルコースに比べて高速型で、長方形のコースレイアウトだ。2本の長いストレート(約1.0km)を繋ぐ2本のショートストレート(約200m)で構成され、4つのコーナー(米国ではターンと呼ぶ)はほとんど直角に曲がっている。

 このため第1ターンは、飛び込むまでほとんどウォール(壁)しか見えない。筆者が走ったころは、マシンの直線速度はほぼ238マイル/h(約380km/h)に達し、そこにアクセル全開でターンに飛び込むのは至難だった。マシンのセットアップとドライバーのコンディションがベストマッチしていないと、とくに速度が乗っている第1と第3ターンを全開で走ることは難しかった。

2020年12月に東京・青山のホンダウエルカムプラザでおこなわれた佐藤琢磨選手の「凱旋報告取材会」の様子
2020年12月に東京・青山のホンダウエルカムプラザでおこなわれた佐藤琢磨選手の「凱旋報告取材会」の様子

 オーバルといえば強いカント(バンク)を想像するだろうが、IMSのカント角はそれほど強くなく、9度ほどだ。スピンか強アンダーステアを出せば、ほとんどの場合クラッシュする。筆者が走ったころは無垢のコンクリートウォールだったが、現在はセイファーウォールと呼ばれる衝撃吸収ウォールになっていて、より安全性が増している。とはいえとんでもない速度でコーナリングしバトルするのだから、相当デンジャラスであることには変わりない。

【画像】佐藤琢磨選手のインディ500での勇姿を画像でチェック!(25枚)

【2024年最新】自動車保険満足度ランキングを見る

画像ギャラリー

1 2

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

最新記事

コメント

本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー