ホンダの自動運転認可は国の思惑も!? 事故責任は誰が?「レジェンド」レベル3の実態とは

メーカー? 運転手? 自動運転中の事故の責任は?

 自動運行装置の作動中に交通事故が発生した場合、責任はメーカーが取るのか、それともドライバーなのでしょうか。

 こういった点を国土交通省に尋ねました。

ホンダ「レジェンド」(現行モデル)
ホンダ「レジェンド」(現行モデル)

「自動運行装置が作動しているときは、前方を注視する必要はありません。ドライバーに運転を再開してもらう時の引き継ぎ要求は、数回にわたりおこないます。

 作動中に事故が発生したときの責任は、状況によって異なり、警察が判断します。

 レベル2ではドライバーが監視して、レベル3はシステムがおこなう概念はありますが、事故が生じたときにドライバーが常に免責されるわけではありません。

 レベル3にはドライバーモニタリングカメラも装着され、よそ見などをシステムがチェックします。必要に応じて前方を注視することを促します」

 ホンダの開発者にも、同様の質問をしました。

「レジェンドのレベル3は、前方を注視する必要のないアイズフリーですが、ドライバーはいつでも運転に戻れる体制にしておく必要があります。

 その意味では(自動運行装置の)作動中でも、周囲の交通環境を認識する必要があるでしょう。事故が発生したときの責任はドライバーに生じます。

 ただし自動車保険の適用は、ドライバーの負担を減らす(無過失に近づける)ことも検討されています」

 レジェンドのレベル3は、自動運転といっても、限りなく運転支援に近いものです。ドライバーが作動中にスマートフォンを注視するのは危険が伴いそうです。また、事故時の責任も問われる可能性があります。

 そして作動速度の上限が時速50kmですから、渋滞が多少なりとも解消されると、自動運行装置が終了します。

 加速を開始したら、スマートフォンを安心して見ることはできません。そうなると自動運行装置を継続的に使えるのは、発進/徐行/停止を繰り返す激しい渋滞に限られそうです。

※ ※ ※

 それにしても、なぜいまの段階でホンダがレベル3を発表したのでしょうか。

 国土交通省では「自動運転は内閣府が力を入れる方針」といいます。

「官民ITS構想ロードマップ2020」によると、2020年度中に高速道路での自動運転(レベル3)市場化と明記され、レジェンドもこのロードマップに沿った形です。

 ホンダの開発者は「国はレベル3を望んでおり、どこかのメーカーが実現させる必要があった」と述べています。

 各社ともレベル2を達成しながら、自動運転の領域に入るレベル3には、互いに牽制し合って踏み込めなかったようです。

「トヨタさん、お先にどうぞ」「いやいや日産さんこそ…」といった感じでしょうか。

 レベル3の早期実現を求める国の意向も汲み取って、ホンダがレベル3に挑んだともいえそうです。

 このようにレベル3には曖昧さが伴い、使うときには注意を要しますが、この段階を踏まないと自動運転に向けて歩みを進めることはできません。

 自動車技術では例外的に未完成な機能であることを認識して、育てる意識を持って使っていくことが大切でしょう。

 ユーザーが自動車産業の進化に積極的に貢献できる貴重な技術といえるかも知れません。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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