まるでバットマンカー!「B.A.T.」シリーズのベースとなったアルファ ロメオ「1900」とは?

まるでバットマンカーのような「B.A.T.」シリーズとは?

 こうして、量産車メーカーとしてのアルファ ロメオの道筋を創ることに成功した「1900」だが、イタリア自動車界の象徴たる「カロッツェリア」たちとともに築いてきた輝かしい伝統に背を向けたわけではなかった。

●フォーリ・セリエの伝統

フォーリセリエのピニンファリーナ製カブリオレ(右)とカロッツェリア・ボアーノ製クーペ「プリマヴェラ」(左)
フォーリセリエのピニンファリーナ製カブリオレ(右)とカロッツェリア・ボアーノ製クーペ「プリマヴェラ」(左)

 1900では、第二次大戦前以来の伝統に則って、標準ボディたるベルリーナのほかに、スタビリメンティ・ファリーナ製のカブリオレや、ボアーノ製のハードトップクーペ「プリマヴェーラ」に代表される、名門カロッツェリアたちの競作による贅沢な特装モデルを正規ディーラーで購入することもできた。

 また、老舗「カスターニャ」や「ボネスキ」など、正規のカタログモデル指定を受けられなかったほかのカロッツェリアたちも、1900ベルリーナ用のフロアパンを利用した「フォーリ・セリエ(Fuori Serie:シリーズ外モデル)」の数々を製作した。

 そして1900ベルリーナのデビュー翌年にあたる1951年には、1900をベースにスポーティなフォーリ・セリエを製作するカロッツェリアのため、ホイールベースを130mm短縮した専用シャシ「1900スプリント」も追加されることになった。

 このスプリントのエンジンは、1900ベルリーナの高性能版「T.I.」に搭載される100psスペックがスタンダードとされていた。

 このスプリントには「トゥーリング・スーペルレッジェーラ」製のハンサムな2座クーペがカタログモデルとして設定されたが、ほかにも「ピニンファリーナ」製クーペや「ヴィニャーレ」製コンバーティブルなども、正式なカタログモデルに準ずるかたちで、メーカー公式カタログに掲載されることになった。

 一方、1900のスポーツ版たるスプリントのスープアップ版として、スーペル/T.I.スーペルと時を同じくしてデビューしたのが「1900スーペルスプリント」、つまり「SS(CSSと呼ばれることもあった)」である。

 エンジンは「T.I.スーペル」と同じ115ps仕様をセレクトし、ゴージャスなクーペやスパイダー・ボディが架装された状態でも、180km/hの最高速度を可能とした高性能車。デビュー以来ライバルと目されていたランチア「アウレリアB20GT」とともに、当時のヨーロッパで最高の2000cc級グラントゥリズモの座を賭けて覇権を争うことになった。

 その傍らでザガートの「1900SSZ」や、カロッツェリア・ギアの「スーペルソニカ」など、1900スプリント系をベースにした魅力溢れるフォーリ・セリエが、まるで百花繚乱のごとく競作されている。

 さらに「ベルトーネ」は鬼才フランコ・スカリオーネを擁して、1953−55年にかけた3年間のトリノ・ショーにて、1900スプリントのシャシを利用した一連のデザインスタディ「B.A.T. (Belrina Aerodinamica Technica:エアロダイナミックス実験車)」シリーズを製作。全世界に衝撃を与えた。

 1900および1900スプリントをベースに製作された、これらのフォーリ・セリエやコンセプトカーたちは、第二次大戦前に花開いたイタリアンカロッツェリアの芸術性と匠の技を戦後の世界(特にアメリカ)にアピールする、いわば「広告塔」の役割をも果たすことになったのである。

* * *

 そしてアルファ ロメオ1900シリーズで忘れてはならないのは、スポーツカーレースのためトゥーリング・スーペルレッジェーラとともに企画・試作した「C52ディスコ・ヴォランテ(1952年)」のベースとなったことである。

 フレームは専用の鋼管スペースフレームを新規開発したが、エンジンなどの機関部は1900CSS用にさらなるハイチューンを施したもの。ただし、2000ccクラスではスポーツカー耐久レースの総合優勝は見込めないと判断され、新たに開発された6気筒3000ccユニットに上方移行を余儀なくされた。

 しかし、このシャシとエンジンはベルトーネが1954年に試作したコンセプトカー「2000スポルティーヴァ」にも使用され、再び日の目を見ることになったのだ。

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