秀逸なデザインとホンダらしさあふれる走りが魅力! ホンダ「ビート」を振り返る
自然吸気ながら64馬力を達成した高回転エンジンを搭載
乗員の背中のすぐ後ろに横置きに配置されたエンジンは、660cc直列3気筒SOHCで、ベースとなったのは軽商用車の「アクティ」や「トゥデイ」と同じエンジンながら、3連スロットルバルブが装着され、カムシャフトやピストンも専用品となっており、最高出力は自然吸気で64馬力を達成。
自然吸気エンジンの軽自動車では、ビート以外に64馬力に到達したモデルは現在までありません。
アクセルに対してのレスポンスも、3連スロットルバルブの恩恵でシャープです。
最高出力を8100rpmで発生するため、タコメーターのレッドゾーンは8500rpmからとなっており、ほぼオートバイのイメージです。
トランスミッションは5速MTのみで、手首の動きだけでもコクコクとシフトチェンジでき、ワイヤー式のシフトながらフィーリングは良好でした。なお、ATも検討されたようですが、熱対策が難しかったことや、スペースの問題で断念したといいます。
足まわりには4輪にマクファーソンストラットを採用した独立懸架で、クイックなハンドリングを実現。フィーリングは終始弱アンダーステアの安定志向のセッティングを採用し、トルクが細かったことと、後述しますがリアタイヤが太く大きかったことから、かなり特殊なことをしない限りオーバーステアに転じることはありませんでした。
ブレーキは軽自動車初の4輪ディスクブレーキを採用。ブレーキのタッチは硬めで、踏力にたいしてブレーキの効きがリニアに立ち上がることから、非常にコントローラブルです。
タイヤはフロントに155/65R13、リアに165/60R14を装着する前後異径サイズを採用。
全体的なドライブフィールは、とにかく軽快感があり、エンジンパワーを使い切る楽しさが味わえ、ホンダはビートをスポーツカーとは呼びませんでしたが、紛れもなくスポーツカーといっていいでしょう。
一方で、ビートはすべてにおいて優れたクルマではなく、760kgと重い車重によって加速性能はライバルのターボ車には及ばず、ボディ剛性も高くなく、ギャップを超えるとフロントウインドウがブルンと震えるほどでした。
また、細かいところだと、ラジエーターをフロントに搭載したことで、冬はヒーターが効くまで時間がかかり、エンジンのメンテナンス性も悪いという欠点がありました。
そんなマイナス面もありますが、ドライビングの楽しさに比べれば些細なことでしょう、
新車価格は138万8000円(消費税含まず)と、現在の水準では普通ですが、当時はかなり高い印象でした。
デビュー後は1992年に特別仕様車の「バージョンF」と「バージョンC」、1993年には同じく「バージョンZ」をラインナップしましたが、年式によってわずかな改良はおこなわれましたのみで、マイナーチェンジを一度もおこなうことなく1996年をもって販売を終了しました。
なお、2011年には誕生20周年を記念して、ホンダアクセスがUSBポートでメモリーやiPhoneなどと接続可能な新たなオーディオと、スポーツサスペンションを限定販売し、2017年からホンダが一部部品の再生産をおこなっており、いまも数多く存在する愛好家をサポートしています。
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かつてホンダの開発エンジニアいわく、ビートは軽自動車のサイズだけど中身は軽自動車ではないと話していました。とくにハンドリングやブレーキのフィーリングはNSXにも劣らないともいいます。
そうした魅力が誕生から30年が経とうするいまも、多くのファンを惹きつけているのではないでしょうか。
なお、本田技研工業の創設者である本田宗一郎さんがご存命だった頃、最後に見届けた新型車がビートでした。
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