懐かしの美しい日本車を手掛けたイタリアンデザイナーとは?

イタルデザインの誕生の裏に、いすゞ「117クーペ」があった!?

 プリンスと日野に次いで、イタリアのコーチビルダーの門を叩いた日本メーカーは、東洋工業、つまり現在のマツダである。カーグラフィック誌の特派員として1960年からトリノに在住し、のちにジョルジェット・ジウジアーロ氏とともに「イタルデザイン」を興す宮川秀之氏を介して、イタリアのカロッツェリアにコンタクトを求めていた東洋工業は、トリノ近郊グルリアスコのベルトーネを訪ねた。

●マツダ・ルーチェ(初代)

マツダ「ルーチェ・ロータリークーペDX」
マツダ「ルーチェ・ロータリークーペDX」

 この2社の提携は、1962年4月に合意。同年6月には当時チーフスタイリストに迎えられたばかりだったジョルジェット・ジウジアーロが、同年秋の東京モーターショーに出品されることになっていた試作車「マツダ1000」をベースにデザインし直したコンセプトスタディを日本側に提案した。

 翌1963年の東京モーターショーにて初公開されるこのコンセプトカーは、イタリア語で「光」を意味する「ルーチェ」と名づけられていたが、それは広大なグラスエリアがルーミーかつ明るい室内空間を生み出すとともに、クリーンなボディサイドを持つことをアピールしたものだったといわれている。

 1964年4月には、東洋工業は新たなセダンのために、ベルトーネとの契約を更改することになる。その要請に応じて、ジウジアーロは「S8P」と呼ばれる4ドアセダン型プロトティーポをデザイン。このS8Pはロータリーエンジンを搭載する、しかも前輪駆動という先鋭的な取り組みがなされていたが、その量産モデルである「ルーチェ1500」は、コンベンショナルなレシプロ4気筒ユニットを搭載するFR車として、1966年から正式発売されるに至った。

 それでも生産型ルーチェ1500、およびのちに追加された上級グレードの「1800」は、際立ってクリーンなプロポーションを持つとともに、薄いウエストラインと広大なグラスエリアの対比が清新な印象を与える、じつにスタイリッシュなセダンとなったのだ。

 ちなみにFF+ロータリーのパワートレインは、1969年に発売された「ルーチェ・ロータリークーペ」として正式採用。こちらは、ルーチェ・セダンをベースにマツダ社内でデザインワークがおこなわれたそうだが、ジウジアーロ本人もその美しさを認めたといわれている。

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●いすゞ117クーペ

いすゞ「117クーペ」。ハンドメイド時代の生産モデル
いすゞ「117クーペ」。ハンドメイド時代の生産モデル

 日野自動車と同じく、今では大型商用車専業となっている(海外向けには小型トラック/SUVも生産・販売を継続)いすゞ自動車は、かつて国産メーカーとしては格別に洒脱な乗用車の数々を生み出していた。

 そのイメージを決定づけたのが、1968年に発売された「117クーペ」である。ベルトーネを辞して、同じトリノのカロッツェリア「ギア」に移籍した時代のジョルジェット・ジウジアーロが手がけた名作である。

 いすゞはギア社に、同じコンポーネンツを共有するセダンとクーペのデザインワークを依頼。のちに「フローリアン」となる「117」セダンはフィリッポ・サビーネ、そして117クーペとなる「117スポルト」はジウジアーロが担当した。

 117スポルトは、1966年3月のジュネーヴ・モーターショーにて初公開され「コンクール・デレガンス賞」を獲得。さらにイタリアで開催された「国際自動車デザイン・ビエンナーレ」にも出品され、「Gran Premio d’Onore(名誉大賞)」を受賞したという。

 ところが、ジウジアーロは1967年にギア社を買収したアレッサンドロ・デ・トマゾとの対立から、退職・独立の道を選んだのだが、いすゞはその後もジウジアーロにデザインワークを継続してもらうことを要請。そこで、ベルトーネ時代に知り合った友人、宮川秀之とともに新たに「イタルスタイル」社を設立し、その業務の窓口とすることになった。

 このイタルスタイル社が、翌年には「イタルデザイン」へと発展。いすゞ117クーペは、巨匠ジウジアーロの人生にとっても重要なマイルストーンとなったのだ。

 当初、ハンドメイドで少量生産されていた117クーペは、1973年には量産を見越したマイナーチェンジを受ける。また、1977年には当時流行していた角型4灯ヘッドライトを与えられるが、これらのフェイスリフトもすべてイタルデザインとジウジアーロの監修を受けていたという。

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