「布シート」が高級で「本革シート」は格下!? いまと昔で変化したクルマの価値観とは

いつごろから「布シートより本革のほうが高級」になったのか

 実際に、その伝統はいまも一部で引き継がれている。たとえばトヨタの「センチュリー」だ。

 最新センチュリーのシートは、ウールファブリック仕様となっている。

トヨタ「センチュリー」の室内。ウールファブリック仕様の「瑞響」
トヨタ「センチュリー」の室内。ウールファブリック仕様の「瑞響」

 センチュリー・クラスの場合は、費用をケチって布シートにするわけがない。狙って布シートを採用しているのだ。

 ちなみに、1960年代の天皇陛下の御料車「プリンスロイヤル」も、後席はウール織物の布シートだった。前席は本革シートなのに、後席はわざわざ布シートにしていたのだ。これは本革シートよりも布シートのほうが、格が上にあるということを証明する一例といえるだろう。

 では、いつ頃から、本革シート=高級品となったのだろうか。それはクルマのシートの歴史を振り返れば、おのずと答えが見えてくるだろう。

 クルマが発明され普及へと至る1900年代前半は、ほとんどのクルマがシートに本革シートを採用していた。そして、一部の高級車では、耐久性よりもソフトな布シートが採用されていた。

 この時代は、当然、本革シートよりも布シートのほうが格上となっていた。

 そして第二次世界大戦後の1950年代以降、日本でも自動車生産が始まる。ここで日本車はどうしたかといえば、人工皮革の塩化ビニールを使ったのだ。これが、当時の日本としてはもっとも安価で現実的な選択だったのだろう。

 一方で布シートもあり、こちらはウールを利用。当然、塩化ビニールよりも布シートのほうがコストは高い。しかし、塩化ビニール&ウールの時代は短かった。

 その後、化学繊維の時代が到来する。化学繊維とは、ナイロンやポリエステルなどを使った繊維のことで、第二次世界大戦後に普及した技術だ。これが1960年代ごろに自動車シートの繊維として利用されることになる。

 この技術が、自動車のシートを決定的に変えることになった。

 化学繊維の登場により、布シートの耐久性は飛躍的に向上。それまでのウールに比べて化学繊維だとコストもかからない。こうして布シートの可能性を各段に高めたのだ。

 その結果、1970年代から80年代にかけて、布シートは大いに普及。さらに、ベロア、ジャージー、ツイードなど、さまざまなバリエーションを生み出してゆく。一方で本革シートは、耐久性という実用面ではなく、ステイタス性という側面が強調されることになったのだ。

 ちなみに、日本で乗用車が庶民の手に渡るようになったのは、化学繊維のシートが登場した後。つまり、ほとんどの日本人は、本革シートが耐久性で布シートを勝るところを見る機会がなかったといえる。

 そして、輸入される欧米の高級車の多くには、トラディショナルな本革シートが装備されていた。これを見ていれば、誰もが本革シートは布シートよりも高級品であるという認識が定着して当然だろう。

 そんな歴史的な流れが、現在の我々に、本革シート=高級品という見方を定着させたのだ。

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1件のコメント

  1. 革張りシートは掃除が楽。