ピニンファリーナが手掛けた美しきクルマ3選【外国車編】

ピニンファリーナが手掛けた美しいクーペとは

 アパレルや時計だけでなく、自動車でも稀に見られるダブルネームだが、ここで紹介するダブルネームは別格である。

 最高級車の代名詞ロールス・ロイスと、イタリアンデザインの盟主ピニンファリーナという至高のダブルネームのもと、1975年に誕生した「カマルグ」である。

●1975年−1992年 ロールス・ロイス「カマルグ」

ロールス・ロイス・カマルグ
ロールス・ロイス・カマルグ

 1975年から1990年代初頭まで作られたロールス・ロイス「カマルグ」は、「コーニッシュ」をベースに、よりモダンなボディと豪華な内容が盛り込まれた超高級パーソナルクーペである。

 V型8気筒OHV6.75リッターのエンジンや、GM製の3速オートマティック変速機、あるいはハイドロニューマティックを導入したサスペンション/ブレーキシステムなどのメカニズムは、コーニッシュや「シルヴァーシャドウ」とほぼ共通ながら、最大のトピックとして挙げるべきは、イタリアの名門ピニンファリーナが公式にボディデザインを手掛けたことだろう。

 ロールス・ロイス側からピニンファリーナに通達されたリクエストは、「既存のシルヴァーシャドウ用プラットフォームとランニングギアを流用し、しかも最高級の名に相応しい威厳を保ちつつ、決して古臭くならないデザインを持つ4シータークーペ」だったとされている。

 この要望に応えるべく、デザインワークを担当したスタイリストの名前は、創業以来のピニンファリーナの慣例に従って公表されていないのだが、当時のマネージメントデザイナーであったレオナルド・フィオラヴァンティの指揮のもと、パオロ・マルティンのスケッチが採用されたというのが定説となっている。

 一方コーチワークについては、イタリア・トリノのピニンファリーナで用意されたボディパネルを英国に送り、ボディ/インテリア架装は英国ロンドン近郊のマリナー・パークウォードでおこなわれるという複雑な工程が採られたものの、コーニッシュの上位にランクされた最高級パーソナルクーペだけに、内外装のフィニッシュには最大の配慮が払われていた。

 第1号車の日本導入当時、当時の総代理店コーンズ&カンパニー・リミテッドが設定した販売価格は3810万円。同じロールス・ロイスでも、リムジンの「ファントムVI」は完全オーダーメイドだったため、シリーズ生産車としては「世界一高価な乗用車」とも呼ばれた。

●1997年−2005年 プジョー「406クーペ」

プジョー406クーペ
プジョー406クーペ

 フランスの老舗プジョーは、1960年にデビューした「404」以来、自社の4輪乗用車のデザインワークをピニンファリーナに事実上の完全委託し、自動車デザイン史に残る傑作の数々を生み出してきた。

 しかし今世紀を迎えて、その素晴らしい伝統は幕を閉じることになる。その最終期の作品のひとつとなったのが、プジョーのセグメントDベルリーヌ「406」をベースに、ピニンファリーナが流麗なクーペボディをデザインおよび架装した「406クーペ」である。

 2ドアのクーペボディは、406ベルリーヌ/ブレーク(ワゴン)とはまったくの別ものとなった。

 このクルマの発表から4年後、白血病のため30歳の若さで逝去してしまったデザイナー、故ダヴィデ・アルカンジェーリが手掛けたスタイリングは素晴らしいプロポーションを誇り、デビュー当時には「世界一美しいクーペ」と称された。

 日本市場には、デビュー翌年となる1998年1月から正式導入。スペックはPRV製3リッターV型6気筒24バルブエンジン+4速AT版のみだったが、EUマーケットでは2リッター(のちに2.2リッターに拡大)の直列4気筒エンジンや5速MTなども設定されていた。

 2003年に、当時のプジョーの新デザイン言語にしたがってバンパーを一新するフェイスリフトが行われたのち、2005年にはプジョー社内デザインとなる407クーペに跡を譲るかたちで、惜しまれつつ生産を終えることになった。

 そしてこの406クーペおよび、スライドドアを持つユニークなコンパクトカー「1007」を最後に、現在に至るまでピニンファリーナ・デザインによるプジョーは創られていないのである。

【画像】ピニンファリーナが手掛けた美しきクルマたち(14枚)

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