「スッと発進」で驚く加速感!? 新型キックスはナニがスゴいのか
新型キックス、気になる走行&快適性はどう?
アクセル一踏みで「スッと発進」、「スムーズな加速」といったドライバーの操作に対するレスポンスの良さは、ノートe-POWERや「セレナe-POWER」で体感済みですが、フィーリング的にはノートe-POWER NISMO(=よりダイレクト&スポーティな制御)に近い印象です。
車両重量はこのサイズにしては1350kgと決して軽くはない車体を「おっ、速いな!!」と感じさせるくらいの力強さが備わっています。個人的には普段の走行は「ECOモード」でも十分だと感じました。
ハンドリングは見た目の印象よりも骨太に感じました。ステアリングは実用域では扱いやすさ重視の操舵力で、60km/hくらいを境に手ごたえが増すフィーリングです。
ノートより最低地上高は+40mm、全高は+90mmと基本素性は不利ですが、ノートよりも格段にレベルアップしています。
クルマの動き自体は決してキビキビ系ではありませんが、バッテリー搭載を忘れるくらいの軽快さと姿勢変化を抑えたクルマの動きが印象的です。
さらにバッテリー搭載による低重心化や前後バランスの適正化、さらにコーナリングをサポートするインテリジェントトレースコントロールの効果も相まって、ハイスピードでのコーナリング時は「ちょっと曲がり過ぎ!?」と思うくらいノーズがインを向きます。実は見た目に似合わず意外とコーナリングマシンです。
快適性は重さを活かした落ち着きある足の動きと吸収性、粗い路面でのザラザラした振動の少なさなど、SACHSダンパー採用の「エクストレイルAUTECH」に近い動的質感の高さを備えています。
直進安定性は高いもののステアリングセンター付近の手ごたえと直結感がやや曖昧なのが残念なところです。この辺りはもう少しシャキッすると、クルマへの信頼がより高まるのではないでしょうか。
静粛性の高さも魅力のひとつです。ノートe-POWERはエンジン始動時にEV走行時とのギャップに興ざめでしたが、キックスは遮音材の追加やガラス厚の変更をしています。
さらに車速に応じたエンジン回転数の制御、さらに発電タイミングを充電量重視から車速重視への変更などにより、定常走行時はエンジンが始動しても気にならないレベルに抑えられています。
高速道路の交流などでアクセルをグッと大きく踏み込むと3気筒特有の軽めのエンジン音は聞こますが、エンジンが遠くで回っている感じで耳障りには感じませんでした。
ブレーキは日産の電動化モデルおなじみのアクセル操作のみで車速コントロールが可能な「1ペダルドライブ」を採用していますが、ノートe-POWERやセレナe-POWERよりも自然で人間の感覚に合った制御になっているような気がしました。
先進安全装備は注目のプロパイロットやインテリジェントエマージェンシーブレーキは単眼カメラ+ミリ波レーダーの最新スペックを採用しています。
また、インテリジェントLI(車線逸脱防止支援システム)、LDW(車線逸脱警報)、踏み間違い衝突防止アシスト、SOSコールなどは全車標準。しかし、多くの人が便利だと実感するインテリジェントアラウンドビューモニターがオプション設定なのはガッカリです。
オプション価格は27万5990円からと、一見割高に感じますが、ライバルモデルの同等装備のグレードで比べるとほぼ同等、いやe-POWERであることを考えると、「むしろお得かも!?」。ただ、気になるのは駆動方式がFFのみで4WDの設定がないことでしょう。
キックスは「カジュアル過ぎず」、「スポーティ過ぎず」、「個性派すぎず」と、非常にバランスの取れたモデルに仕上がっています。
欧州専売となったジュークと比べると控えめに感じる部分もありますが、新生日産の国内市場を支えるミッションを考えると、ズバリ「直球勝負」といえるでしょう。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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