究極の「ミウラSV」は、それまでのミウラと何が違うのか?【THE CAR】

古典的でありながら未来を見ていた「ミウラ」とは?

 生みの親ジャンパオロ・ダラーラは社外に去り、ベルトーネと同様、どちらかというとランチア・ストラトス・プロジェクトに惹かれていた。フェルッチオ自身は自動車ビジネスへの関心をとうに失っており、時代はカウンタックの到来を待っていた。

 そんななか、ボブ・ウォレス率いる開発チームによる一連のコンペティション計画など、ランボルギーニは会社として危機的状況にあったにも関わらず、否、あったからこそ、いくつもの野心的なプログラムが生まれていた。

ワイド化されたリアフェンダーと、意匠が変更されたテールライトが、「ミウラP400SV」を見分けるポイントだ
ワイド化されたリアフェンダーと、意匠が変更されたテールライトが、「ミウラP400SV」を見分けるポイントだ

 社の命運は今やパオロ・スタンツァーニが握っており、彼にはランボルギーニをもういちど表舞台に立たせるための「時間」が何としても必要であったに違いない。おりしも、世界はすでに先行き不安を露呈しつつ……。

 次期型モデルが出るまでのあいだに、彼らは自らフェルッチオの課した呪縛を解き放ち、ミウラの改良を、リアルミッドシップカーへの改造を、決意する。それは実をいうと、さほど大掛かりのものではなかったけれども、ダラーラをして「以前とは別物」といわしめるほど効果的なモディファイが実行に移された。

 最大のポイントは、リアサスペンション下部の構造変更である。これにより得た「効能」はリアトラクション性能向上以上のものがあった。

 ワイルドなスタイリング。

 ベルトーネによってリデザインされたリアフェンダーは、以前のモデルの印象をすっかり消し去ってしまうほど、そして禍々しいほどに膨れ上がっていた。前をいくミウラを見ると、SとSVとではまるで別のクルマが走っているように見える。それほど、違う。

 生産台数150台。ほぼ全車が1971年−1972年の間に生産された。ベルトーネが造り、ランボルギーニがアッセンブリをするという手法そのものは、SVになっても変わらなかった。唯一の例外は、ウルフが頼んだ個体のみである。

 取材車両のSVは、世界を見渡してももっとも状態のいい「走るコンディション」の個体である。筆者はこの個体のオーナーとともに、ミウラの50周年を祝う本社主催のツアーに参加したが、ノートラブルで走り切ったことはもちろん、なんと、そのあとにスペインで開催されたミウラ牧場を訪れるという夢のようなツアーにも、オーナーはこの個体を持ち込んで参加している。

 よくみていただければ分かるが、この個体のヘッドライトまわりはフツウのSVとは違っている。通常はマツゲの変わりにブラックペイントがほどこされているが、この個体はふたつのカバーだ。これは最初期のわずかな台数のみに見られる特徴で、おそらくはSのカウルをSV用に仕立てるための苦肉の策だったのだろう。後に、SV用としてヘッドライト部分だけがくりぬかれたカウルが用意される。

 近年、SVの評価はうなぎ上りである。P400や同Sに比べて、2倍の価格で取引されることも珍しくない。台数が少ないから、格好いいから、いろんな説があるけれども、筆者はそういう事実をすべてひっくるめて、このSVこそが、ランボルギーニというブランドの最大にして最初で最後の画期になったクルマだから、だと思っている。

 ミウラは、古典的なスポーツカーである。と同時に、未来を見据えたパッケージを有していた。スーパーカーの元祖と言われる所以である。そのなかで、唯一、最後のSVだけが、エレガントなスタイルを残しつつ、性能を重視した仕立てになっていた。スーパースポーツへの思想的原点を、そこに見つけることができるのだった。

●LAMBORGHINI MIURA P400SV
ランボルギーニ・ミウラP400SV

・生産年:1971−1973年
・総排気量:3929cc
・トランスミッション:5速MT
・最高速度:290km/h
・全長×全幅×全高:4360×1780×1050mm
・エンジン:V型12気筒DOHC
・最高出力:385ps/7850rpm
・最大トルク:40.8kgm/5750rpm
・生産台数:約150台

【画像】「ミウラ」と「ミウラSV」を見分けるポイントとは?(12枚)

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