エリア拡大で勢いづく「ウーバー」とは何者? タクシー配車アプリ強化の裏で起きる変化とは
ウーバーが提供するタクシー配車アプリのウーバータクシーが、東京で2020年7月3日にサービスを開始しました。サービス提供エリアは全国で徐々に拡大していて、東京は12か所目だといいます。ウーバータクシーの日本でのエリア拡大においては、クルマの新しい使い方に対する、さまざまな事情が見え隠れするといいますが、これからどのように変化していくのでしょうか。
意外と知らない? ウーバーとはどういう会社なのか
スマートフォンアプリのウーバータクシーが、2020年7月3日に東京でサービスを開始します。
これまで、ウーバーのアプリを使ったタクシー配車サービスは、過去2年ほどの間に大阪、京都、名古屋、仙台、青森、福島、広島、高知など全国各地で徐々に拡大し、12か所目としてついに東京都内での実用化が始まりました。
このニュースが新聞やネット上で大きく取り上げられています。その背景には、クルマの新しい使い方に対する、さまざまな事情が見え隠れするといいますが、いったい何が起きているのでしょうか。
まずは、日本でのタクシー配車アプリ戦争です。
DeNAのタクシー配車サービス「MOV(モブ)」が2018年12月に都内で発表された際、同社の担当役員は「タクシー配車アプリ戦争が、2019年から2020年にかけて起こる。不退転の覚悟で勝負に挑む」と決意表明をしています。
その予想通り、ジャパンタクシー、MOV、中国のDiDi(ディディ)、さらに今回のウーバー都内展開など、日本ではタクシー配車アプリ競争が厳しさを増してきました。
タクシー配車アプリは、タクシー会社にとっては需要が明確化され、非効率な客待ち時間がなくなるなど、経営にとってプラス要因があるとされています。
一方、ユーザーにとっては、短時間での明快な予約作業から支払いまで一気通貫したサービスが受けられることが大きなメリットです。
とはいえ、単純にタクシー配車アプリだけの話なら、ウーバーの都内活動開始が大きなニュースになるとは思えません。
キーポイントとなるのは、日本でのライドシェアリング解禁についてです。
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日本でウーバーといえば、タクシー配車アプリに比べて、自転車などで食事を自宅まで届けてくれるサービス、ウーバーイーツの方が知名度は高いと思います。
2016年に東京でサービスを開始し、現在は全国各地でサービスが拡大。コロナ禍での巣ごもり需要の拡大で、さらに注目が高まりました。
ウーバーイーツも、ウーバーの事業のひとつですが、そもそもウーバーとは何者なのでしょうか。
筆者(桃田健史)は以前、米カリフォルニア州サンフランシスコのウーバー本社を取材し、ウーバー誕生の経緯や、将来事業の方向性などを詳しく聞きました。
ウーバーが誕生したのは、いま(2020年)から11年前の2009年です。同じ頃、ウーバーのライバルである「Lyft(リフト)」も、ウーバーと同じサンフランシスコで活動を始めました。
なぜ、サンフランシスコなのでしょうか。理由は大きくふたつあると思います。
ひとつは、地理的な環境です。サンフランシスコ中心部はニューヨークのマンハッタンのように、沿岸部の入江のような狭い形状で、その周辺に人口が密集しています。
空港まではクルマで約30分ほどの距離。こうした都市形態にしては、ニューヨークと比べてタクシーの数が少ないといわれてきました。
そうしたなか、客待ちで使われていないハイヤーの配車をアプリでおこなったり、また個人所有のクルマをタクシーのように使うという「ライドシェアリング」の発想が生まれました。
もうひとつ、サンフランシスコでの誕生の理由は、シリコンバレーの存在です。
サンフランシスコからクルマで1時間ほどの距離にある、パロアルト、サニーベール、マウンテンビュー、サンノゼといった地域は、1970年代からインテルなど半導体ビジネスが盛んとなり、ゲーム関連やアップルも登場。さらにグーグル、フェイスブックなどが続き、シリコンバレーはIT系企業の集約地となりました。
サンフランシスコ中心部はシリコンバレーからもっとも近い大都市であり、IT関連事業者が数多く居住しています。そうした都市生活を好むITエンジニアらが集まりやすかった、という点があります。
また、ウーバー誕生の2009年は、アップルのiPhoneと、グーグルのAndroidスマートフォンの普及初期でした。
ウーバーのビジネスモデルは、移動するモノ(自動車、自転車、船舶、飛行機・ドローンなど)を使った各種サービスを、スマホアプリを介してユーザーに提供するというものです。そのひとつが、タクシー配車サービスであり、ウーバーイーツなのです。
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