珍車発見!! かつてあった日産製、ルノー製のアルファ ロメオとは?

アルファ ロメオと何かと話題の日産が手を組んだ!?

 このクルマは車名と盾形のマスクが示しているように、アルファ ロメオのモデルのひとつである。でも、厳密にはイタリア車ではない。ブラジル市場向けに専用開発/専売された、知られざるアルファ ロメオなのだ。

●アルファ ロメオ2300リオ:1974~1986年

アルファ ロメオ2300リオ
アルファ ロメオ2300リオ

 リオデジャネイロ近郊で1942年に創業した国営メーカー「FNM(Fabrica Nacional de Motores)」社は、第二次大戦直後からイタリアの自動車メーカーと深い関わりを持ち、1950年代初頭から、アルファ ロメオの大型トラックのライセンス生産に着手した。

 さらに1960年には、当時のアルファ ロメオ最高級ベルリーナである「2000」のライセンス生産版「FNM 2000JK」とともに、乗用車生産にも進出。マスクを独自にフェイスリフトするとともに、排気量も拡大した「FNM 2150」も併せて、1970年代まで生産された。

 そして1974年に誕生したのが、この「アルファ ロメオ2300」である。FNM社が事実上のアルファ ロメオ傘下に収まったことから、「アルファ ロメオ」名義で販売されることになった。

 また、生産拠点の地名から「RIO(リオ)」のペットネームを冠することになったという。

 2300のスタイリングは、1972年にイタリア国内でデビュー、日本にも正規輸入された「アルフェッタ」とよく似たものとされたが、そのボディサイズはホイールベース2730mm/全長4690mmと、アルフェッタ(ホイールベース2510mm/全長4280mm)よりもかなり大柄。

 実は、もともと1950年デビューの「アルファ ロメオ1900」から発展した「2000JK/2150」のフロアパンやメカニズムを流用し、当時最新モードのボディを組み合わせた新旧折衷モデルだったのだ。

 エンジンは2150用をさらに拡大した直列4気筒DOHC2310ccで、シングルキャブレターの初期モデルでは140ps。キャブを2基に増設した進化版「2300ti」では149ps。そして最終版にあたる「2300ti4」では165psを標榜した。

 また大型なボディを生かして、ブラジルではエグゼクティブのショーファードリブンにも供用されたことから、後席には巨大なセンターコンソールがオプションで装備可能とされ、冷蔵庫や自動車電話を組み込むこともできたといわれている。

●アルファ ロメオARNA:1983~1987年

アルファ ロメオARNA
アルファ ロメオARNA

 一定以上の年齢を重ねた日本のクルマ好きには、往年の「日産パルサー」にしか見えないこのクルマ。実はこれもアルファ ロメオのモデルのひとつ、その名も「ARNA(アルナ)」である。

 もともと、南イタリアの雇用促進策として建設された「アルファスッド」の生産拠点、ナポリ近郊のポミリアーノ・ダルコ工場を補完するため、アルファ ロメオ社はさらに南部のバーリ近郊にプラトーラ・セラ工場を建設。

 同時にその新工場で生産する、アルファスッドの下位に当たるモデルを小型車マーケットに送り込むというプロジェクトをスタートさせた。

 この新小型車ではコストを抑えるべく、他メーカー製の車体にスッドのコンポーネンツを組み込むことになった。そこでアルファ ロメオ経営陣が白羽の矢を立てたのが、日本の日産自動車だった。

 この日伊2社は、既に1978年から日本で発売されていた日産「パルサー」のボディシェルに、アルファスッド用の水平対向4気筒エンジンを組み合わせた「ARNA(Alfa Romeo e Nissan Automoveicoli S.p.Aのイニシャルを車名化)」の生産をおこなうという契約を、1980年10月に締結。この結果として生まれたアルファ−日産のコラボモデルは、1983年のフランクフルト・ショーで正式デビューに至った。

 共同開発のベースとなったのは、日本では1982年に代替わりした2代目日産パルサー。しかし、直列4気筒エンジンを横置きするパルサーのモノコックにボクサー4気筒を縦置きするには、前輪用サスペンションやボディのインナーパネルに大幅なモディファイが必要となったため、ARNAの生産・発売開始は1983年までもつれ込んでしまう。

 しかしこの時期には、既に2代目パルサーの新鮮味が失われてしまっていたせいか、当時のイタリア人の購買層には、ARNAはダサくてご都合主義的なクルマと判断されてしまう。

 加えてサビの問題がついて回るなど、商品としてのクオリティの低さも相まってセールス実績は惨憺たるもの。このプロジェクトは4年間で終了してしまった。

 いまなお、アルフィスタの間では不当なくらいに評価が低く、欧州のクラシックカー専門誌に登場する際には、いわゆる出オチ的な扱いを受けることもある。

 しかし、かつて自動車免許を取得した直後、ARNAプロジェクトにあやかるかたちで2代目パルサーに設定されたスポーティ版「パルサー・ミラノX1」に、若葉マークを貼って運転の練習をおこなった思い出のある筆者には、いかにも1980年代風のいでたちに仕立てられたARNAが、けっこうカッコよくも映ってしまったことを、ここに自白しておこう(汗)。

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