ベントレー伝統のV8に終止符。60年以上生産されてきたエンジンとは?
ベントレーで60年以上にわたって、改良に改良を重ねて生産され続けてきたV8エンジンの最後の1基が組み上がった。これで、6 3/4リッターV8エンジンに終止符が打たれた。
最後のミュルザンヌに搭載されるエンジンが組み上がった
2020年6月1日、ベントレーの6 3/4リッターV8エンジンは、連続生産されているV8のなかでもっとも長く使用されてきたエンジンだが、ついに手作業での製造工程が終了した。
1959年に製造された最初のバージョンと同じ構成とボア間隔で作られた最後のLシリーズエンジンは、60年以上にわたって生産され、30台限定の「ミュルザンヌ6.75エディションbyマリナー」に搭載されて、その生涯を終えた。
ビスポークシリーズであるミュルザンヌ6.75エディションbyマリナーは、ミュルザンヌの生産の最後を締めくくるものだ。
専用バッジ、時計とマイナーゲージ表面のエンジン断面図を模したデザイン、オイルキャップのミニチュア版を特徴とするベンチレーション「オルガンストップ」など、V8にインスパイアされた無数のディテールで、ミュルザンヌを象徴したエンジンの最期を飾った。
ベントレーの製造部門の取締役会メンバーであるピーター・ボッシュ氏は次のようにコメントしている。
「当社の由緒ある6 3/4リッターV8は、60年以上にわたってベントレーのフラッグシップモデルの動力源となってきましたが、このたび引退することになりました。
何世代にもわたる熟練の職人たちが、何年にもわたってひとつひとつのエンジンを丹念に手作業で組み立ててきたことを、私は非常に誇りに思います。
このエンジンがこれほど長い間、時の試練に耐えてきたのは、エンジンをよりパワフルに、より洗練された信頼性の高いものにし続けた独創的なエンジニアたちのおかげです。
いま、私たちはベントレーの未来を楽しみにしています。比類なきW12エンジン、スポーティな4.0リッターV8エンジン、そして効率的なV6ハイブリッドの搭載は、電動化へのはじまりとなります」
●伝統のV8は、いかにして生まれたのか?
1950年代にベントレーのエンジニアチームによって設計されたLシリーズV8は、それまでの直列6気筒エンジンとは一線を画すパフォーマンスを実現するために設計されたもので、1959年のベントレー「S2」に初めて搭載された。
当時のベントレーは「必要にして十分」として、約180bhpの最高出力しか与えていなかった。
それ以来、デザインの改良、ターボチャージャー(最初はシングル、次にツイン)、電子制御システム、燃料噴射、可変バルブタイミングなどの絶え間ない改良を経て、オリジナルエンジンの現代版は進化し続けた。
「ミュルザンヌ スピード」で537psを発生させ、1100Nmの驚くべきトルクを発生させた低回転エンジンは、現在すべてのベントレーに乗っている「トルクの波」を定義するユニークなキャラクターを実現した。同時に、排出ガスも大幅に削減され、最新のエンジンは有害な排出ガスを99%削減することに成功している。
過去60年間に製造された3万6000台のLシリーズのすべてのエンジンは、ベントレーのクルー本社内のエンジン工場で、すべて手作業で製造された。
最新のエンジンでさえも15時間かけて製作され、エンジンが完璧にスムーズに動くように、主要な内部部品を個別に選択してバランス取りがなされている。この技術は、完璧にできるようになるまで何年も必要である。
エンジンは完成後、徹底的なテストがおこなわれた後、エンジンスペシャリストのひとりによってサインされ、そのサインを示すプレートがエンジンの前面に貼りつけられる。これは長年続けられてきた伝統である。
ミュルザンヌ6.75エディションbyマリナーが30台生産された後、ミュルザンヌの生産が完了すると、新型「フライングスパー」がベントレーのフラッグシップモデルとなる。
フライングスパーには2023年までにハイブリッドパワートレインが搭載される予定で、この動きはベントレーの変化へのコミットメントと、持続可能なラグジュアリーモビリティの未来を象徴するものである。
世界でもっとも人気のある高級車ブランドであるベントレーは、高級SUV部門初の真のプラグインハイブリッドであり、ベントレー史上もっとも効率的なベントレーである「ベンテイガ ハイブリッド」の発売により、すでに電動化への道への第一歩を踏み出している。
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