もっと売れるハズ! ホンダ「アコード」はスポーティさが復活の鍵となる?
アピール次第では「アリ」なセダンになれる?
一般道では走り出した瞬間から剛性の高さを感じるボディと無駄な動きは抑えるが動かすところはシッカリ動かすサスペンション、滑らかで芯のあるステアリング系など「プレミアムセダン」の領域に入っていると感じました。
一方、高速道路は抜群の直進安定性との高さが印象的。これはシャシの進化に加えて空力性能の改善も大きく寄与していると思います。
ただ、ホンダセンシングのACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)とLKAS(車線維持支援システム)の制御の甘さは改善項目でしょう。
どちらも印象的だったのは快適性の高さで、ドライブモード「ノーマル」でも凹凸を乗り越える際のアタリの優しさやシットリとした足の動かし方などは、同クラスのライバルと比較してもトップレベルでしょう。
さらに「コンフォート」は日本仕様のみのモードということで期待をしたのですが、ノーマルより突き上げは若干優しくなるもノーマルとの違いは明確に感じることができません。
ただ、もっと驚いたのはワインディングを走らせたときでした。まるでボディサイズや車両重量が一回り小さくなったかのような「軽快感」と「一体感」を備えています。
FFとは思えない前後バランスの良さ、無駄な動きを抑えたボディコントロール、4輪の接地性の高さなどが相まって、「意のまま」と「安心感」が高度にバランスされたハンドリングです。
ドライブモード「ノーマル」でもスポーティセダンを超えるレベルですが、おススメは「スポーツ」でしょう。
ステアリングはダイレクト感重視、サスペンションやアジャイルハンドリングアシストは俊敏性重視、パワートレインはアクセル操作に対する加速レスポンスアップの制御に変更。
さらにアクティブサウンドコントロールでマルチシリンダーエンジンのような勇ましいサウンドをプラス。その走りはズバリ「快適性を備えたスポーツセダン」で、歴代アコードに設定されていたSi、SiR、ユーロS、タイプSなどの走りに一過言あったスポーツグレードの流れを組んだ末裔といっていいと思います。
このように、シーンに応じて「プレミアム」と「スポーツ」、どちらにもなれる二面性こそが、新型アコードにおける「ホンダらしさ」でしょう。ただ、開発コンセプトの「若返り」ができたかというと少々疑問が残ります。
まず「EX」というグレード名はもちろんTV-CMや広告を見ても、新型アコードの若返りを感じるどころか、以前と同じく影の薄いまま。
月販販売目標は300台と控えめですが、個人的にはそれを逆手にとってよりピンポイントな販売戦略を取るべきだと考えます。
筆者はアコードの若返りは「おじさんが無理に若作りすること」ではなく、「若い人が見て『おじさんカッコいいよね!!』といったような憧れの存在になること」だと思っていますが、それをもっと声高らかにアピールする必要があるでしょう。
ちなみに同じ境遇である日産「スカイライン」は、大幅改良時に「400R」というおっさんホイホイなグレードを追加しましたが、実は若い人からも注目度が上がっていると聞いています。
「クロスオーバーSUV主流でセダンは売れない」といいながらも売れる(といっても絶対数は少ないが)セダンは存在します。
新型アコードは間違いなく「いいクルマ」に仕上がっていると思いますが、ユーザーに「若返り」を解りやすく正確に伝えることができるか。それこそが日本市場でのアコードが再び輝くための “鍵”だと思っています。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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