豊田章男社長も参戦! トヨタがバーチャルレースを生配信した理由とは

特別ルールが設けられたレースは白熱した展開に

 今回のレースは、さすがに24時間ではなく、1時間のスプリントレースという設定。ドライバー交換はなく、4チーム9人のドライバーが同時に走行しました。

 各人のプレイステーションへの慣れの差を考慮し、スリップストリームとブーストがもっとも効くセッティングとしています。

 また、特別ルールとして2周から3周に1度、ピットインが義務付けられ、その際に3年間のドイツ在住経験がある坂東氏からさまざまな質問が出され、ドライバーはそれに答えなければなりません。

「e-ニュルブルクリンクレース」のライブ配信の様子(TGR公式YouTubeチェンネルの動画より)
「e-ニュルブルクリンクレース」のライブ配信の様子(TGR公式YouTubeチェンネルの動画より)

 こうした設定を聞くと、「余興っぽくなるのでは?」と、レース前に少し不安になりました。ところがレースは、耐久レースである通常のニュルブルクリンク24時間レースでは想定できないような、大バトルの連続。

 ドライバーたちも「ニュル(ニュルブルクリンク24時間レース)では(耐久性を重んじるため)マシンのポテンシャル100%で走行することがないので、これまでにない体験だ」とか「まるで本番レースのように汗をかく」との感想が出るほど、真剣にゲームに取組みました。

 結果、皆がニュルブルクリンクをよく知っているので、タイム差が少なくバトルが激しくなったのです。

 また、ニュルブルクリンクという過酷なコース設定のなか、マシンの挙動が綺麗に再現されており、なおかつ走行中のカメラアングルが素晴らしい。

 筆者(桃田健史)は、ニュルブルクリンク24時間レースの現地取材、そしてさまざまな量産車でニュルブルクリンク北コースを走行した経験がありますが、今回のオンラインレースに、まるで本物のレースを見ているような雰囲気を感じました。

 ニュルブルクリンクは1周約5kmのグランプリコースのほか、1周約25kmで高低差が約300mに及ぶノルトシュライフェ(北コース)が世界でもっとも過酷なサーキットとして知られています。

 1980年代からは日本のタイヤメーカー、1990年代からはトヨタやスバルなど日本の自動車メーカー各社が、北コースでの量産開発をおこなうようになりました。

 ニュルブルクリンク24時間レースは、レギュレーションが量産車に近いため、欧州メーカーはもとより、2000年代以降は日本からのメーカーとプライベートチームの参戦が増えていきました。

 レース終盤、ニュル参戦経験があるモリゾウ選手がGRスープラで飛び入り参加。「まるでニュルを実際に走っている感じで、必死で走った」と、レーシングドライバーたちに交じってバトルをさらに盛り上げました。

 eモータースポーツでは、ゲームのプロがおこなう質が高いレースがある一方、プロレーサーによるレースは余興っぽさが優先する傾向があると思っていました。

 今回のeニュルブルクリンクレース、そうした概念が変わるような良い企画だったのではないでしょうか。

【画像】バーチャルレースでも超白熱!? 実際の配信の様子を見る(10枚)

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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2件のコメント

  1. スバルが使用した車はBRZではなくWRXでしたよ。

    • このたびはご指摘いただき、誠にありがとうございます。
      修正いたしました。

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