なぜ車後方に「つり革」付けた? トヨタも開発する 目に見えない効果とは
かつて、クルマのリアバンパーにベルト状の物を取り付けて、地面に垂れ下げて走行するのが一部ユーザーの間で流行っていました。現在では、見かける機会が減りましたが、同じような理屈を応用したカスタムアイテムがGRブランドから発売されていました。これらのアイテムにはどのような効果があったのでしょうか。
かつての「つり革」効果はどうだった?
1970年代から1980年代、リアバンパーの下あたりに黒いベルトを取り付け地面に引きずるクルマが多かったといいます。あのベルトは「アースベルト」と呼び、クルマの帯電を路面に放電させるための物でした。
クルマに乗るときの「バチッ」、「ビリッ」とする静電気の減少が目的でしたが、実際の効果はというと、期待するほどの放電効果はなかったそうです。
しかし、無線やオーディオを楽しむ人のなかには、「電波状況が改善された」、「オーディオノイズや電波ノイズが減少した」という声もあったといいます。
帯電が電子機器に何らかの影響を与えていたと思われますが、当時はそれを検証する手段がありませんでした。ちなみにこのアースベルトは、その効果は別として、なぜかドレスアップアイテムとしてつり革をぶら下げる「つり革」なども人気を博しました。
その後、アースベルト人気が収まると、ポールアンテナを用いて空気中に放電させるアイテムも販売。しかし、その効果のほどはわからずじまいのようです。
2000年代初頭、「アーシング」が流行りました。電装系にアースケーブルを追加することでノーマル状態(=クルマのボディ全体をマイナス端子として使用)よりも抵抗が減り、多くの電流が流れるのと各部の放電効果も相まって、結果として機器本来の性能を発揮するという原理でした。
筆者(山本シンヤ)も実際に装着してみてその差を体感済みですが(古いクルマほど効果があった)、最近ではあまり耳にすることがありません。
その理由のひとつは「以前ほどの効果はない」ということでしょう。現在、どの自動車メーカーも内燃機関の燃費改善や電動化に熱心ですが、そのなかで電装品の重要度はより増していることから、それらをより効率的に作動させるための対策が今まで以上におこなわれているのでしょう。
2016年、トヨタ「86」のマイナーチェンジ時に発表された「アルミテープ」。開発のキーマンである空力エンジニア・山田浩二氏は開発の経緯を次のように語っています。
「86開発時に毎日同じ仕様のクルマに乗っているのに、日によってコンディションが違うことがありました。調べるとヘッドライトや電装品に手を入れた際に『ちょっとハンドル軽くなった?』と感じることがわかりました。
その変化は空力パーツを変えたときと同じ変わり方で、調べていくと『ボディの帯電』が悪さをしていたことに辿りつきました」
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理屈はこうです。空気は+(プラス)に帯電、クルマも+に帯電しているので、反発力が生じて空気は剥離(=空気の流れが乱れる)。
つまり、空気がエンジニアの想定通りにボディの上を綺麗に流れていなかったのです。そのため、空気を綺麗に流すには、クルマ側の帯電を空中に放電すればいいと考えました。
開発中は飛行機に採用される放電索(アンテナのような物)も試したようですが、辿りついたのが「アルミテープ」だったそうです。
帯電を抑えることで、空力改善による走りの変化だけでなく、パワートレイン(吸気も排気も空気の流れ)やサスペンション(帯電は流体に影響)などにも変化がありました。
筆者も実際に体感していますが、気のせいでは片づけられない変化です。その効果はデータでも実証済みで、現在はトヨタ/レクサスの多くのモデルに純正採用されています。
私達はあの吊り革をシャコタンして亀の子になった時引っ張るために付けていたけどなぁ〜。
つり革は危険です。何かに引っかけたり、道路上の落下物を引っかけて、飛ばしたりする可能性がある。
他人にけがをさせるかもしれません。昔は、多くの車に導電性のベルトのような物を垂らしていました。