TRD/NISMO/無限とは違う? 後発「GRブランド」の存在意義とは

究極のワークスチューナーこそ「GR」の真骨頂?

 数多く存在するワークスチューナーの究極がトヨタの「GR」です。これまでのワークスチューナーと違うのは、その立ち位置で、メーカー直系どころかメーカーそのモノなため、“純”ワークス組織であることでしょう。

 その源流は2007年に当時副社長だった豊田章男氏とマスタードライバーの成瀬弘氏を中心に発足した、“元祖”GAZOO Racingです。当初はトヨタのなかでもアウェイな活動でしたが、人を鍛え、クルマを鍛え、最終的に商品として世の中に出すという構想だったといいます。それは2010年のG’sを経て2017年のGRブランド展開スタート、そして今に繋がっています。

 現在、GRはWRC/WEC/ニュル24時間などのモータースポーツカテゴリーにワークスチームとして参戦していますが、その知見/ノウハウを受け継いで開発されたモデルが数多く用意されています。

GRブランドのモデルとして復活した「GRスープラ」
GRブランドのモデルとして復活した「GRスープラ」

 現在、開発中のWECを戦うTS050のロードバージョン「GRスーパースポーツ」を頂点に、GRスープラ/GRヤリスなどの「オリジナルモデル」、そしてノーマルモデルをベースにした「スポーツコンバージョンモデル」と、スポーツモデルのピラミッドが構築されています。

 そんなGRの戦略はさまざまあると思いますが、筆者(山本シンヤ)はもっとも重要なことはモータースポーツ活動とスポーツモデル「継続」のためだと考えています。これまでこのふたつは景気/経済状況に左右されやすい存在でしたが、トヨタはそこにメスを入れたのです。

 つまり、想いやスピリットだけではなく、最終的にトヨタの収益にシッカリと貢献できるシステムにすることです。つまり、GRはモータースポーツ活動をおこなうことでクルマ好きを助成すると共に人とクルマを鍛え、その技術が直接的に投下された商品が生まれ、それをユーザーが購入してくれることで収益が上がり、そのお金がレースに投入されるという壮大なビジネスサイクルを構築したことになります。

 GRカンパニーの友山茂樹プレジデントはGRのモデルに対してこう語っています。

「GRが開発したモデルに乗ってスポーティに感じる人、理想のノーマルと感じる人、安心して走れると感じる人などさまざまだと思いますが、我々は突出とした長所が短所を補って余るような商品であると感じていただけると嬉しいです。

 我々はレーシングカンパニーですので、レースという観点から長所を伸ばしていきます。もちろん、背反的に犠牲になることもありますが、そこを高次元でバランスさせることが、GRの味でありバランスです。トヨタ(=ノーマル)と同じ方向性になってしまったら、GRの存在意義がなくなりますので(笑)」

※ ※ ※

 そういう意味では、GRは 純ワークスであることはもちろん、「大きなトヨタのなかの小さなトヨタ」、「トヨタの枠を外れたトヨタ」じゃないかと筆者は思っています。

 ちなみに最近では「トヨタは嫌いだけど、GRは好き」、「トヨタは嫌いだけど豊田(章男)は好き」という人が確実に増えているそうです。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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