三菱「ランエボ」電動SUVで電撃復活か!? 新4WDシステムが開く再生への扉とは

低コスト化も実現? 「MI-TECHコンセプト」に隠された復活へのヒントとは

 ランエボMIEVは、2010年に「i-MiEV」として量産された三菱のEV技術の礎になっています。

 だたし、このランエボMIEVの「MIEV」内の大文字「I」は、「インホイールモーター」を意味します。一方、i-MiEVの方の「iMiEV」内の小文字「i」は「イノベーティブ」(革新的)と異なります。

 インホイールモーターは、車輪ホイールの内側にモーターを配置する方式です。ランエボMIEVでは、公共交通機関向けなどに電動品を開発製造する東京電機製造の、アウターローター式モーター(最大出力50kW)を四輪に装着しました。最高速度は時速180km、満充電での航続距離は250kmとしました。

三菱が2005年に発表した実験車「ランサーエボリューションMIEV」
三菱が2005年に発表した実験車「ランサーエボリューションMIEV」

 インホイールモーター式の四輪駆動車は、三菱以外にも国内部品メーカーなどによる実験車両があります。いずれも高い出力ときめ細やかな制御で、スーパーSUV級の走りが可能です。

 弱点は重量とコストで、これまで自動車向けでの本格的な量産化は進んでいません。

 一方、MI-TECHコンセプトでのクワッドモーターは、インホイールモーター式ではありません。モーターは前後車軸の中央部分に制御システムと共に配置されています。コスト面では将来的に大きく改善されるでしょう。

 背景には環境規制として、中国での新エネルギー車政策や、欧州でのグリーンディール政策などが強化されたこと。また、フォルクスワーゲングループが中長期経営計画としてEVシフトをぶち上げ、電動車関連部品を大量に発注したことなどが大きな要因です。

 では、ランエボSUVの量産化の時期はいつになるのでしょうか。

 MI-TECHコンセプトの発表時、三菱幹部は同社の電動車戦略について、「2022年までに、ミッドサイズSUV、コンパクトSUVに、三菱のプラグインハイブリッド車技術、また(ルノー・日産)アライアンスによるバッテリーEV、シリーズハイブリッド(e-POWER) のいずれかの電動化技術を採用した新型車を投入する計画です」と説明しています。

 この「2022年までに」という目標は、日産の内田誠CEOも決算発表で明言しています。

 日産は2020年にe-POWER搭載のコンパクトSUV「キックス」と、EV「アリア」を発売することが濃厚です。続く2021年にはハイブリッド車を含む新型「エクストレイル」と、より大きなSUV「クロスモーション」が北米市場に次いで日本にも導入されるのではないでしょうか。

 つまり、三菱がいう2022年までの新型ミッドサイズ・コンパクトSUVは、こうした日産車の三菱バージョンになる可能性が高いといえます。なかでも、「アウトランダーPHEV」と、新型エクストレイルの電動化技術の共用性に注目が集まります。

 クワッドモーター式4WDを搭載したランエボSUVは、こうした各種電動車が販売好調の場合に日産絡みの電動部品を活用することで、2023年以降で量産への道が開けると考えるのが妥当でしょう。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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