フェラーリの名は必要ない!? バブル時代の憧れ「テスタロッサ」【THE CAR】

栄光の名称「テスタロッサ」はイタリア語で「赤い頭」を意味している。1950年代から1960年代に活躍した「250テスタロッサ」の12気筒エンジンに赤く結晶塗装されたカムカバーがその名の由来だ。そして、このテスタロッサの名で復活したフラッグシップは、バブルの象徴となった。

フェラーリ史にとって異質の時代がピークを迎える

 フェラーリがそのフラッグシップとして、V12をリアミッドに積んだモデルを戴いていた時代は、ごく限られていた。それはフェラーリ史において、いわば異質の時代であったのである。

フェラーリ伝統の鋼管スペースフレームをシャシに採用し、水冷180度V型12気筒DOHC48バルブエンジンをミドシップに縦置き搭載。最高出力380ps/6300rpm、最高速度は公称値290km/hを誇る
フェラーリ伝統の鋼管スペースフレームをシャシに採用し、水冷180度V型12気筒DOHC48バルブエンジンをミドシップに縦置き搭載。最高出力380ps/6300rpm、最高速度は公称値290km/hを誇る

 ともかくその異質の時代は365BBにはじまって、512BBへ進化を果たす。同時代のライバル、ランボルギーニ・クンタッチとは対照的に、ロードゴーイングGTカーとして実に真っ当な発展をした、というのが筆者の見立てだ。

 とはいえ、それもまた、次なるチャレンジへの単なる序章に過ぎなかったのだ。ロードカーとしてマトモに進化すればするほどに、マーケットからの要望は増していく。もちろんそれに応えつつさらにフラッグシップらしい特徴をアピールしなければ、フェラーリラインナップの頂点に君臨することなど敵わない。

 筆者にも経験がある。暑い日だった。365BBのテストを終えて自宅へと帰り着いたとき、極度のノドの乾きとほとんど酸欠のような感覚で、カラダ全体がもうろうとしていた。ドライブしている間、窓を開けていても、フレッシュで涼しいエアに当たることができず、ただただ、フロントラジエターで熱せられた空気が、室内を満たしていたからだ。

 ガレージに着いたとたん、ほとんどあえぐようにして、たまらず頭から水道のミズをざぶざぶとかぶったことを思い出す。もちろん、口を盛大におっぴろげて……。

 走れば走るほど、BBの室内は蒸し風呂のようになっていく。最大の問題点は、GTとしての、根本的な快適性の欠如にあった。

 それだけじゃない。インジェクション仕様が出て、より多くの「金持ち」が乗るようになると、もうひとつの問題が持ち上がった。BBには、独立したトランクルームがない……。座席の後ろに、わずかなラゲッジスペースがあるのみ。あの独善的なライバル、クンタッチには、なんとも常識的なリアトランクがあるというのに!?

 BBの進化の先は、まず、この2点を解決することにあった。そして、これらふたつの問題点は、奇しくも病巣を同じくしていたのだった。

 巨大なラジエターである。

 ラジエターがフロントフード下にあるからこそ、エンジンとの間に存在するキャビンに熱風が充満する。

 ラジエターがフロントフード下にあるからこそ、そこに有効なトランクスペースを設けることができない。

 ならば、ラジエターを移動すればいいじゃないか……。どこへ?

 答は、それこそF1マシンにあった。BBがデビューする際に、180度V型をボクサーと称してまで活用した、F1イメージ(1970年代のフェラーリF1、312Tシリーズには正真正銘の水平対向エンジンが積まれていた)のなかに、その答はあったのだ。

 それが、サイドラジエター。

 ただし、この時代のクルマをサイドラジエター化するには、相当に思い切ったスタイリング上のチャレンジが必要であった。

 しかも、それは、今さら勇猛果敢なレーシングイメージであってはならず、少なくとも、BBのエレガントな雰囲気を引き継ぐ、否、昇華するカタチでなければならなかったのである。

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