フェラーリの本流ではなかった!? フェラーリ「365BB」誕生の秘密【THE CAR】

最速ロードカーの座を守るためフェラーリが意地となって開発

 365BBの発展版である12気筒ミドシップのスーパーカーを、F1イメージに被せてフラッグシップにおける、スーパーカー界の第一人者という地位を確立しようとした。当時のフェラーリは、現代ほど強力な地歩を固めるには至っていなかった。

 V型180度エンジンが、312TシリーズとしてF1界を席巻していた水平対向12発へのオマージュであり、宣伝効果も狙ったものであったことは間違いない。

 512BB系→テスタロッサ系へと続く、12気筒ミドシップを頂点とした時代が、突如、はじまった。しかしそれはまた、独特なレイアウト&パッケージングとの悪戦苦闘の時代であったと、もいえる。

ボディのスタイリングはピニンファリーナによるもの
ボディのスタイリングはピニンファリーナによるもの

 ライバルとは違うパッケージング&エンジニアリング上のオリジナリティを実現し、F1イメージをかもし出す。それは一石二鳥でかつ苦肉の策だった。

 当然、フェラーリも、ギアボックスの上にエンジンを積むという手法がミドシップカーの物理的メリットを損なうものであることはよく分かっていたはずだ。それでも発売した。フェラーリ自身が当初、12発ミドシップ=365BBの量産をそれほど深く考えていなかったことがそこからも伺えよう。

 フィアットの政策を受けて「続ける」ことを決めてしまった結果、フェラーリは、まるで引っ込みがつかなくなったかのように、20年かけてその呪詛と戦うことを余儀なくされ、最後のF512Mでなんとか区切りをつけることができた、というわけだった。

 以降、レーシングカーのような構造のスペチアーレ以外に、12発ミドの跳ね馬は姿を消すことになる。

 実際に365GT4BBから512BB、テスタロッサ、512TR、F512Mを乗り比べてみれば、フェラーリの二十年間に渡る苦闘と改良の歳月が手に取るように判る。

 BB?テスタロッサまでの乗り味は、エンジンそのものの大きさと重さを、ドライバーに、どうしても感じさせてしまうものだった。対して512TRとF512Mはというと、ようやくそれが部分的に解消されていた。ステアリング系の剛性感や改良された重心位置、シャシー性能の向上などの相乗効果で、BB由来のパッケージとは思えない走り味をみせるに至ったのだ。

 とはいえ、よくできたミドシップカーのように、ドライバーの脇からその重心が始まるような落ち着きはやはりなく、あくまでも背中に重量物を背負い込むという呪縛からは逃れ切れていなかった。だからこそ、それ以上の進化を諦めて、フェラーリは伝統のFR12気筒へと回帰したのではなかったか。

 そう考えると、ある意味、異常な二十年の始まりとなった365BBには、より一層のスペチアーレ感覚を覚えずにはいられない。異質のスタートであるからこその、特別感とでも言おうか。

1975年までにわずか387台が生産された
1975年までにわずか387台が生産された

 確かに、512BBと比べてみても、その走りのシャープさ、エキセントリックさ、エッジの鋭さにおいて、365BBはまるで違うキャラをみせる。たとえばF40が見せるような「危うさ」が、質は違えども確かにある。

 総生産台数387台。この数字だけをみても、365BBは、まず間違いなく、スペシャルな一台であり、近い将来、再評価に至ることは間違いない。

※ ※ ※

●FERRARI 365GT4/BB
フェラーリ365GT4/BB
・生産年:1971年
・全長×全幅×全高:4360×1800×1120mm
・ホイールベース:2500mm
・エンジン:水冷180度V型12気筒DOHC
・総排気量:4390cc
・最高出力:380hp/7700rpm
・最大トルク:42.0kgm/3900rpm
・トランスミッション:5速MT

●取材協力
DREAM AUTO
ドリームオート/インター店
・所在地:栃木県栃木市野中町1135-1
・営業日:年中無休
・営業時間:10:00~18:30
・TEL:0282-24-8620

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