スズキ新型「ハスラー」は旧型ユーザーも大満足!? ただの正常進化ではない理由とは
ハスラー開発の鍵となった「機能感」
新型ハスラーのあるべき姿を目指すうえで、キーポイントとなったのが「タフさと力強さ」のバランスだと、筆者は感じました。
林業などのプロや長年にわたるコアなユーザーが主体となる、同社の本格軽クロカンモデル「ジムニー」ならば、ユーザーの声を徹底的に集めて細かく分類することで、商品の方向性はある程度定まるはずです。
一方、ユーザー数が累計約48万人に及び、またライフスタイル系のファッションアイテムという意味合いが強いハスラーの場合、いったいどうやって商品企画を進めたのでしょうか。
この点についてチーフエンジニアの竹中氏は、自身が2014年初頭に赤と黒のツートンカラーのハスラーを購入した際のユーザー目線を大切に、「ニッチマーケットに属するはずのハスラーが、なぜこれだけ売れたのか」を考えたそうです。
社内での協議も進めるなかで、竹中氏は「ハスラーは、それぞれのユーザーが自分で育ててきたクルマ」と再認識し、さらに「初代ハスラーをベースに考えて新型を作ると、結果的に初代と同じ(商品性)になってしまう」という見解に達しました。
ジムニーでは、“機能美”という言葉がよく使われますが、新型ハスラーでは“機能感”という認識で、デザインや走りを作り上げてきたといい、企画から開発までの道のりは、けっして緩やかではなかったといいます。
じつは、新型ハスラーは当初採用を検討していたデザインをゼロから見直しています。
パッと見では、ハスラーのデザインアイコンである丸型2灯ライトから、初代と新型は「いわゆる正常進化」だと思われがちです。
しかし、実車に触れ、そして走ってみると、デザインや走り、クルマ全体が醸し出す世界観として、新型には独特のものを感じます。
初代モデルのユーザーも、軽初体験という人も、これまでユーザーそれぞれが築いたハスラースタイルを裏切らない、新しいハスラーの世界を感じることができると思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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