マスク着用でオービスを光らせた!? 顔がわからなくても検挙可能なのか
顔やナンバープレートを隠してオービスを光らせた場合、警察はどのようにして容疑者を検挙するのでしょうか?
オービスによる取り締まりでは、自動で撮影されたナンバープレートやドライバーの顔から対象者を特定します。では、マスクの着用やナンバープレートが見えていない場合は、どのようにして検挙するのでしょうか。
渋滞のない高速道路や交通量の少ない夜間の一般道などでは、ついついスピードを出しがちです。しかし、法定速度を超える速度で走っていると、突然赤い光に照らされることになるかも知れません。
赤い光を放つのは、オービス(ORBIS)と呼ばれる「速度違反自動取締装置」で、ラテン語で「眼」を意味する言葉から名付けられました。なお、オービスはボーイング社の商標です。
そのため、ボーイング社の機種または、ライセンス生産された機種以外は正確にはオービスではないのですが、日本においては速度違反自動取締装置全般の通称として一般的に使用されています。
オービスは、制限速度を超過して走行している車両を検知すると、当該車両の速度を記録し、ナンバープレートとドライバーを撮影します。
このとき赤外線による撮影と合わせて赤いフラッシュが投射されますが、赤外線は目に見えないため、赤く光るのはオービスが作動したことをドライバーに知らせるものといわれています。
オービスによって撮影されると、警察がその写真のナンバープレートから当該車両の所有者を割り出し、2週間から1か月後に出頭通知が送付されます。レンタカーや事業者、個人間賃借の場合は、運転手を特定するために時間を要する場合もあります。
では、マスクを着用していたり、ナンバープレートが見えていない場合、または運転手が本人とバレないように故意に顔を隠していた場合などは、どのように捜査するのでしょうか。
該当する事件での検挙実績がある埼玉県警へ取材を依頼しましたが、「捜査手法に関する内容についてはお答えできない」とのことでした。しかし、過去の情報からある程度は読み取ることができます。
埼玉県で2004年4月に送検となった事件では、現在は禁止されたナンバープレートカバーを使用してナンバープレートを見えにくくしていたほか、サンバイザーを下ろしたり、うつむくなど顔が映らないようにして、故意に速度超過をおこなっていたとされています。
当時19歳のドライバーは、2003年10月から同年12月までの間に、埼玉県警の管内だけで9回の著しい速度超過走行をおこなっていましたが、ナンバープレートの表記が読み取れなかったため、警察は車両の特徴から容疑者探しに着手しました。
その結果、2004年に82km/h超過の違反をおこなった際に、オービスによって撮影するだけではなく、違反した車両を覆面パトカーが発見し、任意で事情を聞いたところ、容疑を認めるような供述があったことから、容疑が確定したとして道交法違反で逮捕に至っています。
そして、同様の事件は他の管区でも発生しています。
大阪府警は、2008年4月17日、オービスが設置された阪神高速道路で、顔に覆面を着用した状態で故意にスピード違反を繰り返すなどの示威行為を繰り返していた当時24歳の男を、道路交通法違反(速度超過違反)容疑で逮捕しました。
大阪府警の発表によると、逮捕された男は2007年10月から2008年2月までの間、大阪市内の阪神高速道路環状線のオービスの手前で、故意に速度を上げるなどして速度違反を繰り返した疑いが持たれています。
それまでに34回の違反が確認されていただけでなく、2008年2月17日未明には60km/hの制限速度の3倍超となる186km/hが記録されていました。
その際、オービスでの車両の撮影には成功していましたが、男は車両前部のナンバープレートを取り外し、顔にはマスクを着用した状態で走行しており、車種以外の特定が難しい状態でした。
その後、違法競争型暴走族に対する取り締まりを実施した際に暴走車についての事情を聞きとり、容疑者の男が捜査線上に浮上します。
そして、この男について内偵を進めたところ、違反車両と同車種を有していることが判明し、逮捕につながりました。
このように、オービスで撮影された写真からドライバーを特定できない場合でも、車両の特徴や日頃の取締り、聞き取り調査によって捜査を進め、検挙につなげるようです。
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現在、旧型化したオービスは退役が進んでいますが、一方で300km/h以上の速度で走るクルマのナンバープレートやドライバーを撮影できる可搬式のオービスも登場しているようです。
無謀なチャレンジはドライバー自身と周囲のクルマを危険にさらすだけでなく、ドライバーの社会的信用を失墜させる恐れもあります。クルマに乗り続けるためにも、安全な運転を心がけることは重要です。
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