売れ筋車種はいつも同じ顔ぶれ? 人気車と不人気車の格差が広がる理由とは
お買い得な特別仕様車はテコ入れのために設定される?
逆に不人気車は、手厚いサービスをおこなっても好調に売れるとは限らず、リスクが伴うため放置されやすいです。販売ランキングの上位に浮上することもなく、埋もれてしまいます。このような車種は、海外向けに多いです。
従って購入後3年から5年で売却するなら、好条件を引き出せる人気車を選ぶと得をします。10年以上使う場合は、どのような車種でも売却額が下がるので、人気度や新車時の販売ランキング順位にこだわる必要も薄れます。
また、販売ランキング順位の推移を見ることも大切です。いまは好調に売れる車種は常連が増えて変化が乏しいですが、車種によっては、発売から数年を経過すると販売ランキング順位が下がってきます。
例えばトヨタ「C-HR」は、2017年の販売ランキングでは小型/普通車の4位でしたが、2018年は12位に下がり、2019年には15位まで後退しました。スバル「インプレッサ」も2017年は13位で2019年は20位、トヨタ「ハリアー」も16位から25位に後退しています。こうなると販売の回復を目的に、割安な特別仕様車を設定するなど対策を講じることが多いです。
タントは2019年7月にフルモデルチェンジしましたが、ライバル車のN-BOXを届け出台数で追い抜けません。そこで2019年12月に、買い得な特別仕様車の「セレクションシリーズ」を設定しました。
なかでも「Xセレクション」は、標準ボディの「X」に3万8500円の実用的なメーカーオプションを加えながら、価格はXと同額に据え置いています。新型タントが2位に甘んじて1位になれない状況を見ていると、タントの販売テコ入れも予想できるでしょう。
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好調に売れるべき主力車種が伸び悩んだり、販売ランキングの上位から下がり始めると、ユーザーのメリットになる販売促進対策がおこなわれるのです。
このような車種については、販売会社も危機感を持っていますから、値引きや下取り車の査定でも有利になります。
また人気車は、多くのユーザーが購入を検討するので、値引きの競争相手にも適しています。たとえばプリウスは、以前ほどではないものの依然として人気が高く、さまざまな車種と値引き競争しています。
日産の販売店では「ノートe-POWERは『アクア』だけでなくプリウスとも競います」といいます。ホンダでは「インサイト」、スバルではインプレッサ、さらにフォルクスワーゲンの販売店も「ゴルフは日本車だと意外にプリウスと競争します」というのです。
フォルクスワーゲン「ゴルフ」の競合はボルボ「V40」という具合にパターン化させるより、プリウスと競争させた方が商談のリアリティも強まるでしょう。さらにプリウスのようなトヨタの4系列全店が扱う車種では、プリウス同士で条件を競わせることも多いです。
好調に売れる販売ランキングの上位車種は、商品力が高いために選ぶメリットも多く、割安な特別仕様車の設定など販売促進も積極的におこなわれます。数年後に売却するときの条件も下がりにくく、値引きを競わせたりするときの相手車種としても活用できます。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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