なぜステップワゴンの「わくわくゲート」非搭載? 人気装備が無いグレード追加の意図
ホンダ「ステップワゴン」独自の機構である「わくわくゲート」は、使い勝手の良さから人気の装備です。しかし、2020年1月9日に一部改良され、「わくわくゲート」を装備しないグレードが販売されています。その理由は、なんなのでしょうか。
なぜ「わくわくゲート」がない設定が登場した?
ホンダ「ステップワゴン」には、「わくわくゲート」と呼ばれる独特な機構をもつテールゲートがあります。実際のユーザーからの評判が良いわくわくゲートですが、2020年1月9日の一部改良にてわくわくゲートを設定しないグレードが販売されたといいます。なぜ、特徴的な装備がない設定が出たのでしょうか。
現在の5代目ステップワゴンは2015年に登場しています。日本自動車販売協会連合会が発表した登録車販売台数によると、現行モデルの登場初年である2015年の販売台数は5万3699台で、ランキングは17位でした。その後も年間約5万台の安定したペースで推移し、ランキングも15位から22位を維持しています。
2016年には、ママたちの投票で選ばれる「マザーズセレクション大賞2016」を受賞するなど、その使い勝手は一家のお財布を握る主婦層からも人気です。
しかし、ステップワゴンの全盛期に比べれば、販売台数的にもうひと伸びほしいところです。そのため、2016年に一部改良と新グレードの追加、さらに2017年にマイナーチェンジおこなわれましたが、目に見える数字の変化はありませんでした。
そこで、2020年1月に一部改良を実施。それが、前述のわくわくゲートを装備しないグレードの追加だったのです。
5代目モデルから新たに採用されたわくわくゲートは、第5のドアとしてテールゲートに設置された横開き式の補助ドアで、本来のゲート同様に縦開きはもちろん、「横開きのドア」になるといったふたつの役割を持っています。
最大1180mmの荷室幅を6:4の割合で分割し、6の方を開けば一般的なベビーカーをそのまま収容できる広さがあるほか、リアバンパーが一体型であるため荷室の地上高は445mmまで下がり、荷物の収納がしやすくなりました。
さらに、横開きのドアは3段階の調整ができ、シーンに合わせて使い分けることもできます。たとえば、車両後方のスペースが狭い駐車場などではテールゲート自体を開けることができませんが、横開き式であればゲート後方に400mmのスペースさえあれば開口が可能です。
わくわくゲートの評価について、ホンダの販売店スタッフは以下のように話します。
「現行のステップワゴンは、『車両後方のスペースが狭くても開けられる』、『3列目のシートに外から直接アクセスできる』という部分が好評で人気となっています。
とくに、ベビーカーを使うご家族では、畳まずに収納できる点が便利という声が多いです。初めは馴染みのない装備で抵抗があったものの、その便利さを知ったらもうわくわくゲートしか使っていない、というお客さまも多いです」
使い勝手が重要視されるミニバンでは、やはり好評のようです。しかし、なぜ今回の改良で非搭載グレードが追加されたのでしょうか。
前述とは別のホンダ販売店スタッフは、以下のように話します。
「わくわくゲートはテールゲートが2枚構造になっているため、後ろから衝突されて大破した際などの部品交換時、通常よりも費用が高くなる可能性があります。
ほとんどのお客さまは、保険で対応するため自身で費用を負担することはないですが、コスト面に神経質な方にはあまり評価はされません」
さらに、別のホンダの販売店スタッフは、以下のように話します。
「一度、テールゲートを支えるダンパーの不具合によりリコールがありました。わくわくゲートそのものの不具合ではありませんでしたが、それ以降は耐久性へ疑問を抱くお客さまが増えたように感じます。
また、リアバンパーと一緒になっていたり、非対称に分割されたテールゲートの『後ろ姿』のデザインが好きになれない、という声も一定数ありました」
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わくわくゲートは唯一無二、ステップワゴンならではの強みですが、その特殊さゆえに弱点も抱えているようです。
わくわくゲートが気に入らなければステップワゴンそのものがユーザーの選択肢から外されてしまうため、多くのユーザーをカバーすべく、非搭載グレードの追加を実施したのかもしれません。
なお、改良後の販売状況について販売店数社に聞いてみたところ、わくわくゲート搭載モデルの方が圧倒的に売れているようです。
ワクワク無しグレードは昔からありましたよ。